野田進『事例判例 労働法-「企業」視点で読み解く』
野田進先生より、『事例判例 労働法-「企業」視点で読み解く』(弘文堂)をお送りいただきました。
http://www.koubundou.co.jp/books/pages/35449.html
>●「企業」視点という新しい切り口で労働法を学ぼう!
会社で日常的に起こりうる相談事例を多数取り上げ設問形式にして、問題の所在を具体的にイメージしながら「労働法」の基礎が学べるユニークなテキスト。
重要判例をコンパクトに整理した判例クリップ、文献情報、2色刷など工夫満載。臨場感を味わいながら「労働法」を学べる斬新なテキストの誕生。
「企業」視点について、野田先生はまえがきでこう述べています。
>従業員としての経験について思い出すことと言えば、毎日の組織労働(チームワーク)の「体育会的」な快さである。私は、あるメガバンクの大規模支店に配属されていたのであるが、大切なことは、それぞれの部署で、各人が日々の仕事を、規律に従って責任を持ってこなすことであった。・・・企業にとって、組織原理と目的意識がいかに大切なことか、新米会社員で終わった私であるが、少なくともそれだけは体得したと言える。
章立ては斬新ですが、個々の節の内容はむしろオーソドックスなテキストになっています。
序章 企業の中の労働法
1節 本書の目的=「企業」視点の労働法
2節 企業の誕生
3節 使用者とは・労働者とは?
4節 企業とその構成員
1章 合意の原則
5節 労働契約の成立と内容
6節 労働者の採用
7節 就業規則と労働契約
8節 労働協約と労働契約
9節 労働契約の期間
10節 労働契約における権利・義務
11節 労働契約の変更
12節 解雇
13節 労働契約の終了
2章 ヒューマン・リソース
14節 賃金
15節 従業員の配置と異動
16節 雇用平等
17節 パート労働者・派遣労働者
3章 ワーク・ライフ・バランス
18節 労働時間の意義と管理
19節 休憩・休日・時間外労働、適用除外
20節 年次有給休暇
21節 育児介護休業、病気休職・メンタルヘルス
22節 妊産婦等・年少者の保護
4章 リスク・マネージメント(危機管理)
23節 安全衛生と労災補償
24節 企業活動と懲戒
25節 労働組合との団体交渉
26節 団体行動
27節 不当労働行為
28節 会社の組織変動と人員整理
29節 企業倒産と雇用・賃金
30節 労働紛争の解決システム
【事項索引・判例索引】
わたくしの観点からいうと、「企業視点」の労働法というのは企業メンバーシップの角度から労働契約を見るということになります。
実は日本の裁判所の判例法理は、ジョブ型を前提とする実定法をかなりの程度にメンバーシップ型に変えてきたわけですが、それを正面から見据えて理論化したのは、私が思うに弁護士の高井伸夫氏の『人事権の法的展開』(有斐閣)でした。そこでは繰り返し、労働関係は債権契約関係ではなく組織法的身分関係であることが力説されていました。
ただ、企業主義の時代のさなかに出された同書が、ある意味でまさにそのころの時代精神を反映していたのに対して、その後の世の流れの変化を通り過ぎた今日において「企業視点」はそういうものではありえないのでしょう。
本書の章題に「ヒューマン・リソース」とか「リスク・マネジメント」といった、今風の「企業視点」が示されているのが一つのヒントなのでしょうか。
« チホー分権の反省 | トップページ | 森戸英幸『プレップ労働法<第三版>』 »
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011061101000174.html
これのはてなブックマークで労働債権ということばを目にするのですが、倒産蚕に伴う順番は
法律的に決まってはいないのでしょうか
判例レベル?
投稿: 素人 | 2011年6月11日 (土) 17時10分
民法の先取特権で決まっています。
投稿: hamachan | 2011年6月11日 (土) 17時48分