明治大学労働講座
本日、明治大学の労働講座でお話ししてきました。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-9af0.html(明治大学労働講座企画委員会寄附講座)
>12月7日 どのような社会をめざすのか(1)〜ヨーロッパと日本 独立行政法人労働政策・研修機構 労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員 濱口 桂一郎
お話しした内容は、だいたい次のようなものです。
1 ヨーロッパの労働社会と日本の労働社会
・雇用契約は「ジョブ」か「メンバーシップ」か
・労働時間規制は「物理的時間」か「残業代支払いの基準」か
・配転命令は「原則なし」か「原則服従」か
・解雇規制は「発言担保」か「メンバーシップ維持」か
・賃金制度は「職務基準」か「(人格)能力基準」か
・労働組合は「産業別」か「企業別」か
・教育訓練は「企業外」か「企業内」か
・生活保障責任は「国」か「企業」か
2 日本的フレクシキュリティとその動揺
・家計維持的成人男子とその扶養家族への雇用形態の割り当て
・家計補助的ゆえの差別・不安定雇用の容認
・家計維持的非正規労働者の大量出現
・セーフティネット不全の露呈
・メンバーシップ型正社員の「収縮」と「濃縮」
・白地の学生に「即戦力」を要求する矛盾
・「ブラック企業」現象の雇用システム的要因
3 ヨーロッパ型労働社会を参照すべき点
・物理的労働時間規制の再確立(残業時間規制、休息時間規制)
・整理解雇4要件の見直しと不公正解雇規制の強化(解雇事由の明確化)
・正規・非正規の均等待遇原則(当面は期間比例原則)
・情報提供・労使協議の義務化(労働組合と労働者代表制のあり方要検討)
・企業外教育訓練システムの抜本的強化(訓練施設の拡充+学校自体の訓練校化)
・現役世代への非会社型社会保障(養育費、教育費、住宅費等)の確立
・「ジョブ型正社員」の構築へ
最後にお二人の学生の方からいい質問をいただきました。お一人は卒業後労働基準監督官になる予定だそうです。
また、講義終了後、関係者の皆様と珈琲を飲みながら歓談させていただきました。リバティタワーのてっぺんからの眺望は絶品ですね。
いろいろとありがとうございました。
(追記)
http://twitter.com/hash_noir/status/12098764986646528
>今日の講義で濱口桂一郎って人が来た。結構おもしろかった疑惑。ひさしぶりにレジュメ埋まるほどメモを取った。
「って人」としては、「結構おもしろ」く聞いてくれて嬉しいです。
(再追記)
http://twitter.com/hash_noir/status/31607656355463168
>いまさらながら・・・あんなちいさなつぶやきでも本人にとどいちゃうんですね。
ええ、届くんです。それがいいところ。
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傍聴にうかがおうと思っていたのですが、行けずに残念です。
投稿: きょうも歩く | 2010年12月 7日 (火) 20時17分
どうもお疲れ様です。
それにしてもすごい面子のそろった労働講座ですな。これがわが一橋大の連合寄附講座となると…。
連合の大幹部様がぞろぞろやってきて、わが組合はいかに素晴らしいか、という自慢話のようなものを聞かされるだけですからたまったものではありません。
まあ連合がいかにダメなのか、という点を理解するにはよいかもしれませんが。
投稿: 希流 | 2010年12月 8日 (水) 18時04分
12月7日の朝日新聞の、これは、毎週火曜の「働く」の、つまり労働問題の記事で、「若者は今」シリーズの7回目が、「正社員も使い捨て」というタイトルで、以下の状況が紹介されていました。
・若者の労働問題に取り組むNPO「POSSE」が、18-34歳の労働者500人に行った聞き取り調査で、正社員と答えた270人のうち、45%の人は、定期昇給がないか、ボーナスが支給されていなかった。このうち(おそらく、正社員と答えた270人のうちでしょう)、38%は労働時間が週60時間以上、53%は月収20万円以下で、長時間労働でも賃金が安い「名ばかり正社員」が増加しつつあると思われる。
・NPO「労働相談センター」で受ける労働相談は、毎月約500件。以前は賃金か解雇についての相談が最も多かった。特にリーマンショック意向は解雇が急増したが、今春からは職場のいじめの相談が増え続け、10月には全体の3割を超えて最多に。20代、30台の正社員からの訴えが多い。
「名ばかり管理職」「名ばかり店長」が問題だったのはつい最近のような気がしますが、今や、「名ばかり正社員」ということだとすると、若年層では、均等待遇への道が、全員非正規化ということで開けつつあるわけですね。
「いじめ」というのは、昔から言われる「村八分」で、メンバーシップから締め出し、自分でやめてゆく方向に圧力をかけてゆく、実質的な「有期雇用化」でしょうからね。
若い人たちは、面白いだけでなく、かなりの危機感を持たないとならない状態ですよね。
投稿: 哲学の味方 | 2010年12月12日 (日) 06時17分