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2011年2月28日 (月)

メンバーシップ型新卒採用に労働条件明示義務はない件について

「就活どうにかしろデモ実行委員会」が、「「就職活動基本法」策定の要望」というのを訴えているようです。

http://syukatudemo.blog77.fc2.com/blog-entry-80.html

その中に、

>(3)労働条件を開示すること。賃金や待遇の情報はもとより、企業の労働環境を判断できる情報を開示すること

というのがありますが、そもそも労働基準法第15条は、

>第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

と規定しているんですね。

ところが、制定時には当然のようにジョブ型雇用契約を前提として設けられたこの規定は、日本の裁判所によって、メンバーシップ型の新卒採用には原則適用しないとされています。

>内定時に労働契約が成立したとすると、ジョブ型契約を前提とする労働基準法の「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」(第15条第1項)という規定と矛盾する可能性が出てきますが、実際の初任給が求人票と異なっていた八州事件(東京高判昭58.12.19労判421-33)では、「新規学卒者の求人、採用が入社(入職)の数か月も前からいち早く行われ、また例年四月ころには賃金改訂が一斉に行われるわが国の労働事情のもとでは、求人票に入社時の賃金を確定的なものとして記載することを要求するのは無理が多く、かえって実情に即しない」として、「契約成立時に賃金を含む労働条件がすべて確定していることを要しない」と判示しました。裁判所は現実の雇用契約が地位設定契約に過ぎないという実態に即した判断をしているわけです

まあ、そもそもジョブ型を前提とする労働基準法では、

2  前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3  前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない

と縁切りを前提とした規定になっているのですが。

こういうふうに、労働実定法は世界共通のジョブ型を前提として規定していながら、判例法理は現実のメンバーシップ型に適応した形で進化してきた点が、日本の労働法制を理解する上で最も重要なポイントなのです。

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