『生活経済政策』4月号
生活経済政策研究所からお送りいただいた『生活経済政策』4月号は、「負担とビジョン」が特集です。
http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html
まずは駒村康平さんの「社会保障・税一体改革の展望」です。
>高齢化が加速する中で、5%程度の消費税アップでは止血剤程度の効果しか持たない。グローバル化と高齢化の中で、長期的に安定した社会保障制度を築くためには、政府は具体的で詳細な「新しい社会保障制度」の「仕様書」、「見積書」を示した上で、国民に負担増という「請求書」を提示する必要がある。この作業は、既に政府内でさまざまな改革チームがスタートし、作業に入っている。しかし、最も重要なことは計画作りではなく、利害調整と実行力であり、政治的な覚悟が必要である。
やるべきことは、与党も野党もまともな人々はみんな分かっているのに、それが出来ない状態に追いやられる理由は何か?を問いかけているのは、政治学者の三浦まりさんです。「社会保障改革と野党の政治責任」。
>・・・しかしながら、現在は妥協が先走り、その結果、合意が可能にもかかわらず、政治は膠着状態に陥っている。
>・・・こうした思惑のすれ違いから、民主党は政策面で自民党・公明党にすり寄ってきているものの、皮肉にも却って政治的合意が不可能な状況になっている。そして、民主党が妥協すればするほど、マニフェストを守るのか、守らないのかが問われることになる。
>妥協をほのめかすとマニフェスト違反だ、ならば信を問え(解散しろ)といわれる。公約破りのレッテルは避けたいところだから、マニフェストの精神は遵守しているとしか言いようがないが、そうなると、ばらまきマニフェストの過ちをまず認めよと言われる。
>マス・メディアで取り上げられる政治応酬はこの次元の話であり、あまりのレベルの低さに有権者の既存政党への不信感はますます高まっていると予想される。そうだとすると、名古屋の例が示すように、減税を掲げる政党が旗揚げされたり、躍進したりする可能性をいっそう高めることになろう。主要政党が増税で一致しつつ、無益な応酬で時間を無駄にしている間、野心はあるが社会保障改革に興味のない政治家にとっては、減税の公約を掲げる誘因がいっそう高まっているのである。
まったくそのとおりですね。
国民の大部分が、そして政治家の大部分がほぼ同意していることが、(かつて政治学者や政治評論家たちが鳴り物入りで褒め讃えた)二大政党制の(意見が違わないのに対立して見せなければならないという)歪んだ構造のために実行できず、国民の一部の無責任な声ばかりが無責任なポピュリスト政治家によって増幅されて、日本の将来をますます暗黒の世界に導いていくという悲劇(であるとともに笑劇)が実演されているわけです。
ま、これらは大震災以前に書かれた文章ですので、大震災を目の当たりにした国民が、いつまで無責任なポピュリストを支持しつづけることになるのか、注視していきたいと思います。
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