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男女別保険料は禁止!

さて、今月1日に、欧州司法裁判所がかなり影響の大きな判決を下していました。厳密には労働問題の範囲を外れるのですが、男女差別禁止法制の一環として、拙編『EU労働法全書』にも掲載されている「財及びサービスへのアクセスとその供給における男女均等待遇指令」の解釈に関わる問題ですので、ご紹介しておきます。

http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en&newform=newform&Submit=Submit&alljur=alljur&jurcdj=jurcdj&jurtpi=jurtpi&jurtfp=jurtfp&alldocrec=alldocrec&docj=docj&docor=docor&docop=docop&docppoag=docppoag&docav=docav&docsom=docsom&docinf=docinf&alldocnorec=alldocnorec&docnoj=docnoj&docnoor=docnoor&radtypeord=on&typeord=ALL&docnodecision=docnodecision&allcommjo=allcommjo&affint=affint&affclose=affclose&numaff=&ddatefs=&mdatefs=&ydatefs=&ddatefe=&mdatefe=&ydatefe=&nomusuel=&domaine=PSOC&mots=&resmax=100

31615557 まず、この指令ですが、

財及びサービスへのアクセスとその供給における男女均等待遇原則を実施する閣僚理事会指令(2004年12月13日)(2004/113/EC)

適用対象には、当然保険のような金融サービスが含まれるわけですが、指令を作るときに、保険業界から猛烈なロビイングがあったこともあり、第5条には第2項のような適用除外規定が設けられていたのですね。

第5条 年金数理的要素

1 加盟国は、2007年12月21日以後に締結された全ての新たな契約において、保険及び関係する金融サービスを目的とする保険料及び給付の計算における要素としての性別の利用が個人の保険料及び給付が相違するという結果とならないよう確保するものとする。

2 第1項にかかわらず、加盟国は2007年12月21日の前に、性別の利用が関係する正確な保険数理的及び統計的データに基づくリスク評価における決定要素である場合には、個人の保険料及び給付における適当な相違を認めるよう決定することができる。関係加盟国は欧州委員会に通知し、決定的な保険数理要素としての性別の利用に関係する正確なデータが収集、発行され、定期的に更新されるよう確保するものとする。これら加盟国は、2007年12月21日の5年後、第16条に定める欧州委員会の報告を考慮に入れてその決定を見直し、この見直しの結果を欧州委員会に通知するものとする。

3 いかなる場合においても、妊娠及び出産に関係するコストは個人の保険料及び給付の相違という結果をもたらさないものとする。

 加盟国は、2007年12月21日の2年後までに、本項を遵守するのに必要な措置の施行を延期することができる。この場合関係加盟国は直ちに欧州委員会に通知するものとする

で、ベルギーはこの規定に基づき、適用除外規定を設けていたのですが、それはおかしいと噛みついたのが、Association belge des Consommateurs Test-Achats ASBLという団体です。このベルギーの消費者団体が憲法院に訴え、欧州司法裁に付託された案件に対し、何ともはや上記第5条第2項の適用除外規定は無効だという判決が下されたわけです。

Article 5(2) of Council Directive 2004/113/EC of 13 December 2004 implementing the principle of equal treatment between men and women in the access to and supply of goods and services is invalid with effect from 21 December 2012.

指令の文言上は、5年という期限はあくまでも見直しをせよといっているだけで、見直したけれど、やっぱり適用除外を続けるよ、という選択肢は認めているわけですが、指令前文で引いているEU基本権憲章に男女差別は全部ダメだと書いてあるから、といういささか乱暴に見える理屈で、5年経ったら適用除外は無効だと言い切ってしまいました。

これは、営利企業がやっている民間保険の根本に関わる問題でしょうね。民間保険というのは、対象を細かくセグメント化して、それぞれのリスクを細かく計算して、それに応じて保険料率を設定するというのが基本的なビジネスモデルになっているわけで、保険業界が驚きあわてふためいているという報道もさもありなんという感じです。

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