国家公務員の労働関係に関する法律案の概要
先週金曜日に閣議決定された「国家公務員の労働関係に関する法律案」は既にアップされております。
http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/dai7/gijisidai.html
このうち、4法案の概要をまとめたペーパーを見ていきましょう。
http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/dai7/02.pdf
国家公務員の労働関係に関する法律案の概要
国家公務員制度改革基本法に基づき自律的労使関係制度を措置するため、非現業国家公務員の労働基本権を拡大し、団体交渉の対象事項、当事者及び手続、団体協約の効力、不当労働行為事件の審査、あっせん、調停及び仲裁等について定める。
まず何より重要なのは、非現業公務員が「職員団体」ではなく「労働組合」を結成できるということです。もっとも、法案を読むと、「労働組合法の準用」なんて規定が出てくるので、あくまでも労働組合法上の労働組合ではなく、今までの「職員団体」に相当するものを「労働組合」と呼んでいるということのようですね。
Ⅰ 労働組合
1 労働組合の組織
(1) 労働組合は、職員(一般職の国家公務員。ただし、(ア)警察職員及び海上保安庁又は刑事施設において勤務する職員、(イ)事務次官、外局の長官及び局長等(範囲は中央労働委員会が認定して告示する。)、(ウ)特定独立行政法人等に勤務する一般職国家公務員を除く。)が主体となって自主的にその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体とする。
(2) 職員は、労働組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。
(3) 管理職員等と管理職員等以外の職員は、同一の労働組合を組織することができない。管理職員等の範囲は中央労働委員会が認定して告示する。
2 労働組合の認証
(1) 労働組合は、申請書に規約を添えて中央労働委員会に認証を申請することができる。
(認証の要件)・・・
(2) 中央労働委員会は、認証を申請した労働組合が要件に適合するときは、当該労働組合を認証し、その名称、主たる事務所の所在地等を告示しなければならない。
(3) 認証された労働組合が労働組合でなくなったとき、認証の要件に適合しない事実があったとき等は、中央労働委員会は、当該認証された労働組合の認証を取り消すことができる。認証を取り消したときは、その旨を告示しなければならない。
3 労働組合のための職員の行為の制限
(1) 在籍専従の許可
職員は、労働組合の業務に専ら従事することができない。ただし、職員は、所轄庁の長の許可を受けて、認証された労働組合(認証されていない連合体である労働組合であって、認証された労働組合のみから構成されるものを含む。)の役員として専従できる(休職者扱いで無給)。
(2) 短期従事の許可
職員は、(1)の場合のほか、所轄庁の長の許可を受けて、認証された労働組合の役員等として勤務時間中当該組合の業務に従事することができる(一年を通じて三十日まで。給与は減額)。許可の有効期間中は職務に従事しない。。
次に団体交渉。
Ⅱ 団体交渉
1 団体交渉の範囲
(1) 当局は、認証された労働組合から次に掲げる事項について適法な団体交渉の申入れがあった場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。
① 職員の俸給その他の給与、勤務時間、休憩、休日及び休暇に関する事項
② 職員の昇任、降任、転任、休職、免職及び懲戒の基準に関する事項
③ 職員の保健、安全保持及び災害補償に関する事項
④ ①~③に掲げるもののほか、職員の勤務条件に関する事項
⑤ 団体交渉の手続その他の労働組合と当局との間の労使関係に関する事項
(2) 国の事務の管理及び運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない。
2 団体交渉を行う当局
団体交渉を行うことができる当局を定める。
(例)
○ 勤務条件に関する事項のうち、法律又は政令の制定改廃を要するもの ⇒ 当該事項に係る事務を所掌する主任の大臣
○ 勤務条件に関する事項のうち、法令の規定に基づき各省各庁の長又はその委任を受けた部内の国家公務員が定めるもの ⇒ 各省各庁の長又はその委任を受けた部内の国家公務員
3 団体交渉の手続等
(1) 予備交渉の実施、団体交渉の打切り、勤務時間中の適法な団体交渉の実施等を規定する。
(2) 職員は、勤務時間中の適法な団体交渉への参加について所轄庁の長の許可を受けなければならない。所轄庁の長は、公務の運営に支障がないと認めるときは、これを許可するものとする。
(3) 当局は、団体交渉の議事の概要を、インターネット等により速やかに公表する。
次が団体協約。労働組合法では「労働協約」ですが、労組法上のものとは違うということを表すためか、わざわざ「団体協約」という名前にしていますね。
Ⅲ 団体協約
1 団体協約の範囲
認証された労働組合と当局が団体協約を締結することができる事項は、上記Ⅱの1の(1)のとおりとする。ただし、国家公務員の労働関係に関する法律、国家公務員法等の改廃を要する事項に関しては、団体協約を締結することができない。
2 団体協約を締結する当局
(1) 団体交渉を行う者と同一の者が団体協約を締結する。
(2) 法律又は政令の制定改廃を要する事項について団体協約を締結しようとするときは、あらかじめ内閣の承認を要する。
