「世代間公平」と「共助」
本日、官邸の社会保障改革に関する集中検討会議に、厚生労働省の「社会保障制度改革の方向性と具体策」が提示されました。副題は「「世代間公平」と「共助」を柱とする持続可能性の高い社会保障制度」です。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai6/siryou3-2.pdf
最初に経緯、背景、それに東日本大震災の課題が書かれていますが、ここではまず何より社会保障制度改革の基本的方向を。
第一の柱は「全世代対応型・未来への投資」と称して、「世代間公平」を打ち出しています。
>社会保障を社会の持続可能性の維持、未来への投資として位置づけ、直接的な受益者である高齢世代のみならず、現役世代や将来世代にも配意した全世代対応型の社会保障制度への転換を進めなくてはならない。とりわけ、人々の相互連帯、「共助」を基礎として、あらゆる世代が信頼感と納得感を得ることができる社会保障制度を構築することが急務である。
その軸は「雇用を通じた参加保障(一人ひとりの自立支援)」です。
>参加保障・包括的支援の理念に基づき、若年者、女性及び高齢者を中心に「雇用の拡大」と「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)」を実現する。特に、全世代対応型の社会保障への転換の観点から、「現役世代の基礎」であり「将来の中核」でもある若者の自立支援の強化に取り組む。
ようやく日本でも、社会保障制度改革の一丁目一番地は雇用を通じた参加保障だというコモンセンスに到達しつつあります。
それに続く一丁目二番地は「子ども・子育て支援の強化」です。
>仕事と子育ての両立支援、共働き型家族も含めた多様な世帯に対応した制度設計など、現役世代の「家族形成」を支援する。
この一丁目一番地の雇用を通じた参加と同じことの表と裏の関係にあるのが、第二の柱の「参加保障・包括的支援(全ての人が参加できる社会)」です。ここでのキーワードは「共助」です。
>「共助」の枠組の強化により、社会の分断や二極化をもたらす貧困・格差やその再生産を防止・解消し、社会全体で支え、支えられる社会保障制度の構築、人々が「居場所」と「活躍の場」のある社会の構築を目指す。
具体的には、社会保険から生活保護に至る3層のセーフティネットについて、次のように書かれています。
まず二丁目一番地の社会保険。非正規労働者への社会保険適用拡大は当然として、
>職業やライフスタイルに関係なくすべての人が同じ制度に加入し、所得が同じなら同じ保険料、同じ給付となる一元的所得比例年金の制度の構築に向け検討する。
>そのためには、社会保障・税に関わる番号制度の導入、税と社会保険料を一体徴収する機関としての歳入庁の創設などの環境整備が必要である。
と、かなり抜本的な提起をしています。
二丁目二番地は現在国会で審議中の求職者支援法案だけでなく、パーソナルサポートなども含めたもう少し広い概念として「第2のセーフティネット」という言葉を使っているようです。
>第1のセーフティネットでは支えきれない様々な生活上の困難を多重的・同時的に抱える個人・家族に対して、個々人の事情に即した横断的・継続的支援を行い、自立へと導く体制を構築する(アウトリーチ型支援、NPO等も含めた様々な支援機関を包含した包括的なネットワーク型支援への展開)。
二丁目三番地の生活保護については「最後のセーフティネットの適正化」と、「適正化」という言葉を使っていて、運動家方面の方々からは疑念を持ってみられるかも知れません。
三番目の柱は「普遍主義、分権的・多元的なサービス供給体制」で、もちろんその中心は「安心で良質な医療・介護の提供ネットワーク」ですが、ここで特に注目しておきたいのは、三丁目三番地に「住宅政策」が上がっていることです。
>従来の供給量重視の住宅政策は国土交通省(旧建設省)中心で行われてきたが、社会構造・人口構造の変化を踏まえたこれからの住宅政策は機能・質重視に転換する必要があり、サービス付き高齢者住宅など、社会保障的視点を重視した体制としていくことも検討課題。
これは、分かる人は分かる、けっこう大きな意味を持つ文章ですね。戦前の体制下では、住宅政策というのは内務省社会局が社会政策の観点から行っていたわけですが、戦後建設省が作られてからは、社会政策の一環という観点は薄れていってしまっていました。
これは数十年ぶりに、住宅政策は社会保障の一環だぞ、と宣言しようとしているようにも見えます。うしろの方の各論では「住まいのセーフティネット」という表現もありますね。
第4の柱は「安心に基づく活力」と題して、経済成長との好循環を強調しています。
ここで、各論に行く前に、「東日本大震災の復興に関する提言」がいくつか示されています。
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