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2010年12月 1日 (水)

迷走する運命にあるワーク・ライフ・バランス政策 by 筒井淳也

拙著へのコメントも含む筒井さんのエッセイです。「シノドス・ジャーナル」から。

http://synodos.livedoor.biz/archives/1594606.html

>もともとワーク・ライフ・バランス推進の理念のひとつとしてあるべきなのは、「男女均等待遇」である。濱口桂一郎の『新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)』が指摘しているように、北欧諸国のみならずEU諸国では、より包括的な、つまり時間(フルタイム・パートタイム)・雇用契約(無期・有期)を含めた「均等待遇」の規制の一面として男女均等待遇が位置づけられている。むしろ各種の休業制度はこれを補完するものである。このような労働市場では当然男女の賃金格差も小さくなるし、子育て後の仕事復帰も容易になる。

これに対して日本の政策立案者のあいだでは、ワーク・ライフ・バランスに「少子化対策」という意味づけを与えることが多い。そのため両立支援政策がどうしても「出産・育児」促進にひっぱられ、したがって「出産・育児休業を充実すればよいのだろう」という方針に帰着してしまう。

むろん少子化対策を講じること自体は非難されるべきことではないのかもしれないが、問題は、この戦略が現在の社会経済的環境では失敗を宿命付けられているということだ。

理由は簡単である。出産・育児休暇のみを充実させても、その他の仕事のやり方は依然としていわゆる「男性的働き方」のままである。改めて強調しなくてはならないのは、出産・育児休暇だけを充実させても、女性は男性のように働くことができるようになるわけではない、ということだ。

荻原が描いたのはまさにこの問題である。長時間労働や転勤を伴なう日本的な「男性的働き方」は、専業主婦あるいはパートの妻がいてはじめて可能になるものなのだから、フルタイムの仕事を持つ夫の妻がフルタイムで働くことには最初から無理があるのだ。

ここで筒井さんが述べていることは、わたくしが「イベント主義」というような言い方で批判してきたものにつながります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-b628.html(ジョブ型正社員に関するメモ)

>ワーク・ライフ・バランスの掛け声を単に育児休業などのイベント豪華主義にとどめることなく、日常の職業生活と家庭生活がバランスした生き方を可能にしていくためには、雇用保障の一定の縮小と引き替えに職務限定、時間限定、場所限定の「ワーク・ライフ・バランス型正社員」を権利として確立していくことが考えられていい。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-7aa0.html(“残業ありき”の働き方を見直す!)

>ここが、たとえばヨーロッパ諸国のワーク・ライフ・バランスの議論をそのまま日本にもってきても話がずれまくる大きな理由です。あちらのワーク・ライフ・バランスというのは、フルタイムといえども法律上の時間制約があることを前提にして、それ以上に所定時間を短くする短時間勤務とか一定期間の休業とかというイベント主義でいいわけです。しかし、日本では法律上のデフォルトルールに戻って時間制約をかける(残業制限)ことがなによりワーク・ライフ・バランスになるわけです。

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コメント

このテーマについて、あまり知られていない、EUの面白い資料をご紹介します。なんと、EUの政策やニュースが、「EUによる日本語」で読めるというものです。これです。

http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/magazine/2010/

「『ヨーロッパ』誌は、駐日欧州連合代表部広報部が発行する、EUに関する日本語の広報誌です。その主要な目的は、欧州連合(EU)の政治・経済・社会を中心としたあらゆる側面についての情報を、日本の政界、学界、産業界、および報道機関、行政機関の指導的立場にある方々をはじめ、EUに興味をお持ちの方々に、広く日本語で伝えることです。『ヨーロッパ』誌の内容は、特集、インタビュー、環境、イノベーション、グローバルパートナーといったEUの政策や動きを紹介するセクションおよび、欧州の生活と文化、日本で活躍するヨーロッパ人、欧州在住記者からのレポートおよび新刊紹介などの一般的な記事で構成されています。また、日・EU関係についても逐次、紙面を割いています。」

で、EUで言われている「ワーク・ライフ・バランス」とは何か、ということは、この2007年夏号を見てください。

http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/magazine/2007/07summer.html

日本でのいろいろな議論に使われている「ワーク・ライフ・バランス」、こういう正式なEUの紹介まであるのに、みなさん、自分で勝手に自分なりのイメージを作って使っておられるだけのように思います。勝手に、企業内の両立支援制度、に矮小化したり、それから、学者の方たちにあるのですけれど、小難しくし過ぎたり・・・。
EUは、EU市民に定期的に世論調査を行ったり(日本の内閣府の世論調査よりも、もっと簡単なものです。EUROBAROMETERと言いますが)、わかりやすい説明で、EU市民に訴える努力をしています。

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