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2011年5月 1日 (日)

最低賃金法廃止は憲法違反か?

野川忍さんと安藤至大さんが、ついったー上で標題の問題に関するやりとりをされています。

きっかけは安藤さんと(おなじみ)小倉秀夫弁護士のやりとりからのようですが、そこに横から

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63770827258204161

>横からすみません。思考実験のレベルなら問題ありませんが、現実には、最低賃金法は憲法27条2項(労働条件の最低基準は当事者の合意ではなく法律で定める)によっています。そこで、最低賃金制度を撤廃する法令を制定することは不可能(違憲)ですのでお忘れなく。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63772141811806208

>こんにちは。あくまでこれは思考実験です。ただし条文を読むなら法律で決めるとだけあるので,最低賃金を設定しなければならないとか,それをゼロより大きくしないといけないとは読めないのですがいかがでしょうか。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63775533795778561

>憲法27条2項の趣旨は、同25条を受けて、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活をできる労働条件の水準を法律で直接に定める」ということなので、実質的に生活していける賃金の最低水準について定めた最低賃金法を撤廃する法令は違憲となります。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63775899132231681

>もちろん、賃金の最低水準を確保したうえでその決定方式や手続きを合理化するために最低賃金法に代えてもっと適切な法令を制定する、ということはできます。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63776657474977793

>それは解釈次第であり,賃金だけで生活できるようにすべきという意味とは限らないのではないでしょうか。例えば(僕は反対ですが)ベーシックインカムを国が支給する場合などはいかがでしょうか。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63779036857516033

>いえ、「勤労条件(これが労働条件を意味することは異論がありません)に関する基準」と明記されているので、他の方法で生活水準が保障されていることを根拠に労働条件の最低基準を定めなくてよいことにはなりません。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63780201229848576

>労働条件には安全衛生とか様々な要素があり,必要な内容については適切に定めることが求められているだけだとは解釈できませんか?賃金の最低水準を決めないといけないと直接的に明記されていれば異論の余地はありませんが。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63780933475639296

>(1)労働条件の最低基準を法で定めなければならない理由は、当事者の契約にゆだねてしまえばどこまでも低い水準に落ちる可能性を否定できないからです。ところで労働条件は本来契約で決まりますが、労働契約の核となるのが、賃金と労働義務です。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63781607680655360

>(2)つまり、労働契約の労働者側の義務は労働に従事することで、それに対する使用者側の義務が賃金を払うことで、この組み合わせで労働契約が成立します。ですから、賃金は労働条件の中核であり、この最低基準を法で定めることが憲法27条2項の中心的役割なのです。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63782712275763201

>(3)まとめると、憲法27条2項は労働条件の最低基準は法で定めることとしているー労働条件とは賃金を中心として本来労働契約で合意されて決まる事項であるーそこで賃金をはじめとする労働条件については法で最低基準を明記しなければならないー最低賃金法はその典型である、ということです。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63782532856020992

>「どこまでも低い水準に落ちる可能性」というのが良くわかりません。まず経験や技能がある人についてはそうなりません。また,ベーシックインカム等で生活できていれば,納得のいく賃金が支払われなければ働かないので,問題ないように思われます。思考実験ですが。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63783595847856128

>アベレージとして極端に低い水準にはならないという想定はできますが、そうではなくて当事者の合意は自由なので、経済的に不合理でも当事者がその気なら時給200円の契約もできてしまう。それを許さないということです。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63784859646173184

>なぜ許してはいけないのでしょうか。生活出来る水準のベーシックインカムなどがある状態なら200円でも問題ないですし,不本意な仕事で貯金してから,本当にやりたかった仕事に低賃金で潜り込むなどもあって良いのではないかと考えます。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63787200101359616

>今後、憲法改正を議論する上では、「総合的に見て最低生活が保障されていれば、労働条件に限って最低基準を法で定める必要はない」という意見はありうるでしょう。現在では、労働条件に限定して、最低基準の法定が憲法により国に義務付けられているということです。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63787918904410112

