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鈴木優美『デンマークの光と影 福祉社会とネオリベラリズム』

645 リベルタ出版から刊行された鈴木優美さんの『デンマークの光と影 福祉社会とネオリベラリズム』をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.liberta-s.com/645.html

一知半解でフレクシキュリティを振り回したがる人も含めて、最近の労働社会政策ワールドはときならぬデンマークブームですが、そのデンマークに在住してさまざまな側面を目の当たりに見てきた著者の言葉には重みがあります。

>鈴木 優美 (すずき ゆうみ)

1977年生。
2000年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。
2002年東京大学教育学研究科生涯教育研究コース修士課程修了。
2002年よりデンマーク在住。ロスキレ大学心理学・教育学研究科博士課程在籍。教育と福祉の領域で実践の場に関わり働く傍ら、デンマークでの民主主義意識と市民形成の過程について研究を続けている。

この本については、

>小さな国だが、きらりと光る存在感で世界に知られるデンマーク。年間6週間の有給休暇、失業時の手厚い保障、無償の医療費・教育費といった福祉社会に、新たな波が押し寄せている。市場原理の席巻は世界的な傾向であり驚きに値することではないが、福祉社会に見られる新自由主義の台頭は、「世界一幸福な国」を格差と競争原理の国に変えつつある

という説明がされ、

次のような内容からなっていますが、

序 章 福祉国家から福祉社会へ
第1章 無料の代償
・「高福祉」を支える税制度
・教育制度の変容─「国際競争力」の名のもとに
・揺れる医療制度
第2章 個人の意思尊重の代償
・肥満との闘い
・アルコール・薬物濫用と精神疾患
・ドロップアウトする若者たち
第3章 寛大な福祉給付の条件
・失業対策
・年金制度
第4章 選別される外国人
・移民政策と国内の反発
・「テロとの闘い」と「自由」のはざまで
第5章 フレキシキュリティの陰
・社会民主主義の変容
・労働組合とストライキ
・金融恐慌の後で

どの項目も大変興味深い話がいっぱい詰まっていて、どれを紹介していいのか迷いますが、本ブログでかつて取り上げた話題ということで言えば、やはり移民問題でしょうか。寛大な福祉国家であるからこそ、とりわけイスラム系の移民に対して厳しく、EUとの間でトラブルになったりするあたりの事情が詳しく書かれています。

あとがきの最後に、

>本書のきっかけになったのは「デンマークのうちがわ」という個人の勉強ノートがちょっと発展したようなブログである。知らなかったこと、思いがけなかったことがメディアの情報にたくさんあり、それをどんどん忘れていくのが惜しくて、書き始めたものだった。・・・思いがけず、本にしてみませんかと連絡を頂き、時間をかけて記事をアップしていた労力が認められた気がした。

とありますが、そのブログはこれです。

http://denjapaner.seesaa.net/

最近も11月17日付で「福祉ただ乗り撲滅のための29手」というエントリをアップされています。

>(「福祉 フリーライダー」のキーワードで、こんなでたらめな記事が上位に上がってくる実態に愕然とするが。)

という感想にも同感です。

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