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2011年6月25日 (土)

古賀茂明氏の偉大なる「実績」

4062170744 正直言って、ここ十数年あまりマスコミや政界で「正義」として語られ続け、そろそろ化けの皮が剥がれかかってきたやや陳腐な議論を、今更の如く大音声で呼ばわっているような印象を受ける本ではありますが、それ自体は人によってさまざまな見解があるところでしょうし、それを素晴らしいと思う人がいても不思議ではありません。

彼が全力投球してきた公務員制度改革についてもいろいろと書かれていますが、不思議なことに、公務員全体の人数の圧倒的多数を占める現場で働くノンキャリの一般公務員のことはほとんど念頭になく、ましてや現在では現場で直接国民に向かい合う仕事の相当部分を担っている非正規公務員のことなどまるで関心はなく、もっぱら霞ヶ関に生息するごく一部のキャリア公務員のあり方にばかり関心を寄せていることが、(もちろんマスコミ界や政界の関心の持ちようがそのようであるからといえばそれまでですが)本来地に足のついた議論を展開すべき高級官僚としてはどういうものなのだろうか、と率直に感じました。まあ、それも人によって意見が分かれるところかも知れませんが。

しかし、実はそれより何より、この本を読んで一番びっくりし、公僕の分際でそこまで平然とやるのか、しかもそれを堂々と、得々と、立派なことをやり遂げたかのように書くのか、と感じたのは、独占禁止法を改正してそれまで禁止されてきた持株会社を解禁するという法改正をやったときの自慢話です。

不磨の大典といわれた独禁法9条を改正するために、当時通産省の産業政策局産業組織政策室の室長だった古賀茂明氏は、独禁法を所管する公正取引委員会を懐柔するために、公取のポストを格上げし、事務局を事務総局にして事務総長を次官クラスにする、経済部と取引部を統合して経済取引局にし、審査部を審査局に格上げするというやりかたをとったと書いてあるのですね。

嘘かほんとか知りませんが、

>公取の職員はプロパーなので、次官ポストが出来るというだけで大喜びするはずだ。公取の懐柔策としてはこれ以上のものはないという、という私の予想は的確だった。

>思った通り、公取は一も二もなく乗ってきた。ただ、公取としては、あれだけ反対していたので、すぐに持株会社解禁OKと掌を返しにくい。・・・

>・・・公取の人たちは「こんなことをやっていると世間に知れたら、、我々は死刑だ」と恐れていたので、何があっても表沙汰には出来ない。

>この独禁法改正が、今のところ私の官僚人生で、もっとも大きな仕事である

純粋持株会社の解禁という政策それ自体をどう評価するかどうかは人によってさまざまでしょう。それにしても、こういう本来政策的な正々堂々たる議論(もちろんその中には政治家やマスコミに対する説得活動も当然ありますが)によって決着を付け、方向性を決めていくべきまさ国家戦略を、役所同士のポストの取引でやってのけたと、自慢たらたら書く方が、どの面下げて「日本中枢の崩壊」とか語るのだろうか、いや、今の日本の中枢が崩壊しているかどうかの判断はとりあえず別にして、少なくとも古賀氏の倫理感覚も同じくらいメルトダウンしているのではなかろうか、と感じずにはいられませんでした。

わたくしも公務員制度改革は必要だと思いますし、とりわけ古賀氏が関心を集中するエリート官僚層の問題よりも現場の公務員のあり方自体を根本的に考えるべき時期に来ているとも思いますが、すくなくとも、国家の基本に関わる政策を正攻法ではなくこういう隠微なやり口でやってのけたと自慢するような方の手によっては、行われて欲しくはない気がします。

それにしても、通常の政策プロセスで、それを実現するために政治家やマスコミに対して理解を求めるためにいろいろと説明しに行くことについてすら、あたかも許し難い悪行であるかのように語る人々が、こういう古賀氏の所業については何ら黙して語らないというあたりにも、そういう人々の偏向ぶりが自ずから窺われるといえるかも知れません。

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コメント

開いた口がふさがらないというか、ほんまかいな、というか・・・
そんな重大事が、ポストと交換だったとは・・・
本人が暴露して自慢しているんだから本当なのでしょう。

それにしても、ポストに釣られるとは、なんとも情けない・・・

こういった人物は成果主義からすると100点満点になるんだよなあ。
この人をそのような要職に就けた人間もすごいけど。

経産省:古賀氏に退職打診 公務員制度改革などで民主批判―【私の論評】日本の政治システム改革への道のりがさらに遠のいた!!

