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2011年3月28日 (月)

ワーク・ライフ・インバランスの原因

86730 佐藤博樹・武石恵美子編著『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(勁草書房 )をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://www.keisoshobo.co.jp/book/b86730.html

さて、佐藤先生編著のワラバラ本も既にかなりの数に上りますが、本書は東大の社研がコンサル会社や民間企業と共同研究してきたプロジェクトの報告です。

>いつでも残業が出来る社員像を前提とした仕組みから時間に制約のある社員像を前提とした仕組みへ。改革の鍵は管理職の職場マネジメントにある。本書では、データ分析や海外との比較を通じて、日本の職場での働き方の特徴やWLB阻害要因を明らかにし、時間意識の高いメリハリのある働き方に転換する為の具体的な取り組みを提示する

目次は次の通りですが、

はじめに[佐藤博樹・武石恵美子]

序章 ワーク・ライフ・バランスと働き方改革[佐藤博樹]
 1 「新しい報酬」としてのワーク・ライフ・バランス支援
 2 ワーク・ライフ・バランス支援を実現するために
 3 ワーク・ライフ・バランス支援と女性の活躍の場の拡大
 4 ワーク・ライフ・バランス支援と人事処遇制度の連携、企業業績
 5 人材活用の要としてのワーク・ライフ・バランス支援

第Ⅰ部 ワーク・ライフ・バランスの現状と課題

第一章 働く人々のワーク・ライフ・バランスの現状と課題[高村静]
 1 調査対象者および働き方の概要
 2 ワーク・ライフ・コンフリクトの状況について
 3 ワーク・ライフ・バランスの実現の状況と組織に対する働く人の意識特性
 4 ワーク・ライフ・バランスの実現に影響を与える職場の特性
 5 夫婦の働き方とそれぞれの職場の両立支援制度
 6 適切なマネジメントが高めるワーク・ライフ・バランス施策の効果
 コラム

第二章  社員のワーク・ライフ・バランスの実現と管理職の役割[松原光代]
 1 管理職の働き方
 2 部下のワーク・ライフ・バランス満足度と職場のパフォーマンスを高める要因
 3 管理職のマネジメントを高める要因
 4 ワーク・ライフ・バランスとワーク・ライフ・バランス支援のための職場マネジメントの課題
 コラム

第三章 欧州企業における働き方とワーク・ライフ・バランス[朝井友紀子]
 1 欧州と日本の働き方の違い
 2 日本のワーク・ライフ・バランス推進の現状とそのニーズ
 3 欧州ヒアリングの概要と結果
 4 欧州の働き方が示唆すること

第Ⅱ部 ワーク・ライフ・バランスを実現するための働き方改革

第四章 時間意識の向上のためのモデル事業と働き方改革[武石恵美子・佐藤博樹]
 1 働き方改革と時間意識
 2 時間制約を意識化する
 3 働き方改革のモデル事業の概要
 4 働き方改革はどのように進んだか
 5 職場マネジメントの対応
 6 働き方改革を進めた職場事例
 7 成果と課題

第五章 柔軟な働き方を可能とする短時間勤務制度の導入と運用[矢島洋子]
 1 柔軟な働き方の選択肢として期待される短時間勤務
 2 短時間勤務制度に対するニーズ(従業員・企業)
 3 短時間勤務制度の導入における課題
 4 短時間勤務制度の運用上の課題
 5 短時間勤務制度の運用からみえてくるもの

第六章 実務の現場から提案する残業削減の必要性と課題[大塚万紀子]
 1 残業の弊害と残業削減のメリット
 2 残業削減に取り組む際の基本的な考え方
 3 残業削減策の具体的なステップ
 4 社会全体でワーク・ライフ・バランスの実現を

終章 働き方改革を進めるために[武石恵美子]
 1 ワーク・ライフ・バランス実現における「働き方改革」の意味
 2 現状の働き方の課題はどこにあるのか
 3 働き方の改革をどう進めるか
 4 働き方改革のための課題

ここでは、朝井友紀子さんの「欧州企業における働き方とワーク・ライフ・バランス」から、なんで日本ではワークとライフがインバランスになるのか、その理由を5点にわたって指摘しているところを紹介したいと思います。

まず何よりも、

①一人一人の仕事の範囲が明確でない

つまり、ジョブ型じゃないということですが、

>海外で数年働いた経験のある日本人の社員は、欧州と日本の働き方の違いを生み出している要因として一人一人の仕事の範囲が明確でないことを指摘する。日本では、仕事ができる人に仕事が集まってくるという傾向がある。よって、仕事をすればするほど、仕事は追加され、優秀な社員ほど仕事量が多いという仕事配分の不均等が生まれる。

一方、欧州の場合は、担当職務ごとに個々人の役割が明確にされており、仕事の範囲は決められているため、担当する仕事が終われば、早く帰ることができる。仕事を助け合うというのは、仕事の運営上重要ではあるが、日本のように仕事ができる人に他の人の仕事を肩代わりさせ、業務量を増やすことは、優秀な社員のストレスを増加させるだけでなく、バーンアウトを引き起こす原因ともなる。・・・

②資料の見栄えの過度の追求

>日本では資料の細部や見栄えに非常にこだわるため、一つの資料作成にかける時間が長いという点が特徴的である。ある欧州の社員は、日本の社員の資料に関して、図表の美しさには目を見張ると語っていた。・・・

いやあ、まったくそうなんですよね。それでいて、投入労働時間にはまったく見合わない程度の扱われ方しかしないことがおおいのですが。

③プレゼンティイズムの存在

>数年前に、長時間労働をしていたと語る欧州の社員は、長時間労働をしていると非生産的になることを指摘する。睡眠不足や疲れ等によりストレスが溜まると、1時間でできる仕事に2時間かかり、ミスも増える。・・・しかし、日本の社員の場合には、不景気でも好景気であっても、22時に退社するというスタイルを変えようとしないという。・・・

④会議の数が多く、その規模が大きい

これはよく指摘されることですが、なぜそうなるかというと、

>日本と欧州では、各社員への決定権限の持たせ方が違うことも会議の数の違いを生み出している要因でもある。日本では、意思決定に際してコンセンサスの形成が重視される。他方、欧州では担当者にある程度の決定権限を委ねていることが多いため、一つのものごとを決定する前段階として、情報共有や確認のために多くの会議をし、意見をすり合わせる必要はないのである。その代わり、担当者は決定に責任を持つことになる。・・・

と、丸山真男の政治学を改めて読んでいるかと思うような日本型意思決定プロセスに帰着していくのですね。

⑤頻繁な組織変

>日本の企業では、欧州と比べて、組織変更や人事異動が頻繁にあることが特徴である。新しい職場に異動させることで、仕事の幅を広げることによる人材育成や企業内の情報共有、さらには働くモチベーションを高めたり、仕事のマンネリ化を避けたりするための措置であるが、時には生産的でないところに時間と労力を使いストレスを増加させることにもなる。転居を伴う転勤や異動をきっかけとしてうつ病になってしまう者もいる。・・

こう見てくると、ワラバラ問題はなかなかに根が深いことが分かります。

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コメント

高野陽太郎なら、エピソードに基づく日本人論、本質主義として一周するような論法ですね。

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