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2010年12月 3日 (金)

正規・非正規・どちらともいえない

日本労使関係研究協会のニュースレターの巻頭の随想で、会長の仁田道夫先生が、大変重要な問題提起をされています。

>いったい、この正規と非正規という二分法は、どこまで確かなものなのでしょうか。・・・

仁田先生自身がかつて担当された今は亡き東京都労働研究所の「中小事業所における非正規従業員の実態」という調査報告について、

>ここで指摘しておきたいことは、この調査で「正社員とそれ以外の社員(臨時、パート、アルバイト等)の区別」があるかどうかをまず問い、区別のある事業所についてのみ、非正規社員の実情について調べる構成をとっていることです。これは、当時、都立労働研究所の調査研究を指導しておられた故氏原正治郎先生の仮説によるものでした。小零細企業では、正規も非正規もなく、ごちゃ混ぜになっているのではないかとの考えによるものでした。

と述べ、その結果について、

>「区別なし」311(38.3%)、「区別あり・現在いる」341(42.0%)、「区別あり・現在いない」159(19.6%)でした。とくに規模の小さい事業所で「区別なし」の割合が高く、20人未満では40%を超えていました。氏原仮説は支持されたことになります。

と述べています。しかし、だとすると、そういう「区別なし」事業所の労働者が「お前は正規か非正規か?」と聞かれたら、どう答えているのでしょうか。

実は、これは、我々が行っている個別紛争の処理票でも同じことがあって、「どちらともいえない」という選択肢はないんですね。対象は小零細企業が大部分なので、まさに「どちらともいえない」ようなケースがいっぱいありますが、処理票上はどちらかに分類されてしまっています。正規がデフォルトで非正規がアノマリーだとする観念に従って分類すると、こういうのは「正規」になってしまい、しかしその内実はほとんど「非正規」と変わらない。

仁田先生曰く、

>重要な点は、正規・非正規の区分が決して鉄壁のようなものではなく、そのような選択肢が与えられれば「どちらとも言えない」という回答が相当数出てくる可能性があるということです。政策論や法律論を闘わせるときには、そのような実態を踏まえて議論することが必要で、そうしないと、法律や政策が「プロクルテスのベッド」となってしまうかも知れません。

まったくそのとおりです。

言い訳になりますが、拙著『新しい労働社会』の序章の最後のところで、次のように述べたのは、そこのところが頭に引っかかったいたからでもあるのですが、でもきちんと展開できていないのは認めざるを得ません。

>中小企業労働者
 以上述べてきたシステムは、大企業分野においてもっとも典型的に発達したモデルです。日本社会は、大企業と中小企業、とりわけ零細企業の間にさまざまな面で大きな格差のある社会ですが、雇用システムのあり方についても企業規模に対応して連続的な違いが存在します。それをよく示すのは、企業規模別の勤続年数と年齢による賃金カーブ、そして労働組合組織率です。企業規模が小さくなればなるほど、勤続年数は短くなり、賃金カーブは平べったくなり、労働組合は存在しなくなります。つまり、長期雇用制度、年功賃金制度、企業別組合という三種の神器の影が薄くなるのです。
 企業規模が小さければ小さいほど、企業の中に用意される職務の数は少なくなりますし、職場も一カ所だけということが普通になります。そうすると、いかにメンバーシップ契約だといっても、実際には企業規模によって職務や場所は限定されることになり、事実上限定された雇用契約に近くなります。つまり、企業規模が小さいほど事実上ジョブ型に近づくわけです。
 中小企業ほど景気変動による影響を強く受けやすいですし、その場合雇用を維持する能力も弱いですから、失業することもそれほど例外的な現象ではなく、そのため地域的な外部労働市場がそれなりに存在感を持っている分野でもあります。その意味では、企業規模が小さくなればなるほど正社員といっても非正規労働者とあまり変わらないという面もあります。近年「名ばかり正社員」という言葉がはやりつつありますが、もともと零細企業の正社員は大企業の正社員と比べれば「名ばかり」であったのです。
 ただ、企業規模は連続的な指標であり、それにともなう雇用システムのあり方も連続的に変化していくものですから、大企業はこれこれだが中小企業がこうだといった風に、定性的な議論をするのは難しいところがあります。本書では構造的な議論を主に展開しますので、どうしても企業規模による細かい議論が抜け落ちる傾向があることは否定できません。この点を念頭に置きつつ、以下の本論を読み進んでください

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