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2011年3月28日 (月)

震災復興5原則

大震災に遭った岩手県で地方公務員として日夜奮闘されているマシナリさんが、引き続き震災後の復旧・復興に向けて全国民が考えるべき論点を5点にわたって書かれています。

http://sonicbrew.blog55.fc2.com/blog-entry-447.html

ごく一部だけ引用しますが、是非リンク先に飛んで、じっくりと読んでください。

震災の最前線で奮闘する実務家知識人の一つ一つの言葉が如何に重いかを実感されるでしょう。

1 インフラ整備のための緊急体制としての「大きな政府」の構築

>・・・要すれば、マスグレイブの財政3機能の理論でいう効率的な資源配分と公平な所得再分配と経済の安定化のうち、効率的な資源配分を実現するシステムが市場経済ですが、それが機能していない現在にあっては、政府によってしか実現できない後者の2機能で当面の財政運営をしなければなりません。そこでは予算制約と無差別曲線による最適な消費点が決められない以上、一律の基準で分配することを原則として、個別のニーズには別の基準を設けて対応するということが必要になります。こうした分配の作業は手作業で行わざるをえないので、ここでも市場機能を補完するためのマンパワーが必要となります。つまり、緊急時の対応として、価格システムを通じた分権的な市場経済ではなく、テクノクラートによる中央集権的な分配システムに頼らざるをえないということになります。

以上から、今回の震災で既存したインフラの整備には、道路やライフラインとう物量を確保しなければならない分野と、それを再分配するためのマンパワーの両方が必要となるといえそうです。市場経済を通じた復興はそうしたインフラを整備した後に初めて可能となるものと考えます。一時的ではあっても、ここ被災地では「大きな政府」が必要と考えます。

2 プロフェッショナルが活動できる体制の整備

>前回エントリで指摘したとおり、今後の生活再建に向けて必要となるのは、被災者の経済社会活動を支える制度を十分に機能させることです。そのためには、1で上げたインフラの整備に加え、医療、福祉、金融、雇用といったソフト面において、法令上の特例措置や資金調達、物資調達、賃金原資確保といった物流・金融システムを再構成する必要があります。そしてそれらのシステムは、日本において各分野の専門機関や企業が存在しており、これら各者が持てるノウハウを存分に発揮するための環境を整備しなければなりません。・・・

3 適切な報酬・費用負担についての合意形成

>上記1、2で指摘したことは、いずれも財政負担を伴うものです。私が現時点で最も危惧するのは、自分の負担が増えることについての拒否反応と過疎地への再分配への拒否反応です。・・・

>・・・もっといえば、後出しじゃんけん的に「認識の甘さのために防災設備をケチったから被害に遭っただけで、役人の怠慢だ」という批判も出ているところです。役人の側からすれば、そのような批判がありうることは十分想定した上で、無駄遣い撲滅のかけ声の下に政治主導で公共事業を削減した結果に対応する形で、予算編成に当たる役人が「それなりの基準」を設定してリクツ付けしているのが実情であって、その「それなりの基準」をやり玉に挙げて役人の怠慢を批判することには、それほどの意義を見いだせません。・・・

>そして、この災害に対する財源措置についての制度設計が達成できるかは、「税金がムダな公共事業や役人の天下りに使われている」というステロタイプな税に対する不信感を方向転換して、国民が負担増に合意形成するための試金石となるのではないかと個人的には考えております。もっと直截的にいえば、「被災地支援は国が負担すべき」とか「被災者の生活補償は国が面倒見るべき」という一方で、「増税なんてけしからん」という矛盾した物言いはもはや通用しないのです

>国債だろうが税金だろうが、日本国民がいずれかの時点で負担することには変わりないわけですから、義援金ではとても賄いきれないこの巨額のストック毀損額を国民全体で負担し、その資材調達に要する経費、作業に従事する方、制度を設計する役人に対する報酬を適切に支払うという合意形成が必要不可欠です。

4 経済活動を自粛しない

>・・・こんなときだからこそ、適切な賃金水準を保って消費を冷え込まさせないことが重要と考えます。

ただし、適切な賃金水準を保つことと国民が復興に要する費用を負担することが矛盾するものではないことに留意が必要です。岩手・宮城・福島の沿岸市町村が壊滅的な被害に見舞われ、特に福島原発の災害によって東京を含む関東までも機能低下させることが明確になったわけで、
税負担によりそれらの地域を復旧することは無駄遣いでもバラマキでもありません。特にも、被災地の公共事業は被災者である労働者の所得を確保することになり、日本経済の停滞に歯止めをかけるものでもあります。所得効果を考えない初等経済学の教科書レベルの議論ではなく、公平な所得再分配を念頭に置いた議論が必要です

5 公共事業の箇所付け・規格については地元自治体に裁量を与える

>「津波が来るようなところに町を復旧する必要がない」というようなことをおっしゃる方は、このような権利関係もまっさらにできるとお考えなのかもしれませんが、それは非現実的です。権利をそのままにして建物を復旧するよりも、移転させて住居を提供するという補償のほうが高くつく可能性もあるわけです。

インフラや役場庁舎のような災害時に必要なリソースを移転することはあるかもしれませんが、事業所や住居はできるだけ原状復帰するのが現実的な対応と考えます。その際には、国道等のネットワーク外部性への配慮は国が主導しつつ、都市計画や県道・市町村道は地元自治体に裁量を与えて、より機能的で防災機能の高いまちづくりを進めることが望ましいと考えます。

何も付け加えるべきことはありませんが、最後の点については、たまたま最近本ブログでも「地方分権」が話題になったことから、若干コメントを。

まさにマシナリさんが書かれているような地方政府こそが的確な知識と情報を持っている分野では、地方政府に決定権限を与えるという意味での地方分権が重要で、もともと分権論が始まった20年近く前に「バス停の場所まで運輸省の認可が必要なのはおかしい」等と批判されたのも、そういうことでしょう。一方で、中央政府はまさに果たさなければならない機能を果たすことが求められるわけです。

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コメント

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2330?page=3

どんな時、どんな事件も自分の宗教的信念を強化するために使用することが可能なのだなぁ、と思いました。

引き続き取り上げていただきありがとうございます。ただの下っ端公務員ですので、「震災復興5原則」などとたいそうなものを書く「実務家知識人」などでは決してありませんが、私の目の前で繰り広げられる現実の諸相が少しでも多くの方に伝われば望外の喜びです。

前回、前々回のエントリは、どちらかというと緊急時の対応を中心に取り上げておりましたので、あまり異論をいただくことなく多くの方にご覧いただいたように思います。一方、今回のエントリでは、価値観の相違が顕著に現れてくる段階にさしかかっていることを意識しております。

hamachan先生の軒下でそのような衝突が生じてしまう原因となることは大変申し訳ないのですが、それに対応できるよう引き続き情報発信していきたいと思います。

なお、エントリタイトルでタイポという痛恨のミスがありましたので、先ほど「復旧・復興に向けてのいくつかの論点」に修正いたしました。お恥ずかしいかぎりです。。

今回のように被災地と多くの知識人が住む地域とが離れている場合、どうしても現場に根ざした声よりも、現場から一定の枠組みで切り取られた断片に基づいて都会知識人が脳内で構築した考え方が認識・評価枠組みとして横行しがちだと思います。
そういう中で、少なくとも多くの労働関係者に対して、マシナリさんが発する現場の声をきちんとつないでいくのがわたくしの務めだと思っています。
引き続き、発信をお願いします。

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