ジョブ保護法かメンバーシップ保護法か
本日、都内某所で労働判例の検討会。
ネタは日本IBM事件。
法律家的な議論は議論として、つまるところ、EU指令型のジョブ保護法制と、日本的なジョブは何であれ会社員身分がすべてという感覚のずれが、見事に露呈しているのがこの裁判なんだな、とおもうことしきり。
昨年『世界の労働』に書いたこれが、現時点で言うべきことを尽くしているように思います。
http://homepage3.nifty.com/hamachan/jobgata.html(ジョブ型社会のジョブ保護規制-EU企業譲渡指令について)
>ヨーロッパ型の労働社会では、雇用契約が何よりもまず「ジョブ」に立脚し、企業組織再編によってそれが損なわれる-自分が今まで就いていた「ジョブ」が他社に移転するにも関わらず、その「ジョブ」から引きはがされて元の会社に残されてしまう-ことを最大の不利益とみなし、そのようなことが起こらないよう「ジョブ」と一緒に労働者も移転できるようにすることを最大の労働者保護と考える。
一方これとは対照的に、大企業に典型的な日本の労働社会では、雇用契約が何よりもまず「メンバーシップ」に立脚し、企業組織再編によってそれが損なわれる-自分がたまたま従事していた「ジョブ」が他社に移転するからといって、今までメンバーとして所属していた「会社」から引きはがされて見知らぬ会社に送り込まれてしまう-ことを最大の不利益とみなし、そのようなことが起こらないように「ジョブ」の移転に関わりなく元の会社にいられるようにすることを最大の労働者保護と考える。
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職場の労働組合(私の素性を知っている方には不思議な言葉になりますが)が、共済部門を事業譲渡に向けて労使協議を続けていますが、合併ではない事業譲渡の労使関係の法律はほとんど空白で、労働法はメンバーシップでなくなった人に権利はないわ、ジョブには労使関係の継承関係がないわで、信じろと言われて転籍してみないとわからないという状況です。
投稿: きょうも歩く | 2011年1月23日 (日) 18時38分