OECD『日本の労働市場改革』
本日、わたくしが翻訳したOECDの『日本の労働市場改革』(明石書店)が届きました。
日本の労働市場改革について論じようという人ならば、せめてこのOECDの本くらい熟読してから論じていただかなければ困りますね。
来週には、書店に並ぶと思います。心ある皆様に読まれることを、心から期待いたします。
なお、本書の訳者あとがきから、最後の部分を引用しておきます。
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最後に、若干個人的な感想を述べておきたい。訳者は1995年から1998年まで欧州連合日本政府代表部一等書記官としてブリュッセルに在勤し、EUの新たな雇用戦略が進められていく様子を目の当たりにしていた。当時は「アクティベーション」という用語はなかったが、失業者や福祉受給者を労働市場に復帰させることを最大目標とする政策はまさにアクティベーション政策であり、その背後には、「生産要素としての社会保障」という発想があった。訳者は帰国後さまざまな機会にEUの雇用戦略を紹介し*2、その背後にある社会政策思想の転換を論じてきた*3。
最近になってようやくこの考え方が日本にも浸透してきた。とりわけ、2010年6月に策定された新成長戦略には、就業率の向上が初めて国家レベルの目標として位置づけられるなど、世界標準の雇用戦略にふさわしい内実が伴ってきつつある。日本版NVQなど透明な労働市場を成り立たせるインフラ整備も打ち出されている。一方で、「事業仕分け」に見られるような、雇用労働政策に対する旧弊な無理解も政界やマスコミ界には牢固として存在している。
ちょうど2年前に著者たちが日本を訪問したときに、訳者は日本ではヨーロッパにおけるアクティベーション政策とは文脈が全く異なると述べた*4。しかし、この2年の間に日本の制度政策は大きく転換を遂げつつある。いまや、まさにアクティベーション政策という明確な政策戦略の下で、雇用社会政策総体を操縦していかなければならない時期である。このような時期に、本訳書が日本の政労使の労働関係者や労働研究者のみならず、政治家や経済学者、マスコミ関係者などにも読まれることはまことに時宜に適していると思われる。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/oecd-dd50.html(OECDアクティベーション政策レビュー)
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