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2011年1月20日 (木)

公務員の任用は今でも労働契約である

Show_image 先日紹介した西谷・根本編『労働契約と法』ですが、いずれも力作論文ですが、その中でただ一人弁護士として執筆されている城塚健之さんの「公務員と労働契約法」について、一言だけ。

城塚さんは、労働契約法が安易に国家公務員と地方公務員を適用除外にしていることを批判し、できるだけ準用しようとし、さらには労働契約に基づく公務員関係の再構成を提示しています。

安易な公法私法峻別論への批判にはまったく同感なのですが、実は、そもそも現行法においても公務員関係は立派に労働契約であることにも言及された方がよかったのではないか、と思います。

いうまでもなく労働基準法です。労働基準法第13条から第23条までは、ご承知の通り「労働契約」というタイトルの章に含まれています。これは、現在においても、国家公務員非現業職を除けば原則的に適用されます。ということは、少なくとも現業職や非現業地方公務員は「労働契約」のはずです。

さらに、ご承知の通り、マッカーサー書簡のあおりで労働基本権が取り上げられたときに一緒に国家公務員への労働基準法の適用が除外されてしまいましたが、法政策的にどの規定を適用するかしないかという次元は別として、それまで個々の条項が適用されていたのがされなくなったからといって、その法的性質が突如として労働契約からそうじゃないものになってしまったわけではないでしょう。まあ、そうだと主張するならそれでもいいですが、その場合、なぜか国家公務員は労働契約じゃないけれども地方公務員は労働契約だということになります。

このあたりについては、昨年『地方公務員月報』に書いた「地方公務員と労働法」でも触れたところですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/chihoukoumuin.html

>・・・裁判官までが公法私法二元論にとらわれて法律の正しい適用関係を誤解してしまうという事態の中に、この問題の根深さが顕れているといえようか。

労働基準法112条は1947年の制定以来、「この法律及びこの法律に基づいて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする」と規定している。これは、民間労働者のための労働基準法を公務員にも適用するためにわざわざ設けた規定ではない。制定担当者は「本法は当然、国、都道府県その他の公共団体に適用がある訳であるが、反対解釈をされる惧れがあるので念のために本条の規定が設けられた。」と述べている*3。実際、1998年改正で削除された8条(適用事業の範囲)には、「教育、研究または調査の事業」(12号)、「病者又は虚弱者の治療及び看護その他保健衛生の事業」(13号)、「焼却、清掃又は屠殺の事業」(15号)、「前各号に該当しない官公署」(16号)が並んでいた。ちなみに、労働基準法制定時の国会答弁資料では「官吏関係は、労働関係と全面的に異なった身分関係であるとする意見もあるが、この法律の如く働く者としての基本的権利は、官吏たると非官吏たるとに関係なく適用せらるべきものであつて、官吏関係に特有な権力服従関係は、この法律で与へられた基本的権利に付加さるべきものと考へる。」と述べている*4

要するに、終戦直後にできた労働分野の基本立法は、公法私法峻別論などという変な考え方には全然立っていなくて、まことに素直に公務員関係はみんな労働契約だと考えていたのです。

法政策としては、職務の特殊性から労働法の中のある部分を適用除外するというのは、まったく当然なことです。例えば本来の官公署にスト権を与えるべきではないでしょう。そのことと、その法律関係が労働契約であるかどうかというのはまったく別次元のことです。

日本国の立法府は公務員は労働契約だという法律を作って以来、一度たりともそれを否定するような法改正をしていないにもかかわらず、行政法学説やら裁判所やらが勝手に法律をねじ曲げて、本来日本の法体系が立脚していない公法私法二元論で説明してきてしまい、それを真に受けた労働行政当局も、もともと大先輩が作った法律は全然そんなことはいっていないのに、新しい法律を作る際には勝手に公務員は適用除外にしてしまってきたというだけなのですね。

こういうことを言うとびっくりされてしまうのですが、びっくりする方がおかしいのです。素直に労働基準法を読めば。

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ややこのブログの本題からはズレますが、裁判を始めてからずっとモヤモヤしていたことがあります。私は市役所で働く義務を負い、同時に給料をもらう権利を得ていて、使用者である市長からすると私を働かせる権利があり、同時に給料を払う義務がある、つまり労働者である私と使用者である市長とは一種の労働契約(労働基準法の概念)又は雇用契約(民法の概念)を締結したと考えています。以前、地裁の書記官から労働審判の …... [続きを読む]

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