『POSSE』11号「〈3・11〉が揺るがした労働」
『POSSE』11号が届きました。特集は左の表紙の通り「〈3・11〉が揺るがした労働」です。
http://www.npoposse.jp/magazine/new.html
代表の今野晴貴さんが「現代労働問題の縮図としての原発」を書いています。原発被曝労働の本質を、「安全と危険の境界が存在しない」「死を前提とする」労働ととらえ、それを成り立たせているのが下請構造による危険の下への押しつけであり、こうした差別と隠蔽の構造に対し、共通基準の構築へと向かうべきだと論じています。
これは多くの文科系労働研究者に共通だとおもうのですが、過労死・過労自殺といったわかりやすい話以外の安全衛生問題は、理工系のある程度の知識を要求する技術的テーマであることから、特定の人以外はどうしても敬遠しがちで、わたし自身、電離放射線障害防止規則というのがあることは『労働法全書』に載っているので昔から知っているけれども、具体的な中身を始めから読んだのは、今回原発事故直後に突然緊急作業時の被曝限度を引き上げると報じられて、それはいったい何のことだ?と慌てて取り出したのが初めてです。多分、多くの人がそうなのではないかと思います。
ここで紹介されている電離放射線の労災認定基準はこれですが、
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0909-11c.pdf
これは1976年の通達なので、シーベルトじゃなくてまだレムという単位を使っていますが、確かに白血病について、0.5レム(=5ミリシーベルト)×(電離放射線被ばくを受ける業務に従事した年数)を「相当量」として、業務上の疾病として取り扱うと書いてありますね。
これはもちろん労災認定基準なのですが、今回引き上げられた250ミリシーベルトという安全衛生基準との落差は大きいものがあります。もちろん、電離則の本則は5年で100ミリシーベルト、1年で50ミリシーベルトであり、妊娠する可能性がないものを除く女性は3か月で5ミリシーベルトとかなり厳しい基準なのですが、それにしても白血病を発症したら労災認定される可能性のある被曝量の50倍までOKにしてしまったのか、という驚きは改めて感じます。
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