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2011年5月19日 (木)

鉱山保安と原子力保安

菅首相が、原子力安全・保安院を経済産業省から切り離すことを検討しているようですが、

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110518-OYT1T00961.htm(首相、保安院切り離し検討…送電と発電の分離も)

>原子力行政は「根本的に見直す」とし、原子力を推進する立場の経済産業省と、安全規制を担う原子力安全・保安院を分離する方向で検討するとした。

産業振興役の行政と安全規制役の行政とは当然利害が反するはずですが、それを同じ組織に担わせてきたことが事故の原因だ、という話は、なんだかすごいデジャビュを感じます。

実をいうと、原子力安全・保安院という組織には「鉱山保安課」という原子力とは何の関係もない部局もあるんですね。

http://www.meti.go.jp/intro/data/akikou32_1j.html

これは、かつて商工省から通商産業省に設置されていた鉱山保安局の名残りなのですが、これについて終戦直後の時期に新設の労働省との間で所管争いがあったのです。

拙著『労働法政策』の「安全衛生法政策」より、

>なお、この時、鉱山保安行政についても労働基準法制定時にはいったん労働省の所管とされながら、労働安全衛生規則制定時に商工省との話し合いがつかず同規則を適用しないという除外規定が設けられ、その後政治的な紆余曲折を経て、1948年12月の閣議で「石炭増産の必要上、商工大臣が一元的に所管すること」とされてしまい、1949年5月の鉱山保安法で、鉱山保安に関しては労働基準法が適用されないこととなった。このため、当初労働基準局に置かれた鉱山課も廃止され、以後、鉱山のみは生産が安全衛生に優先する行政体制となった。ただし、鉱山保安法に危害防止に関し労働大臣の通商産業大臣への、労働基準局長の鉱山保安局長への勧告権が辛うじて規定された。ちなみに1960年代には数百人の命を奪う炭鉱大事故が続発し、労働基準局長から鉱山保安局長に対し計6回に渉り勧告が行われた。

工場であろうが建設現場であろうが鉱山であろうが、当該産業振興を一生懸命する行政部局が同時に安全規制をやっていいはずはないのですが、この時は「石炭増産の必要上」という理由で生産が安全に優先されたわけですね。

その時の生産優先の政治判断による組織の名残が、もはや日本に炭鉱は一つもなくなった今、それに取って代わった石油にさらに代替するという触れ込みであった原子力行政機関の中にひっそりと生き残っていたということに、何とも歴史の流れの中の不易流行をしみじみと感じます。

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コメント

「原子力安全・保安院」が「原子力安全保安院」ではない(途中に”・”の文字が含まれる)のも、原子力安全保安と産業保安を担うが故の話だと聞いた記憶があるような。。。(確証のない真偽不明な話ですけど。)

いずれにしても、原子力安全の部分を経済産業省から切り離すとしても、産業保安の部分をどうするのか?の話が俎上に上っていないように見えるので、どうするのかなぁ?と思っています。

現状では、広汎な産業保安・(原子力以外の)電力の安全・ガスの安全・液化石油ガスの安全・鉱山保安だって、「原子力安全・保安院」の所掌ですから。

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