3 団体協約の効力の発生等
当局は、団体協約の内容を、インターネット等により速やかに公表する。
4 団体協約の締結に伴う実施義務
団体協約の締結によって実施義務を負う者及び実施義務の内容を定める。
(例)
○ 勤務条件に関する事項のうち、法律の制定改廃を要する事項について団体協約が締結されたときは、内閣に団体協約の内容を適切に反映させた法律案の国会提出を義務付ける。
○ 勤務条件に関する事項のうち、政令の制定改廃を要する事項について団体協約が締結されたときは、内閣に団体協約の内容を適切に反映させた政令の制定改廃を義務付ける。
○ 勤務条件に関する事項のうち、法令の規定に基づき各省各庁の長又はその委任を受けた部内の国家公務員が定めるものについて団体協約が締結されたときは、各省各庁の長又はその委任を受けた部内の国家公務員に団体協約の内容を適切に反映させた勤務条件の決定又は変更を義務付ける。
5 団体協約の失効
(1) 団体協約の内容を反映させるために提出された法律案が、会期中に法律とならなかった場合(閉会中審査された場合を除く。)、団体協約を締結した労働組合の認証が取り消された場合には、団体協約は失効する。
(2) 団体協約の内容を反映させるために提出された法律案が、修正されて法律となった場合は、当該法律と抵触する範囲において、団体協約は失効する。
次は不当労働行為です。
Ⅳ 不当労働行為
1 不当労働行為の禁止
労働組合の構成員であること等を理由として職員に対して不利益な取扱いをすること、認証された労働組合との団体交渉を正当な理由がなく拒否すること、労働組合の運営等に対して支配介入・経費援助をすること等の行為を禁止する。
2 不当労働行為事件の審査の手続等
中央労働委員会は、認証された労働組合、認証された労働組合の構成員である職員等から当局が不当労働行為の禁止規定に違反した旨の申立てを受けたときは、国家公務員担当公益委員(重要な事件等の場合は公益委員全員)をもって構成する合議体が調査・審問を行い、当該合議体が認定した事実に基づき、申立人の請求に係る救済の全部若しくは一部を認容し、又は申立てを棄却する命令(救済命令等)を発する。また、中央労働委員会は、審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができる。
そして最後にあっせん、調停、仲裁といった調整制度
Ⅴ あっせん、調停及び仲裁
1 中央労働委員会によるあっせん、調停及び仲裁
(1) 認証された労働組合と当局(関係当事者)の間に発生した紛争であって団体協約を締結することができる事項に係るものについて、中央労働委員会によるあっせん、調停及び仲裁の制度を設ける。
(2) あっせんは、国家公務員担当公益委員、国家公務員担当使用者委員、国家公務員担当労働者委員等のうちから、会長が指名又は中央労働委員会の同意を得て会長が委嘱するあっせん員により行われる。調停は、国家公務員担当公益委員、国家公務員担当使用者委員、国家公務員担当労働者委員のうちから、会長が指名する各三人以内の調停委員により組織される調停委員会により行われる。また、仲裁は、国家公務員担当公益委員の全員をもって充てる仲裁委員、又は会長が国家公務員担当公益委員のうちから指名する三人若しくは五人の仲裁委員により組織される仲裁委員会により行われる。
(3) あっせんは関係当事者の双方若しくは一方の申請又は中央労働委員会の決議により、また、調停及び仲裁は関係当事者の双方の同意に基づく申請のほか、関係当事者の一方の申請、中央労働委員会の職権、各省大臣若しくは会計検査院長(自ら又はその部内の職員が関係当事者の一方である場合に限る。)又は内閣総理大臣等が公益上特に必要があると認める場合における請求により開始される。
2 仲裁裁定の効力
(1) 仲裁裁定のあったときは、当該仲裁裁定の定めるところにより、関係当事者間において有効期間の定めのない団体協約が締結されたものとみなす。
(2) 法律又は政令の制定改廃を要する内容の仲裁裁定の場合は、内閣に対して法律案の国会提出又は政令の制定改廃の努力義務を課す。それ以外の事項に係る仲裁裁定については、団体協約と同様の実施義務を課す。
これを見て分かるのは、団体交渉のところで「法律又は政令の制定改廃を要する事項について団体協約を締結しようとするときは、あらかじめ内閣の承認を要する」と、公務員庁が勝手に交渉をまとめて協約を結ぶことはできず、会社であれば取締役会に当たる内閣の承認が必要になっているということですね。ですから、財務省がウンと言わない協約が結ばれることはありえない、と。
それでは交渉不調のときは中労委に持ってくるということになると、仲裁裁定の効力はどうなるかというと、「関係当事者間において有効期間の定めのない団体協約が締結されたものとみなす」のではあるけれども、「内閣に対して法律案の国会提出又は政令の制定改廃の努力義務を課す」と、努力義務であって、実施義務ではないということですね。
この努力義務ってのがどれほどの努力義務かというのが、実際にはかなりの論点になりそうな予感がします。
まあ、そもそも今後の国会がどうなるか全然五里霧中ではありますが、大連立で一気に成立という可能性もあるのかも知れません。
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3日のお昼の段階で、既に法案はアップされていましたよー
http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/dai7/gijisidai.html
投稿: 通りすがり | 2011年6月 6日 (月) 11時48分