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選挙運動のための労務

これはよく分からないので、むしろ行政法方面の方の教えを請いたいのですが、

http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/national/20110508-OYT1T00293.htm(未成年者に選挙運動させる、落選候補ら逮捕)

>未成年者に報酬を支払う約束をして選挙運動をさせたとして、神奈川県警捜査2課は7日、4月24日に投開票された藤沢市議選に立候補し、落選した同市天神町、元同市部長で社会福祉法人理事、種部弘(63)と、同市本藤沢、学習塾経営湯浅博文(62)の両容疑者を公職選挙法違反(買収の約束、未成年者使用)の疑いで逮捕した。

発表によると、両容疑者は共謀し、同市議選告示後の4月中旬、同市に住む未成年の男女数人に対し、1人1日数千円の報酬を支払う約束をし、駅前などで数日間にわたって、種部容疑者の名前を連呼してあいさつするなどの選挙運動をさせた疑い。湯浅容疑者は種部陣営の選挙運動員で、経営する学習塾で知り合った未成年者を種部容疑者に紹介したという。

公選法は、未成年が投票を呼びかけるなどの選挙運動を禁じているが、男女数人は、街頭での投票の呼びかけのために集められ、県警は近く、男女数人も同法違反容疑で書類送検する方針。種部容疑者は1970年から藤沢市役所に勤務、福祉健康部長などを歴任して2008年3月に退職。無所属の新人候補として出馬、候補者43人中、41番目の得票数で落選している

根拠条文は、公職選挙法137条の2なのですが、

第137条の2 年齢満20年未満の者は、選挙運動をすることができない。
 何人も、年齢満20年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない

おそらく、問題は「選挙運動」と「選挙運動のための労務」の定義にあるのだろうと思うのですが、少なくとも上の新聞記事から想像するに、当該学習塾に通う未成年たちは、割の良いアルバイトという気持ちで「選挙運動のための労務」を提供したに過ぎないのではないかと思われるのですが、それが未成年者に禁じられた「選挙運動」とみなされて候補者の逮捕という事態にならなければならない理由は那辺にあるのか、よく理解できないところがあります。

まあ、政治ってのは労働基準法上の「公衆道徳上有害な業務」だと言われると、そうカナという気分もないわけではないですが、まあそれは冗談として、駅前で候補者の名前を連呼するという至極単純な労務に従事したことが「選挙運動のための労務」ではなく「選挙運動」に該当するというのは、(少なくとも労働法的感覚からすると)いささか違和感があります。

本件では、彼らに1日数千円の「報酬」を支払っていますので、「運動」の参加者として無償の役務を提供しているのではなく、まさに報酬を対価として労務を提供しているとしか解釈できないのですが。

候補者の名前を連呼するだけでも「労務」じゃなくて「運動」だとすると、スーパーの売り出しの宣伝で店の名前を連呼することも「労務」じゃなくて「運動」だから賃金を払わなくても良いとか、そんなことはありませんからね。それこそ見え透いた労働者性の否定であって、バカ者と言われるはず。

では、会社の社長さんが選挙に出るからといって、その会社の社長さんの名前を会社の名前とともに連呼するのは、労務なのか運動なのか、とか。

いずれにしてもよく分からないので、納得できる説明がどこかにないかと思っているのですが。

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コメント

公選法の条文解釈に遡ったわけではない実践知でしかありませんが、学生時代の選挙運動経験の記憶を引きずり出してみます。

基本的には、選挙運動=投票依頼行為ということになっています。
逆に公選法上の労務とは、ポスター貼り、買い出し、お茶くみなど、投票依頼行為を含まない労役で、投票依頼の電話かけや街頭演説の同行などはダメ、ということになります。もちろんグレーゾーンはたくさんありますが、運用レベルでは、候補者の名前を事務所外で口に出した瞬間に選挙運動とみなされる、と選挙事務所は「労務者」に注意することが多いですね。(グレーゾーンですが、法定ビラのポスティングはOKで、路上配布はNGとされるのも、路上対面渡しでは候補者の名前の発話がされるとみなされるからだと思います)

有償で選挙運動が可能な人は、車上運動員(いわゆるウグイス嬢)&事務員で人数制限のある選管届出制で、それ以外の労務者が投票依頼の電話かけなどをした場合、もしくは届出外の運動員が報酬をもらうと、成年/未成年を問わず公選法違反(買収)になります。それとは別に、車上運動員や事務員に未成年を雇うことはできないという規定もありますので、当該事例は、ダブルの違反になっているのだと思います。

もちろんこうした公選法上の規定はご存知の上で、この「労務」と「選挙運動」の弁別が労働法的感覚では違和感があるということなのでしょうけれど…
(もちろん、選挙にかかわった者は誰でも、もっと素朴にしょうもない規定だなと常に感じるものです)

失礼いたしました。

投稿: yas-igarashi | 2011年5月 8日 (日) 20時12分

どんな些細な運動員にも報酬を払ってはいけないというのは、選挙買収と運動員に賃金を払うことの境目が不明確だからでしょう。それ以外には、様々な文化的背景があると思います。

一方、あれもこれもウグイス嬢以外はすべてタダ働きという選挙事務所の文化の中で政治家が育っているということが、政治家が分配の問題以外、労働問題に疎いどころか、嫌悪感(解雇になって騒いでいるような人に絶対に近づかないような行動様式)を示す背景にあるのかも知れません。またパワハラや好き嫌いレベルの一方的な秘書解雇問題がゴロゴロしているというのもそういうところにあるのかも知れません。

投稿: きょうも歩く | 2011年5月 8日 (日) 23時24分

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» 5/8 未成年者の選挙アルバイトの問題から [きょうも歩く]
hamachan先生が、未成年者に選挙運動のアルバイトをさせた落選候補の事件を取り上げて、選挙運動に労務を提供した若者がなぜ労働とみなされないで、選挙運動とみなされるのか、と疑問を呈しておられます。もちろん先生は公選法の文理解釈は織り込み済みで、そんなことになっている意味と、実際に票と取引した金でもない事件を事件として扱っている意味を問うています。 おそらく、問題は「選挙運動」と「選挙運動のための... [続きを読む]

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