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2011年5月13日 (金)

公務員初任行政研修全体討議

本日、月曜日の講義を受けて、わたくしから提示した3つのテーマについて6班に分かれて研修生たちによる報告と討議がありました。

わたくしが与えた課題は次の3つです。

1:「所得保障の前提として、働ける人にはまず働いてもらうべきだ」という意見と「働く働かないにかかわらず生きていける所得を保障すべきだ」という意見についてどう考えるか?

2:「学校は専門技術的な教育よりも普遍性のある基礎教育を重視すべきだ」という意見と「学校はもっと社会に出てから役に立つ専門技術教育を重視すべきだ」という意見についてどう考えるか?

3:「正社員の雇用保護を緩和すべきだ」という意見と「緩和すべきでない」という意見、「正規と非正規の格差は早急に是正すべきだ」という意見と「拙速に介入すべきでない」という意見についてどう考えるか?

最後に総合講評ということで、研修生の皆さんに述べた言葉は、気がつくと昨年同じ場で喋ったものとほとんど同じでした。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-2a45.html

>皆さんは大変厳しい状態におかれている。政治主導だと言って、公務員は政治家が決めたことを粛々と実行すればいい、よけいなことを考えるなというような傾向もある。けれど、それがうまくいかなくなったときに、どうにかしなければいけないのは皆さんだ。政治家じゃない。マスコミでもない。学者でもない。

よけいなことを言うな、考えるな、といっていた政治家が困った困ったどうしよう、と言いだしたときに、ちゃんと筋道の立った、さまざまな利害関係を考慮した、現実可能性のある選択肢をきちんと提示することのできる力量のある者は、残念ながら皆さん以外にはない。日本は民間シンクタンクが膨大な有能な政策人材を擁し、選挙のたびに役所に入ったり出たりする国ではない。知った風な口をきく評論家に、複雑な応用問題を解ける実力のある人はほとんどいない。

かつては、若手官僚は忙しいといいながら、長い拘束時間の中にそれなりに余裕もあって、その中で目の前の課題から離れた大きなテーマを考えたり、口泡とばして議論するという傾向があった。最近は業務量が半端じゃなく増えてしまい、そういう余裕がだんだんなくなってきて、いざというときに取り出せる部分が縮小しているような気がする。置かれた状況が厳しい中ではあるけれど、マニフェストが行き詰まったときにきちんと政策を提示できる能力を育ててほしい。皆さん以外にその任に堪えうる人々は残念ながらいないのだから。

さて、今回の研修が3グループに分かれ、私と権丈先生が講師ということは先日書きましたが、もうお一人は桐蔭横浜大学の河合幹雄先生で、お話ししていて、日本学術会議の大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会の「法学分野の参照基準検討分科会」というのに参加されているということを知りました。

http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/daigaku/pdf/hougaku-kousei.pdf

昨年公表された「回答」を踏まえて、各学問分野ごとに参照基準を作ろうということになっていて、そのトップバッターとして法学が選ばれたようです。この構成員名簿を見ると、労働法から浅倉むつ子、吾郷眞一のお二人が入っているようです。

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コメント

ずっと、「法学部不況」などといわれてきましたが、今日(13日)の日経新聞の経済教室(猪木先生執筆)をみると、経済学者の中でも、経済学の方法論「至高主義」に反省がでてきているように感じました。

震災以降、法学部生が学ぶ「賢慮」ということについて、今後前向きの少し評価が与えられるきざしがでてきた感じもあり、バランス上よいことではないかと思います。

最近、経済学者のハジュン・チャンの「世界を破綻させる23の嘘」を読んだら、嘘の1つに、「良い経済政策の導入には経済に関する深い知識が必要」というのがあげられていて、興味深く思いました。

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