日本型雇用システムへの一次元的評価
平家さんが、「日本的雇用慣行」というエントリを書かれています。が、問題点の所在についての理解がよく分からないところがあります。
http://takamasa.at.webry.info/201012/article_10.html
>日本の失業率の上昇の原因は先進国と共通でしょう。日本的雇用慣行だから失業率が高くなったのではありません。日本的雇用慣行を変えることによって、失業率が低くなるとは思えません。
まさか、一部の一知半解の人々のように、日本型雇用システムが失業の原因だなんてことを、まともに論じている人がいるとお考えなのでしょうか。
もし、失業率「だけ」が労働市場における問題であるのなら、答えは実にもって簡単です。
そうではないからこそ、労働市場の諸システムはそのメリットとデメリットがお互いにトレードオフの関係にあり、あちらを立てればこちらが立ちにくく、こちらをなんとかしようとするとあちらが悲鳴を上げる、という関係にあるからこそ、それらの相矛盾しうる価値を部分的に両立させるために、なんとかうまく回る仕組みを構築しようと常に試みるのではないでしょうか。
先日来書いている日本型雇用システムと女性労働の葛藤の問題もその一つですし、たとえば新卒採用の問題にしても、新卒採用システムだからこそ救われている学生と、だからこそ救われない学生のトレードオフの問題であり、年齢に基づくシステム故に救われている労働者とそれゆえに救われない労働者の利害調整をどうするか、という問題でしょう。
昨年末のブラック企業の問題にしても、まさに外形的にはブラックだけども将来の保障があるからブラックじゃないというシステムだからこそ救われてきた人々が現に大勢いるからこそ、一部の人々のように単純に「ブラックけしからん」で済ませられるような問題ではなくなるわけです。(ニコ生へのネット上の感想の中には、そういういささか単細胞的反応も散見され、メディアを間違えたかな、という感もありますが)
失業率が低くてうまくいっているんだから、女は我慢しろ、・・・というような理屈で雇用システムの問題が納得させられるようなものではないからこそ、労働問題というのは複雑になってくるわけで、平家さんには似合わず、いささか一次元的な評価になっているのではないかと感じました。
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