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2011年7月21日 (木)

震災復興@連合総研『DIO』

Rials 連合総研の『DIO』の7/8月合併号は、「震災復興の活路」が特集です。

マクロ経済への影響試算と今後の政策的課題  小黒 一正
東日本大震災による被災地の雇用・失業問題を考える   中村 二朗
中長期的に必要なボランティア活動について思うこと  金子 博

という3人のうち、やはりここでは労働経済学の中村二朗さんのを見ておきましょう。

ここで中村さんは、持ち株会社方式による復興策を提案しています。大変興味深い提案なので、やや長いですが、原文を引用します。

>筆者が考える一つの具体策は、地域別(県などの単位)あるいは業種別にいくつかの持ち株会社(中間持ち株会社の採用も含む)を設立することである。そこには、資金獲得部門、コンサルタント部門、そして、震災のために独自に経営できなくなった既存事業所による現業部門と各現業分門に労働者を派遣する派遣部門を設置する。就業希望の労働者は派遣部門に雇用され、持っている技能・技術を発揮できる現業部門に派遣される。給料は派遣部門からの一定額と派遣された現業部門の支払い能力によって上乗せされた額を受け取る。

資金獲得部門は政府、自治体、民間などから資金を調達し現業分門に配分する。配分や現業部門の経営についてはコンサルタント部門が支援する。現業部門において経営が順調になり独立できるようになれば派遣された社員とともに持ち株会社より独立する。

 このようなシステムのメリットをいくつか箇条書きにすれば以下のようになる。

●労働者
1) 失業者を社員として吸収することが可能である。
2) 失業給付ではなく、給料として生活費を支給することができるようになるとともに、相対的に長期にわたって一定額以上の収入が保証される。
3) 失業という形をとらないため、一定の仕事をこなすことが可能であり、これまでの技能・技術の陳腐化が起こりにくい。
4) 現業部門が独立すれば、継続的に仕事が保証される、給料が上がる、などの経済的インセンティブが存在し、復興のための活力となる。

●事業所
5) 既存事業所のノウハウやネットワークを活用することができる。
6) 資金力のない既存事業所にとって資金獲得が容易となる。
7) 持ち株会社の信用のもとで、銀行や震災前の取引会社等が資金を提供しやすくなる。

●政府・自治体
8) 持ち株会社にすることで、必要な資金の一部を民間から導入することができる。
9) 政府および自治体も株主になることにより一定の介入が可能となる。
10) 株式会社のため、経済原理をある程度導入することが可能となる。

むろんデメリットも存在する。例えば、民間から多くの資金が導入できなければ結局政府・自治体の支出が多額となってしまい、資金制約により持ち株会社の運営自体が成り立たなくなる可能性もある。しかしながら、このような持ち株会社を設立することにより全体の復興策と地域にとってきめ細かな政策を一定の経済合理性を機能させながら両立させることが可能となる。また、被災者の雇用の場をある期間確保でき、かつ、それまでに形成した技能や技術を継続的に役立てることができる。失業者として顕在化した場合には多額の失業給付を必要とするだけでなく、失業した中高年者の多くは新たな就業のために必要な技能訓練をしたとしても再就職できる可能性は低い。持ち株会社の導入によって中高年の長期失業者を生み出す危険性を相当程度排除することが可能となる。仮に、その数が60万人程度だとすれば、その人数に対応する失業給付や再教育のコストは膨大であり、政府・自治体はその部分を持ち株会社に資金供給することができる。

中村さんは、「ここで示した持ち株会社は、いわゆる「社会的企業」の概念と類似の性格を持つ」と述べていますが、そうであるかどうかも含めて、制度設計が議論になるところでしょう。

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