こんにちは。経済産業省は、古賀氏に退職打診をしたそうです。私自身は、從來から、政策立案を実際に行ってきた、官僚の力を侮るべきではない思っています。官僚の中にも、様々なタイプの人がいて、それこそ、自分のことや省益しか考えない人もいますが、数は少ないでしょうが、本当に国民のこと、特に社会のことを考える官僚はいるはずです。それが、古賀氏だと思います。民主党の勉強不足がまた、露呈したと思います。このような人をやめさせる民主党は、もう先がみえています。古賀氏の問題は、単なる、一官僚の処遇の問題ではありません、日本の政治システム改革への道のりがさらに遠くなったことを示す、象徴的出来事であるとみるべきです。そのことに、民主党は土台無理であっても、少なくとも、野党はそのことに気付いて欲しいものです。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。

旧通産省主導の公務員制度改革は、失敗の歴史。ご指摘のように、公務員にはいろいろなタイプの公務員がいるのに、通産省のキャリアだけ考えたことしか、制度設計しなかったことが原因だと思う。古賀氏は、典型的な通産官僚の意識を示していると考えられ、このような意識の人が、経済産業省にはウヨウヨしているということだと思う。
公取委の人は、もっと怒ってしかるべきだが、本当のことで反論できないのだろうか?

古賀氏と対談したらしい池田信夫氏もそうですが、古賀氏を「数は少ないでしょうが、本当に国民のこと、特に社会のことを考える官僚」と持ち上げたがる方々に限って、熱心に読んだはずの古賀氏の著書の中で赤裸々に描かれている(「典型的な通産官僚の意識を示している」かどうかは別として)ポストで政策をねじ曲げるという卑劣なやり口については口をつぐんでいることです。

そんなに古賀氏を褒め讃えるのならば、彼が「今のところ私の官僚人生で、もっとも大きな仕事」と自讃するこの「実績」こそを口を極めて褒め讃えてしかるべきではないですかね。

こういうエセ改革派の二枚舌が、たまらなく嫌らしいと感じるのは、私が世間知らずだからですか?

おっしゃるとおりです。以下長くてすみません。
公務員制度改革は、最近でも10年の歴史があります。
http://www.gyoukaku.go.jp/about/koumuin.html
常に公務員制度の改革を検討する事務局には通産省からの有力な出向者がいて、通産省キャリアしか眼目にない改革案を考え、結局、現実にあわないので、うまくいかず、つぶれるということの繰り返しであり、私が考えるに、通産官僚のDNAあるいは典型的な行動様式を反映しているのではないかと思います。だから、古賀氏をはじめ、歴代の旧通産官僚は、同じ失敗をこりずに何度も繰り返してきたのではないでしょうか。
仙石氏も、それに気がついて古賀氏を遠ざけたというのが、「恫喝」に関わる、ことの真相ではないかと見ています。

その意味で、この古賀氏を、経済産業省がいままでなかなかやめさせられなかったのは、経済産業省の省益のためにこれまで永年頑張ってきたことについて、多分、組織内での同情論も強く、内部の士気の維持など考えると、人事当局も慎重に対応するしかなかったからではないかと推察しております。

平成13年の公務員制度改革大綱があまりに通産省案どおりだったので、結局、法制化ができないで終わったのが、この挫折の歴史のはじまりだと思います。
http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/koumuin/taikou/honbun.html
怪文書が乱れ飛んだことが当時の大臣記者会見でも認められ、いわれています。
http://www.gyoukaku.go.jp/minister/ishihara15.html#h150725
公務員制度改革の反対派(国公労連)からは、「今次公務員制度改革にかかわっては、当初から某省が「裏チーム」を編成して「推進事務局」の作業を「サポート」していることが指摘されていたが、法案決定段階でその存在が白日の下に晒されることになった。国公労連は、行政のあり方・内容にも直接的に影響する公務員制度を特定省の省益のためにもてあそぶ「改革」に強く抗議する。」とまでいわれました。
http://www.kokko-net.org/kokkororen/torikumi/t030805.htm

