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2011年3月31日 (木)

橋口昌治『若者の労働運動』

132731 橋口昌治さんから近著『若者の労働運動 「働かせろ」と「働かないぞ」の社会学』(生活書院)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.seikatsushoin.com/bk/070%20wakamono.html

橋口さんは、本エントリ末尾のリンク先にあるように、拙著『新しい労働社会』について、真摯な辛口批評をされていますが、本書はその橋口さんの研究の全貌を読むことができます。

>労働市場の周辺や外部に置かれ、労働によっても痛めつけられてきた「若者たち」。労働者階級としての確信は持ちえていず、デモでは、「働かせろ」と「働かないぞ」という矛盾したシュプレヒコールが飛び交う。労働から疎外され孤立させられた人々が、それゆえに団結をして労働問題に取り組んでいる運動、それが「若者の労働運動」なのである。
「若者の労働運動」は矛盾に満ちた運動である。組合員は労働問題を契機として集まり、不当解雇や賃金未払いなどの不法行為を企業に是正させるために日々走り回っている。その一方で、労働者としてのアイデンティティや「働かざるもの食うべからず」といったような労働規範を共有していない。職場や職業が異なり階級意識も共有していない人々を惹き付けるために、「青年」や「フリーター」、「プレカリアート」などの集合的アイデンティティの形成を試みてきた。それは一定の成功を収め,多くの組合員が加入するようになっているが、同時に多様なアイデンティティを持った人々と集合的アイデンティティとの間で葛藤も生じている。しかしこうした、通常の労働組合であれば乗り越えるべき課題と捉えられそうな矛盾や葛藤こそ、「若者の労働運動」の特徴であり、運動を運動たらしめているものなのである

目次は下記の通りですが、第1章が理論編、第2章から第5章までがケーススタディということになります。

ケーススタディの対象は、メンタルヘルス上の問題を抱える人が多く「働くことを絶対視しない居場所づくり」に重点を置くユニオンぼちぼち、労働基準法を守らせる戦いに重点を置く首都圏青年ユニオン、プレカリアートなどアイデンティティ戦略を重視するフリーター全般労組、「労働/生存組合」を名乗るフリーターユニオン福岡の4つです。労働法的にはもちろん首都圏青年ユニオンの活動が一番関わり深いわけですが、副題にある「働かせろ」と「働かないぞ」の二重性ということからすると、ぼちぼちや福岡のケースが興味深いということになりましょう。

序章
      1 本書の課題
      2 「若者の労働運動」の定義
      3 本書の構成

第1章 労働社会の変容と「若者の労働運動」
      1 本章の課題
      2 三つの「労働社会」論
      3 労働を中心とした社会の生成と変容
          3-1 労働力商品化と労働社会の成立
          3-2 労働を中心とした社会への批判
      小括
      4 雇用社会の到来と変容
      5 日本における労働社会の変容と「若者の労働運動」
          5-1 日本における労働社会の出現
          5-2 労働社会の到来と雇用社会の成立
          5-3 雇用社会の変容
          5-4 「日本的雇用」における「人間」の変化
          5-5 「若年者雇用問題」と若者支援
          5-6 日本における労働社会の変容と「若者の労働運動」
      小括

第2章 「若者の労働運動」は何をしているのか──「ユニオンぼちぼち」の事例から
      1 本章の課題
      2 「ユニオンぼちぼち」の活動内容
      3 労働社会の変容と「ユニオンぼちぼち」
          3-1 結成過程の問題意識──「労働問題」の共有と関係性の創造
          3-2 労働問題を意識化できるが、働くことを絶対視しない場所
      4 まとめ

第3章 企業社会のオルタナティブ──首都圏青年ユニオンの事例
      1 本章の課題
      2 組合加入者の多くがサービス業に従事する若い非正規労働者
      3 アンケートから見る青年ユニオン
          3-1 アンケート結果の全体像
          3-2 主な相談相手は家族か友達
          3-3 「違法の3点セット」への対応
      小括
      4 結成過程の問題意識
      5 運営方針の特徴
          5-1 労働基準法を守らせる闘いを展開すること
          5-2 争議解決の過程などを通して権利行使の主体としてエンパワーメントをすること
          5-3 団体交渉などあらゆる組合活動を参加型にすること
          5-4 組織作りや仲間作りの工夫を行い組合を定着できる居場所にすること
      小括
      6 まとめ

第4章 経験運動としての「若者の労働運動」──フリーター全般労働組合の事例
      1 本章の課題
      2 先行研究の検討
      3 フリーター全般労働組合の問題意識の変遷
          3-1 【第1期】フリーター像の読み替えとフリーターによる労働組合
          3-2 【第2期】「自由と生存のメーデー」と「若者の人間力を高めない非国民宣言」
          3-3 【第3期】 フリーター全般労働組合の運動文化の形成
      4 組合員個々人のアイデンティティの変容と経験運動
          4-1 「…自分は8時間なりなんなり働いている時間は労働者なんだ…」
          4-2 「…明らかに『あたしは労働組合では守られない』ってどこかで思ってる…」
          4-3 「…ここでパーティーをやってても無駄だなぁと(笑)」
          4-4 「…文句を言ってはいけないとか,ずっとひどくて当たり前とか…」
          4-5 「…同じつながれる破片を持っている組合員が結構いる…」
          4-6 「それは多分,嘘じゃない言葉じゃないですか」
      5 まとめ

第5章 「労働/生存組合」の誕生──フリーターユニオン福岡の事例研究
      1 本章の課題
      2 ニート・引きこもり支援に関する先行研究の検討
      3 フリーターユニオン福岡の結成過程と活動内容
          3-1 結成過程と基本的な活動
          3-2 取り組んできた労働問題
          3-3 デモや企画などの活動内容
      4 フリーターユニオン福岡はどのような場所か
          4-1 自己責任論に反撃できる場所
          4-2 労働規範に疑問を持ち続けることと労働問題に取り組むことが両立できる場所
          4-3 「また引きこもりに戻るだけですから」と思えるようになった場所
          4-4 根元に遡って考えたりすることのできる場所
          4-5 つまはじきにされた人が一矢報いる場所
          4-6 「権力」に対してNoを言っていく場所
          4-7 多様性の認められる社会を作っていくために闘っていける場所
      5 まとめ

終章

あとがき
参考文献

第1章では、拙著も含め、多くの本が引用されながら、橋口さんの理論枠組みが提示されています。「雇用社会」と「労働社会」という言葉の使い方など、違和感を感じるところもありますが、是非お読みいただきたいところではあります。

なお、橋口さんの拙著書評は、アマゾンのレビューと、『生存学』第2号に載っています。

http://www.amazon.co.jp/review/R20F822D3FCMJC/ref=cm_cr_rdp_permリアリストなのだろうか

http://homepage3.nifty.com/hamachan/20100406123153794_0001.pdf

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