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2011年1月25日 (火)

日本版NVQの可能性

『労基旬報』連載の「人事考現学」、1月25日号は「日本版NVQの可能性」です。

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo110125.html

>現実の日本社会では、職業教育訓練システムは依然として質的にも量的にも、圧倒的に企業内教育訓練に依存している。そしてそのため、企業内教育訓練機会から排除された多くの若年非正規労働者が、技能を身につけられないまま次第に中高年化していくという事態をもたらしている。今現在の低賃金や不安定雇用といった問題も重要であるが、中長期的に深刻なのはこちらの問題であろう。
 これに対して政府はここ数年来、日本版デュアルシステムやジョブカードといった政策をとってきた。前者は教育訓練機関における座学と企業における実習及びOJTを組み合わせた新たな人材養成システムで、修了後その企業に雇用されることを目指すものである。また後者は、企業現場や教育機関で実践的職業訓練を受け、その修了証など(ジョブカード)を就職活動に活用しようとするものである。これらは、現代日本の労働社会において有効な教育訓練機能が企業に集中しているという事実を前提に、それを若年非正規労働者たちの技能向上にいかに活用するかという問題意識から生み出されたものである。その意味では現実に即した政策といえる。
 2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」においては、その「雇用・人材戦略」の一環として、「非正規労働者を含めた、社会全体に通ずる職業能力開発・評価制度を構築するため、現在の「ジョブ・カード制度」を「日本版NVQ(National Vocational Qualification)」へと発展させていく」ことを提起し、後段でそれを「キャリア段位」と呼んでいる。これを受けて官邸の緊急雇用対策本部に実践キャリア・アップ戦略推進チーム専門タスクフォースが設けられ、「職業能力評価と教育・能力開発を結び付け一層の体系化を図った上で、一企業内にとどまらず社会全体で実践的なキャリア・アップを図る」ことが目指されている。今後は、日本の労働市場のあり方自体をどうしていくのか、という本質的な問いを避けて通ることはできないであろう。
 NVQとは、企業の枠を超えて日本の労働社会を通じた共通の職業資格を設定していくという政策意思を表す言葉である。従って企業内教育訓練システムに大幅に依存した現在の日本型雇用システムを抜本的に見直すという意図の表明でもある。新成長戦略が真にそのようなラディカルな認識に立脚したものであるか否かは、慎重に見極められる必要があろう。
 残念ながら、民主党政権の中核部分はそのような認識を全く有していないということが、2010年10月に行われたいわゆる「事業仕分け」によって見事に露呈された。そこでは、余剰労働力の企業内保蔵を援助する雇用調整助成金だけは無傷で残しつつ、若年者や就職困難者のための雇用助成金は軒並み廃止とされ、とりわけ日本型雇用システム転換のための第一歩として位置づけられるべきジョブ・カード制度はその存在意義を全面否定され、廃止と判定されたのである。日本の人材養成政策の再転換は、再び混迷のただ中にある。

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