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2011年5月 7日 (土)

「野営地にて」さんの拙著書評

久しぶりに、ブログ上での拙著書評です。「野営地にて -あるいはレーニンがクラシックを聴かないこと。」というタイトルのブログから。

http://liberation.paslog.jp/article/1982820.html

>最近は社会的排除の問題を考えていたが、ちょっと趣向を変えて。たまたま帰り道にふらっと古本屋に立ち寄ると本書が置いてあって、当然のように買ってしまった。

>全くどうでもいいことだが、絶対読むに決まってるから新品で買って先生に少しでも印税がいくといいなという思いと、絶対買うなら少しでも安く古本でいいじゃんというさもしい思いがぶつかった結果、古本屋で見つけてそのまま帰ってきて一気に読み切るというあまり生産的でないかもしれない行為をもたらすことになった。でも面白かったからいいじゃない。

すでに、その本については新刊で買った人がいて、その時に印税は支払われているのですから、それがさらに売られて有効に活用されているのはいいことではないですか。

いずれにしても、「面白かった」と言っていただいて嬉しく思います。

拙著への注文点が二つ挙げられています。

>逆に、議論をもっと展開してほしかった部分もなくはない。
ひとつには、既存の左派の立場の整理である。ここでは大手の組合や日教組を想定して左派と書いている。
労働運動の戦略における職務主義や学校における点数主義が、当初左派がそれを批判する立場にいながらも、結果的に使用者側の論理に適合的なシステムの形成に資してしまったという点は、左派の総括を迫るものであろう。ただそれが、現在に至るまで抜本的になされていないのだろうという思いは個人的にもなくはない。したがって濱口氏の指摘は全くまっとうであると思うが、むしろこれは左派の立場からの明確な総括がないことの証左ではないかと思う。別に、誰の襟をつかんで「お前が悪いんだ」とやる必要はないであろうが、過去の運動の主張や在り方に対して総括をしないままでは、本書で描かれているような労働社会の構築ひいては日本社会の維持可能なシステムの構築はなかなか難しいのではないかと思う。とまあ誰に言ってんだよっていう。


この本では、「左派」にせよ、「右派」にせよ、政治思想的な総括は意識的に避けています。思想対立を描かないのではなく、あえて通念的な右と左の対立図式とずらした形で対立図式を提示して、読み手の意識を若干脱臼させることを念じているので。その意味では、「あんたらの一生懸命やってきたことは自分たちのメンバーシップの強化であって、それが回り回って今に至っているんだよな」というメッセージは出ていると思っていますが、そのこと自体が歴史的にはかなりの程度必然的であったわけだし、別に襟首をつかむ話ではないし、なにより政治思想的な図式では左右両翼にまたがる話になるので、左派であれ右派であれその「総括」をするつもりはなかったのです。

>あとは、企業規模の問題。大企業と中小企業の問題。
氏のブログにもたまに出てくるが、そして本書でも序章の最後のほうに出てきたと思うけど、中小企業を中心として企業規模の問題があまり深められていない。確かに日本型雇用はメンバーシップ型であり、おおよその労働問題はこの構造から説明が出来るように思われる。しかし、大企業―中小企業という強固な下請け制もまた、日本型資本主義にとって資本蓄積に不可欠に埋め込まれた重要な契機であったことは強調されてしかるべきであろう。そこにおいて中小企業の労働者が、あるいは本書でも展開されているように請負や派遣やときには女性などの日本型メンバーシップから排除された労働者が、どのように職場民主主義を獲得し、そして民主主義を構築していくかという問題が、気になった。これに関しても企業別組合を非正規でも参加できるようにしていくという方向性は打ち出されたが、かといって組合そのものがない場合も多く、また大企業に組み込まれる中でなかなか中小企業の「自立」が難しい状況においては、大企業労組を中心とした運動にならざるを得ないのだろうか。

いやあ、実は最近ブログでも書いているように、この中小企業問題は一つのアキレス腱だなとは思っています。

中小企業を「ジョブ型」と呼ぶのが適切ではないということに加え、ここで指摘されている下請制の問題を労働問題の観点からきちんと考えないといけないし、それを突き詰めていくと、第2章で論じた(派遣との連続性という意味での)構内請負企業と、構内じゃないけど専属で作業のある部分を請け負っている下請企業との違いはいったい何なのか?とか、色々広がる論点もあるのですね。

これらは当面宿題ということで、いろいろと頭の中で転がしています。

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