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2011年5月24日 (火)

原子力損害賠償紛争審査会における連合の意見

文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が4月から開かれていますが、昨日5月23日、連合の代表が出席して「福島原発事故による雇用・労働に関する損害について」意見を述べたようです。

今のところ資料だけがアップされています。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/05/23/1306259_12_1.pdf

総論は後に回して、まず本ブログでも注目してきている放射線被曝に係る安全衛生・労災関係から

>今回の復旧作業において、この被曝線量限度に近づいたため、今後、労働者が緊急作業終了後に放射線業務に従事できなくなった場合、解雇や配置転換による所得の減少の恐れがある。このような解雇は社会的な相当性を欠き、許されるべきものではないが、このような場合の所得補償は原子力賠償の対象とすべきである

東電社員ではない多重下請の労働者になると、「許されるべきではない」といっても雇止めされてしまうことがいくらでもあり得ますからね。

この関係で、総論の冒頭では、

>・・・・・この際、継続的契約である期間の定めのない雇用だけでなく、期間の定めのある雇用においても、この事故を契機に契約期間満了となった雇止めについても一定の損害評価を行うべきである

と述べています。

労働災害の関係ではかなり詳しく取り上げています。まず、チェルノブイリや原爆症を引いて、晩発性の健康障害のリスクがあることを述べた後、

>労働災害に関する原賠法の賠償については、時効期間及び起算点について、晩発性の健康障害のリスクを考慮に入れるべきである

と、また労災認定との関係について、

>放射線被曝による健康障害に関する過去の裁判例においては、労災認定がなされたにもかかわらず、原賠法による損害賠償訴訟において相当因果関係が否定されたものもある。このような結論は妥当性を欠くため、労災認定がなされた場合には、原則として原賠法による賠償相当とすることや、労災認定がなされない場合でも原賠法により部分的賠償の対象となることを示すべきである。・・

等と、さらに、

>本件事故による放射線被曝による疾病及び身体障害については、広く労災補償の対象とすることが必要であるとともに、事業者がその労災補償に上乗せして補償した部分(上積み補償)は、事業者の損害と認めるべきである

とも述べています。

総論に戻って、そもそも労災保険と原賠法による損害賠償の分担について、

>・・・被害者救済の観点から、労災保険による補償を広く行うべきことはもちろんだが、事業主負担による労災保険制度の性格や保険事故発生要因との関係なども考慮し、労災保険財政の毀損部分への補填措置として、労災保険勘定から支出した労災保険給付や未払賃金立替払い制度からの支出額の一定部分につき、原子力事業者に求償すべきである。

と、談話レベルを2~3クラスほど下げると「てめえらのせいで労災保険の金が足りなくなるんだから差し出せ、コラ」という趣旨のことも述べています。

も一度総論の冒頭に戻ると、雇止めも含める話の前に、大前提として

>労働者に対しては、逸失利益として、本件事故が起きなければ得られていたであろう賃金等の補償が必要である。・・・

で、雇止めの話に続いて、

>加えて、労働者は元の職場にいつ戻れるのか分からないとの不安を抱え、・・・精神的損害についても十分な考慮が必要である。

と精神的損害に言及し、さらに被曝労働者に及ぶという、いささか文脈が錯綜してますな。

>原子力発電所内で放射線被曝のリスクを抱えて働いている労働者や放射線量が比較的高い地域で復旧対応や公共サービスに従事せざるを得ない(公務労働者を含む)の精神的損害も、十分に考慮するべきである

そういう公務員の給与も一律に10~5%カットするのかという話は、この審査会の所管事項ではないので特に言及されてはいません。前線で体張ってるのは自衛官だけではないわけですが。

実務的に重要なのが立証責任の問題です。

>例えば、就労不能等における賃金等の損害について、沿岸部の労働者や事業所において津波により賃金明細や賃金台帳を喪失した場合・・・など、逸失利益を算定する際の賃金額を証明できない場合もある。

>・・・その資料さえもないときは、最低補償の基準を示し、その基準による補償の確保を図ることが必要である

損害の範囲については、

>本件事故そのものや本件事故後の避難指示等を理由とした損害だけでなく、食品加工業や観光業のキャンセル、中国や欧州を中心に工業製品の輸入拒否などの風評被害や、サプライ・チェーンの断絶による損害についても、合理的な範囲内で補償の対象とすべきである

いや、これは「合理的」の判断基準がむずかしいでしょうけど。

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