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2010年12月10日 (金)

前田信彦『仕事と生活』ミネルヴァ書房

81788_2 立命館大学の前田信彦さんから、近著『仕事と生活 労働社会の変容』(ミネルヴァ書房)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.minervashobo.co.jp/book/b81788.html

>労働者をとりまく「関係性の貧困」とは

企業・組織・コミュニティが直面する問題に「ワーク・ライフ・スキル」という諸方策を提示。

いま、日本社会の労働をめぐる状況はいかなる課題に直面しているか。本書は、個人化する労働社会の中で、失われつつあるコミュニケーションや労働者どうしの関係性といった問題をめぐって、従来の研究史をたどるとともに、処方策として「ワーク・ライフ・スキル」概念を提示しつつ、実証的に論じる

上の太字は帯の文句ですが、まさに「関係性の貧困」と「ワーク・ライフ・スキル」が本書のキーワードになっています。

はじめに

 第Ⅰ部 仕事と生活の研究史

第1章 「仕事と生活」研究史
    ――経済的貧困から中流階層の時代
 1)「仕事と生活」研究の捉え方
 2)研究史的アプローチ
 3)第Ⅰ期:伝統的貧困論の展開
 4)第Ⅱ期:高度経済成長と社会階層の平準化
 5)第Ⅲ期:労働と生活の再編
 6)第Ⅳ期:多様化と格差
 コラム 貧困とボーダーライン層

第2章 労働社会の個人化と「関係性の貧困」の時代
    ――1990年代後半~2000年代の仕事と生活の諸相
 1)1990年代「労働世界」の変容
 2)1990年代「職業生活・意識」の変容
 3)個人化する職業生活と「関係性の貧困」
 コラム 弱い紐帯と転職

 第Ⅱ部 職業生活とワーク・ライフ・スキル

第3章 習慣的能力としてのワーク・ライフ・スキル
 1)ワーク・ライフ・スキルの重要性
 2)ワーク・ライフ・スキルとは何か

第4章 ワーク・ライフ・スキルの効用と階層性
 1)新たな仮説
 2)ワーク・ライフ・スキルの質問項目
 3)ワーク・ライフ・スキルの効用
 4)ワーク・ライフ・スキルの職業的階層性
 5)ワーク・ライフ・スキルの醸成
 6)ワーク・ライフ・スキルの可能性
 コラム オランダモデルから考える男女の働き方

第5章 ワーク・ライフ・スキルと過重労働
 1)ワーク・ライフ・スキルと労働負荷
 2)労働者タイプと労働時間・健康状態
 3)ワーク・ライフ・バランスと過重労働
 コラム ワーク・ライフ・バランスの多様性

第6章 定年後の社会参加とワーク・ライフ・スキル
 1)定年後にも生きる職業能力
 2)ワーク・ライフ・スキルの分布と要因分析
 3)ワーク・ライフ・スキルと定年後の社会参加
 4)ワーク・ライフ・スキルと高齢期の生活の質
 5)ワーク・ライフ・スキルと定年後の生活
 コラム オランダにおけるアクティブ・エイジング政策

第7章 学校から職業生活への移行とワーク・ライフ・スキル
 1)「学卒無業」問題
 2)分析の視点
 3)データと基本変数
 4)潜在的無業層の要因分析
 5)潜在的無業層への相対的効果
 6)若者とワーク・ライフ・スキル

第8章 個人化する労働社会と関係性の構築
 1)個人化する労働社会
 2)豊かな労働社会への道筋
 3)習慣的能力の機会と平等
 4)労働社会の個人化と「対話」の可能性
 5)関係性の構築へ
 6)社会的貧困への処方箋
 7)「場」を超えたネットワークの構築へ

おわりに

ただ、この「ワーク・ライフ・スキル」という概念が正直いってなかなかうまく認識できないところがあります。

この概念が提示される第3章では、「ワーク・ライフ・スキルとは何か」という節で、小池和男氏のいう「知的熟練」としての能力、佐藤厚氏のいう大卒ホワイトカラーの「はばひろい専門性」、熊沢誠氏のいう「生活態度としての職業能力」、本田由紀氏のいう「ハイパー・メリトクラシー」の能力、OECDのいう「キー・コンピテンシー」が並べられ、「ワーク・ライフ・スキル」とはこれらを包括したはばひろい専門性で、社会的ネットワークを構築できる能力で、職業生活の調整能力である、といわれるのですが、これらはお互いに必ずしも整合的ではない面もあり、やや曖昧な印象を受けてしまいます。これはまだきちんと読み込めていないためかも知れませんが。

私の関心事項からすると、やはり最後の章で、「垂直的ネットワーク」を提起しているところが興味深いものでした。

>労働者の代表として職場の問題を解決する労働組合は、代表者はともかく、構成員同士のコミュニケーションが水平的であり、組織や集団をまたぐような垂直的な社会観系資本を十分に発達させていない

という観点から、前田さんは、正社員、パート派遣労働者など、

>これらの異なる従業上の地位間の垂直的な社会観系資本を生み出すような媒介的な集団組織が、伝統的な労使関係との間に中間集団として置かれる必要がある

と主張しています。これは、新たな集団的労使関係の枠組みをどう構築するのか、という問題意識ともつながるものであり、さらに展開していって欲しいと思いました。

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