>つまり、思考経済の問題です。現時点では、改憲を視野に入れない限り、最低賃金制度の撤廃を「政策的選択」として検討することは実益がないということです。繰り返しますが、思考実験としての議論の意義はもちろん否定しません。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63788520891887616

>理解しました。本来の目的は,人々が健康で文化的な生活をおくれること,また自己実現や承認欲求が満たされることなどのはずなのに,労働賃金で生活することに議論が矮小化されているように思えて野川さんに考えをぶつけてみました。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63789422835007488

>確かにそういう面がありますね。安藤さんのご意見はとても刺激的で、自分が当然の前提としていたことが、突き詰めるとそれほど合理的ではないことに気づかされました。

http://twitter.com/#!/munetomoando/status/63791804784451584

>もちろん現状では,親が資産家であるとかでない限り,働かなければ生活できないため,人々の生活向上と賃金が直結しています。でもいろいろと規制するだけではなく,企業が良い待遇をすすんで提示したくなるような労働者を増やすことも有益ですね。教育訓練は大事です。

http://twitter.com/#!/theophil21/status/63794846690852864

>法学者と経済学者とが、「できるだけ対立的なテーマを議論することで実りをもたらす」ということを重視しているのですが、安藤さんと私の共通点の一つは、ご指摘の教育訓練システムの拡充ですね。労働者が多様な選択肢と簡便なアクセスを享受できる仕組みが必要ですね。

と、一応決着がついたことにはなっていますが、よく読み直すと、政策論としての是非は別として、憲法解釈論としては安藤さんの方が正しいのではないかと思われます。

間違わないでいただきたいのですが、あくまで憲法論としては、です。

野川説では、現行憲法に27条2項がある限り、最低賃金制度がないことが許されないという風に読めますが、日本に最低賃金法が成立したのは1959年ですし、それも業者間協定方式で、審議会方式に改正されたのは1968年ですし、それでも最賃が全てを覆っていたわけではなくて、47都道府県全てで地域最賃が定められたのはようやく1976年です。

では、1976年以前は、少なくとも1959年以前は日本は賃金に関しては違憲状態にあったのか。といえば、そのような考え方が主流であったとは言えないでしょう。

現に、現行憲法下で最低賃金制度が全くなくても(政策論的には労働組合や労働省が制定に向けて一生懸命努力していたにしても)違憲ということになっていなかった以上、憲法27条2項が最低賃金制度の義務づけを含むという野川説は正しくないように思われます。

ここで念のため、これは現行最低賃金制度を廃止するかどうかの政策論ではありません。あくまでも憲法論です。

1959年以前は、労働基準法上に「行政官庁は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に従事する労働者について最低賃金を定めることができる」という規定が設けられていました。これからすると、憲法制定時の認識としては、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」というときの「賃金・・・に関する基準」は労働基準法に規定されるいくつかの原則であって、最低賃金についてはつくるかつくらないかも含めて裁量的規制であったと判断せざるを得ないように思われます。

これは、一つには賃金水準をどうするかは労働基準法ではなく労働組合法の領域、憲法でいえば27条ではなく28条の領域であるという認識が一般的であったことの反映でもありましょう。実際、50年代半ばまでは、「最低賃金」という言葉は国家規制によるものというよりは労使交渉で勝ち取るものという使われ方が多かったように思われます。その意味では、最低賃金規制が本来想定されていた労使関係による集団的規制の問題ではなく国家による権力的規制の問題として「のみ」論じられるようになってしまったこと自体が、憲法制定時の問題意識といかに離れてしまったかを示しているようにも思われます。

ま、お二人の話は最後は教育訓練の重要性に移っていき、それについてはわたくしはまったく同感でありますので、それ以上口を挟む必要はないのですが、やや理念的なレベルの問題についてだけ口を挟ませていただきました。

(追記)

野川先生からコメントと、ついった上及びブログ上でも解説をいただきました。

http://twitter.com/#!/theophil21

>(1)安藤さんとの最賃法をめぐる議論に、濱口先生がコメントを加えられている。若干誤解が含まれているように思われるのでひとこと。やはり、ツイッターの限界によるもので、致し方ないとは思われるが… 要するに、私が指摘したのは「最賃法がなければ違憲」ということではない。

