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2011年5月21日 (土)

矢野栄二・井上まり子『非正規雇用と労働者の健康』労働科学研究所

さて、昨日は、第84回日本産業衛生学会/日本学術会議市民公開講座「雇用労働と安全衛生に関わる諸システムの再構築を-働く人の健康で安全な生活のために-」というシンポジウムに参加してきましたが、

http://jsoh84.umin.jp/jsoh84_program-open_sympo_title.pdf

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/84-a078.html

(追記)

昨日のシンポのわたくしの発言部分を起こしていただいておりますので、ご参考までに。なお、質疑の最後の消費税のところはあんまり自信のないまま適当に誤魔化して答えたところなので、ホントは歴史の闇に葬りたかったのですが・・・。

http://liberation.paslog.jp/article/2005872.html

その場で、座長の矢野栄二さんと井上まり子さんから、出たばかりの『非正規雇用と労働者の健康』を手渡しで戴きました。ありがとうございます。

この本、奥付けでは5月25日発行となっていて、ネット上で見る限り、まだ出版されてはいないようです。ですから、左に表紙の画像を貼ることもできませんが、いくつか紹介したいと思います。

目次を、各章の執筆者とともに示すと、

はじめに   矢野栄二・井上まり子

第1部 非正規雇用がもたらす健康への影響-現場からの声

1 派遣ユニオンから 関根秀一郎

2 派遣労働者から 飯島美世子

3 NPOから 湯浅誠

第2部 法学・経済学・社会学から見る非正規雇用者の健康

1 法学 脇田滋

2 経済学 奥西好夫

3 社会学 杉田稔

第3部 非正規雇用の背景

1 非正規雇用の制度的背景 井上まり子

第4部 非正規雇用は健康を悪化させるのか?-データ分析による検証

1 国民生活基礎調査の分析 鶴ヶ野しのぶ・錦谷まりこ

2 非正規雇用と健康管理 飯島純夫

3 非正規雇用労働者の健康管理の実態とニーズ-派遣労働者 巽あさみ

4 雇用形態多様化と心の健康 丸山総一郎・瀬戸昌子

5 助成の健康と就業の関係 錦谷まり子

6 外国人労働者における労災・職業病発生の実態 毛利一平・吉川徹・酒井一博

7 請負事業者の安全衛生管理に対する元方事業者の貢献 森晃爾

8 失業と健康 石竹達也

第5部 非正規雇用と労働者の健康に関するQ&A 矢野栄二

わたくし的には、一番興味深かったのは第3部の井上さんの章で、終戦直後以来の労働力調査における「就業上の地位」と「雇用形態」の分類の変遷の表は、そうだったのか!でした。

第1部の現場の声もよくできているし、第2部の脇田さんの「法学」も奥西さんの「経済学」も的確な分析でいいのですが、そのあとの杉田さんの「社会学」というのがいただけない。

せっかく頂いた本の一部を批判するのは気が引けますが、これはやはりきちんと言っておくべきだと思うので。

冒頭、いきなりこういう文章から始まります。

>2.3.1 日本の歴史と伝統

日本の先史時代から縄文人と弥生人の戦争ではない平和的共存共栄路線による和合の歴史・伝統は、他人を信頼し正直に行動し信用を獲得する長期戦略そのものである。その数百年後に、聖徳太子は十七条憲法で「和を以て貴しとなす」と記して、平和共存共栄路線を国是とした。・・・・・・・

>このように、日本では、戦争による支配・被支配の階級がなく、諸外国と比較すると平等・一枚岩な社会で、談合・系列などという経済システムは長期戦略として成功してきた。また、諸外国と異なり、一部の集団・個人が、権力、経済力や権威などのいわゆる美味なものを独占する社会ではなかった。

なんだかすごいデジャビュ全開ですが、こういうトンデモ系の歴史認識に立脚して、

>2.3.2日本の歴史と伝統の否定による破局

とか、

>2.3.3新自由主義の害毒

とか、

>2.3.4新自由主義採用による破局のリスク

とか、

>2.3.5問題解決:低賃金労働者の収入上昇による健康度上昇

といわれても、いや、確かに新自由主義が害毒をもたらしたのは確かだし、低賃金労働者の収入上昇がその健康の増進に結びつくことも確かなのですが、全体の話の流れについていけないのはわたしだけではないと思うのですが。

最後の締めの文章が、やはりこれです。

>日本再生の道は、新自由主義からの決別と日本の歴史・伝統による安全・安心をキー・ワードとしての経済運営で、そのことの世界への発信も重要である。各国固有の歴史・文化・伝統をよりどころの差別化を国家戦略に転換するようになろう。これは、真の日本回帰である

十年前に新自由主義の輝ける旗手だった中谷巌氏が、「転向」して似たようなことを口走りだしたことに対しては、本ブログでかつてかなり手厳しく批判したことがありますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-3779.html(中谷巌氏の転向と回心)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-2350.html(中谷巌氏の「回心」再論)

別に転向したからというだけでなく、言ってる中身も相当にトンデモ化してしまっていたわけで、この杉田さんの文章には、似たような味わいが感じられるのです。

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コメント

先日の研究会で先生のお話をうかがって、そのあとに質問をさせていただいた者です。私が「追記」の部分の記事をアップしました。

先生の記事を読み、今更ながら失礼なことをしたと思い、申し訳なく思っております。
記事自体を消すべきだとは思ったのですが、先生のお答えいただいた質問がたいへん勉強になったので、質問部分と講演部分を違う記事として分けて記載しました。

もしコメントをいただけましたら、質問部分は削除いたしますので、ご検討いただきたく思います。
このたびは、申し訳ありませんでした。

いえ、自分で喋ったことですから、別に「失礼」でもなんでもありません。わたくしの発言部分はそのままでけっこうです。突っ込まれれば、えへへ、というだけで。

むしろ、みょうに隠しているような表現がかえって気になるかな、というところで。

これからもご遠慮なくいろいろと書いていただければ、と思います。

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