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2011年1月 6日 (木)

みしっくさんの拙著書評

昨年12月19日付で、「みしっく今日のひとこと」というダイアリーに拙著への書評が載っていました。ブログではないので検索が遅れました。

http://www.misick.org/diary/201012.html#19

>濱口桂一郎『新しい労働社会―雇用システムの再構築へ』(岩波新書,2009年)を読んだ.

>この国に住んでいる人の大半は自営業や会社役員ではなく労働の対価で生活をしているのだから,労働社会のきしみは国民全体の課題.著者はEUの労働法を日本と比較することを主な研究課題としている模様.米国は年次有給休暇が法律で義務づけられていないなどあらゆる面で先進国の中では特異な国なので,米国と日本の比較にはあまり意味がなく,EUと日本を比較するというのは妥当.・・・

>また,日本では整理解雇に比べて普通解雇の方がずっと規制が緩やかだとして疑問を呈している(EUでは労使間の話し合いにより整理解雇が認められるのに対し,使用者による恣意的な普通解雇が規制されているという)のも,本当にそうなのかどうかはさておき面白いと思った.

>その他の現在の日本型雇用システムの抱える課題についてもなかなか興味深い指摘がなされているが,本稿では省略することとし,関心のある方は実際にこの本を読んでいただければと思う.

と述べられた後、第4章の議論について疑問を呈されます。ここは、本ブログでもご紹介してきたように、玄人筋的に一番コントロバーシャルなところですので、このようなご意見が寄せられるのは大歓迎です。

>著者は諸課題に対する処方箋として,企業別組合(現状ではその大部分は非正社員を排除している)をベースに,(当該企業で働く)すべての労働者が加入する代表組織を構築することが唯一の可能性であると述べる.・・・

>日本の労働者の大半(常用労働者については約3分の2)は中小企業で働いているところ,たとえば従業員規模50人なり100人といった企業では組合が結成されていないところがほとんどであり,企業内に組合を作って安定的に運営していくのは規模的に困難が大きいほか,こうした中小企業では雇用の流動性・不安定性も高いので,企業内での合意形成力は大企業に比べて限定的であると考える.そこで,少なくとも中小企業においては,著者の提案のような方策ではなく,企業の枠を超えて,地域別・産業別の労働者代表組織を作っていくことが不可欠ではないかと思う.

この組織はいまのコミュニティユニオンのような個別労使紛争の駆け込み寺ではなくて,当該地域・産業において過半数の組織率を目指す必要がある.そして,その組織力をベースとした合意形成が,労使双方に納得のいく労働条件の設定,労働環境の改善をもたらし,不況・業績悪化時の対処(賃金引下げや一時帰休などの痛みを伴う対処が不可避となることもあるはず)も労使間でぎりぎりの協議を尽くして行うことによって,不本意さを少しでも低減することになるのではないか,ひいては経営の安定や当該地域・産業の活性化にもつながるのではないかと思う.

その「駆け込み寺ではなく」「過半数の組織率を目指す」労働者代表組織を、いかにして構築できるか?というのが課題であるわけです。

連合総研の「労働者参加の新地平」という報告書の中でわたくしが提起してみたのは、

http://rengo-soken.or.jp/report_db/file/1221643644_a.pdf

まさにこの難問に対する一つの回答でした。企業外の労働組合(産別またはナショナルセンター)による援助連携を組み込んだ労働者代表委員会の設置強制という、山のように批判の余地のある、しかしいかなる代替案があり得るのか?答えづらい回答です。

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