>(2)そうではなく、現行の最賃法に対して、法令をもってこれを廃止し、その理由を「最賃を法律で定めない」ことを明記した場合には、当該法令は違憲となる、と指摘した。安藤さんとの議論は、そもそも最賃を法で定めること自体が不当か、ということだったのでこのような指摘をしたのである。

>(3)濱口先生も、「労働条件の最低基準を法で定めない」という法令を策定することが違憲であることはご了解のことと思われる。その一環として、「現行最賃法を廃止し、今後賃金の最低基準を法で定めることはしない」という法令が違憲であることも了解いただけるであろう。…ツイッターは難しい。

>(4)要するに、個別の法規としての最賃法を撤廃することを問題としたのではなく、「最低賃金制度を持たないことを法で確認する」ような法令を策定することは違憲だということ。言葉が足りなかったこと、及びツイッターのリテラシーがまだ未熟であることを痛感する

http://nogawa-ando.blogspot.com/2011/05/blog-post.html(最賃制に関するコメント(間奏曲)ー野川 )

ただ、ついった上であるからというだけでなく、正直まだよく分からないところがあります。

法律というのは、原則として国民等の権利や義務を定めるものであって、もちろん実際の法律にはある思想を宣言するというような部分もありますけど、権利義務と直接関わらない規定は憲法27条2項が予定する「法律」ではないのではないかと思います。

現実に最低賃金を定める(正確には定める具体的な根拠となる)法律(それが現行最低賃金法であるか否かは別にして)以外に、「最低賃金制度を持たないことを法で確認するような法令」というものが、どういう法的存在であるのかが、よく分かりません。ブログの方の表現では、

>そもそも最賃制度を法で定めること自体を認めないというのであれば、そのような法令(「最賃制度を法では定めない」という法令)は違憲となる」ということです。

といわれているのですが、それは法律の有り様をより上位から制限しているとすれば、法律じゃなくて憲法レベルのような気がします。そういう「法律」はそもそもありうるのでしょうか。私が気にしたのは、そういう過剰にイデオロギー的な「法律」ではなくて、単純に現行最低賃金法を廃止して、それに代わるいかなる法律も制定しないという状態になったときに、それは違憲なのだろうか、という疑問です。

あるいは、野川先生の設例により則して言えば、最低賃金法を廃止してそれに代わる法律を設けず、その法律の趣旨説明に「最賃を法律で定めないこととした」と書かれているという状態(将来の逆の法改正の可能性自体を否定しているわけではない)であれば、それは違憲なのだろうか、ということです。

そして、それは違憲とは言えないのではないだろうか、ということなのです。

(まったく余計なことながら)

ついでに、まったく余計なことながら、憲法27条2項についての別の観点からの疑問点:

同項では、賃金の次に「就業時間、休息」も勤労条件の例示に上がっています。

では、戦後日本では本当に「就業時間、休息」について、最低条件が法律で定められていたのでしょうか。

それ以上働いたら残業代がつく基準時間はあっても、物理的な就業時間の上限はなかったし、ましてや休息時間の下限など一度も規定されたことはありません。

賃金以前に、時間についても27条2項は相当に空洞化していたのではないでしょうか。

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コメント

野川です。ご指摘ありがとうございます。ツイッターに記載しましたが、ご指摘の点、恐れていた通りに解釈されてしまいました。
最賃法を撤廃しても、最賃制の必要性を法令で否定するのでなければもちろん違憲の問題は生じません。安藤さんとの議論では、現行最賃法という個別の法規が問題となったのではなく、最賃制度がそもそも必要か、ということが論点でした。そこで「最賃法を撤廃しても別の形で最賃制度を維持すれば違憲ではない」ことを指摘したうえで、「最賃制度は持たない」という法令は違憲であって「最賃制度をなくすことを前提とした政策を議論すること」は、現実的でないと述べたのです。
機会があれば、また憲法27条2項についての検討をしてみたいですね。

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