一方、公取委の組織強化は、平成8年の通常国会で法改正が成立しており、その時点では、持株会社の解禁は、当時の与党3党のプロジェクトチームで検討中となっています。

平成8年5月28日の衆議院商工委員会で、共産党の正森成二議員が、「公取委は魂を売り渡したのではないか」という独禁法の学者の指摘を紹介し、「独禁法改悪と組織拡充・ポストの増設が取引されたのではないか」と質問したのに対し、当時の小粥公取委委員長は、「私はまったくそのように考えておりませんので、この点ははっきり申し上げておきたいと思います。」と明確に否定しています。

当時、持株会社を禁止した独禁法第9条は、憲法9条とならんで、リベラルな人々にとって戦後改革を象徴する大事な規定だったと記憶しています。

名委員長ともいわれた小粥委員長は、お亡くなりになっていて、いまさら、古賀氏の本を読んだ感想を聞くことはできませんが、本当であれば、世論も欺く、重大な虚偽答弁になるので、国会は、いまからでも、独禁法9条改正について、マスコミなどを操作して世論を形成し(まさに政治主導ではなく、官僚主導で)、法改正を主導したと自慢話をしているのだから、その当事者である古賀氏を国会に呼んで、国政調査権を行使し、真相を追及すべき問題でしょう。

いずれにしても、少なくとも、リベラルな人々は、「改革派官僚」というマスコミ・世間のいいぶりに騙されず、古賀氏の本を自分で(買うのがいやなら立ち読みでも)読み、小泉構造改革について「万歳一色」である古賀氏の「正体」をよく見抜くべきでしょう。

なお、古賀氏の本が、研究開発投資や人材開発といった点にほぼ言及がない点、マクロには言及がほとんどない点など、経済政策に通暁しているはずのエリートであったこの旧通産官僚の
「狭さ」を感じざるを得ません。これでは、「経済産業」は過大広告なのでは?

古賀氏の最近の行動は、ふっきれたものを感じ、現在の日本の中央省庁の欠点がよくわかり、それはそれで敬意を表しますが、高橋洋一氏や池田信夫氏はともかくとして、リベラル派が持ち上げるような話ではないと考えます。

http://mainichi.jp/select/today/news/20110708k0000m040092000c.html
経産省の現職キャリアがインサイダー取引をやっていたことが問題になっていますが、古賀さんのポスト交換の件といいなんだかなあという感じです。古賀さん結局国益ではなく私益しかも金儲けの為に騒いでるだけなんじゃないのかと疑ってしまいます。

長崎県 出身 古賀茂明さん 頑張って下さい。長崎県人に貴方のような骨のある人物が存在する事が、非常に嬉しくおもいます。 今後の活躍を期待し応援しております。 大阪在住長崎県人。

古賀氏は小泉改革推進派でTPPを農業問題にのみ集中しているのは?マークです。小泉改革以後の日本はご覧の通りで何故持ち上げるのか不明ですがTPP参加賛成と言っているのも気になります。最近の著書の「官僚の責任」をざっと見ましたが確かに英語教育の問題点とか的を得てるけど外圧によって日本を買えるのはよくない。改革はあくまで国内でやるべきであって農業も保護しすぎだから外圧で自給能力を減らそうとするのは国家の存亡を放棄するようなもの。投資までも自由になって外資に荒らされてもいいんですかと問いただしたいところです。
余談ですが関岡英之氏著書の「国家の存亡」を指示します。

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» 古賀茂明氏は、国策逮捕される危険もある [ニュースを読まねば]
24日、とうとう経済産業省は、これまで民主党の公務員制度改革などを批判してきた同省の古賀茂明氏(55歳)を退職させる方針を決め、本人に通達した。既に古賀茂明氏は、大臣官房付という閑職に追い込まれている。ともかく古賀茂明氏は、憂国の士というか珍しくまともな人というか、経済産業省をはじめとする官僚や政府のなれ合いによる亡国の政策を批判してきた清廉の士である。この人をいよいよパワーハラスメントによって退けようとしている官僚の姑息さがかえってクローズアップされてしまった。古賀茂明氏は..... [続きを読む]

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