ブクログでAk_nさんの拙著書評
書評サイトのブクログに、拙著『新しい労働社会 雇用システムの再構築へ』(岩波新書)への書評がアップされました。
拙著刊行から2年、一時に比べると新たな書評はかなり数少なくなってきておりますが、それでもこうして丁寧に拙著を読んでいただける方が絶えることなく現れるのは、著者としても大変嬉しく思います。
http://booklog.jp/users/ak-ne-s17/archives/4004311942
>雇用と労働の社会システムを法学・政策学的視点から詳細に論じた上で、産業民主主義の再構築へと架橋する、骨太の労働論。
ここ最近読んだ数冊の中ではダントツで面白かった。
まず、いわゆる「労働問題」についての解説が的確である。さらに、法学や政策学に基づく決してブレることのない視点が、筆者の論の強度を生んでいる。
そして何よりも、全体を貫く主張がある。個々の問題の解説とそれに対する解決策が必ずセットになっており、しかも提示されている解決策はたいへん現実味がある。また、最終章において「産業民主主義の再構築」を掲げ、それらの解決策実現の土台となる包括的枠組みの提案を行うことで、個々の論点の補完を行うとともに、全体をまとめあげる役割も果たしている。これらの論点はすぐにでも議論の起点となっておかしくないだろう。
最終章で論じられる「産業民主主義の再構築」が、わたしとしては非常に魅力的である。
筆者の提案の要旨は、既存の労働組合を正社員・非正規労働者すべての利害代表組織として再構成し、使用者側からの独立を徹底すること、そして労使協議制の確立と労使双方の政策決定参加の推進を行うべきだ、という点にある。
ここで、「労使双方の政策決定参加」に関し、コーポラティズムが言及されていることに注目したい。コーポラティズムとは、「集団」がそこに属する人々の利害を代表する形で政治運営に関わっていく、といった考え方である。
コーポラティズムに関して個人的に良いなと思う点は、「利害」・「集団」の2つのキーワードが入っていること。
労働は、ときにわたしたちの生死に直結する問題となるため、自己と他者の利害が顕著に現れるところである。さらに「労働組合」という「集団」は、比較的互いの顔が見えやすく、熟議・熟慮が成り立つ範囲としてもかろうじて成立しうる。ゆえに、政治を「利害の調整」という観点から考えると、このような集団単位(立派な共同体だよね、きっと)を基盤にした政治というのは、どんな個人・集団を基盤とした政治よりも、きわめて現実的に考えられるものだと思う。
これまで2年間に書かれた拙著書評の数々は、下記にリンクをまとめてあります。
« クォリフィケーションとスキルとのギャップ | トップページ | どういう意味で「独立」と言ってるのかわかりませんが・・・ »
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