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2010年11月29日 (月)

石水喜夫さんの「賃金と所得分配」

電機連合から毎月送られてくる『電機連合NAVI』の11/12月号は「労働者への企業利益の配分について考える」が特集です。笹島芳雄さんのアメリカのボーナスの話の次に載っているのが、大東文化大学講師という肩書きの石水喜夫さんの「賃金と所得分配」という文章です。

石水さんはあえて労働経済調査官ではなく、大東文化大学講師という肩書きでこのポレミックな文章を書いたのでしょう。その内容は、主流派経済学に対する手厳しい批判に満ちています。

ケインズ理論を駆使した本論の部分は、私が要約するべきものではないので、ぜひ現物を読んでいただきたいと思います。ここでは「はじめに」の、はじめから相当にポレミックな調子のイントロを。

>・・・こうした厳しい環境の下で、雇用を守るために賃金を我慢するという誤った構図が固定化し、デフレ経済からの脱却がますます遠のいている。

>産業社会の構成員は、雇用と賃金が代替的なものだと思っている。自らの勤める会社の経営状況を、つぶさに知らされている従業員は、賃金を抑制し、利益回復的な動きに貢献することが自らの雇用を守ることだと理解している。・・・

>ところが、このような対応は社会全体から見れば、明らかな悪循環だ。所得が減ることで国内マーケットは縮小する。消費の減少によって総需要は減少し、継続的な物価下落の状態はさらに厳しさを増す。・・・

>物価が継続的に低下する社会は、企業の投資環境としてもふさわしくない。将来の収益が縮小する社会に投資する企業はない。投資の縮小はさらに有効需要を減少させることになる。しかも、物価の低下によって個人も企業も貨幣の保有動機がますます高まる。・・・

>デフレ社会は、総需要が不足する社会であり、賃金と物価が相互連関的に低下する社会なのである。このような社会を終わらせるには、賃金は物価の構成要素であり、賃金の低下が物価の低下の要因になっていることを理解し、賃金の低下を食い止めなければならない。・・・

>現代日本の賃金問題は、いわゆる「合成の誤謬」の最たるものだ。個別企業のミクロの合理性と経済社会のマクロの合理性が、まったく相反しているのである。・・・

と、ここまでは政策論ですが、ここから経済学批判に移っていきます。この語り方は、私のように経済学の外側から見ているだけの人間にはわからない激しさが込められているように思えます。

>しかも、ここに労働経済学という存在がある。本来、社会の総合的な分析に貢献すべき経済学なのであるが、今日、労使関係者が経済学として真っ先に思い浮かべる「労働経済学」という分野は、価格調整メカニズムを重視する「労働市場論」なのである。

>かつての労働問題研究は、社会政策論であった。それは、労働者が企業で雇われるという社会関係を分析対象とする政治経済学であった。ところが、今日の労働問題研究は、いつの間にか、すっかり労働経済学へとシフトした。労働経済学は「労働力」という商品が「労働市場」で売買されるという観察方法によって、労働問題を抽象化し、普遍的に分析処理する市場経済学である。労使関係者は、この純粋科学をありがたがっているが、それは社会超越的、文化超越的な存在であり、その生み出す痛みは確実に労使関係者を襲っていく。ところが、「科学」という存在は、人間社会を超越して神々しい権威と名声を備え、世俗の人々は苦しみながら、その権威をありがたがるのである。

いやあ、激越です。ここから、

>労働市場論が振るう恐るべき猛威は、J.M.ケインズの『雇用・利子及び貨幣の一般理論』によって詳細に分析されている。ところが残念なことに、その英知はいま、忘れ去られようとしている。・・・

として、石水流ケインズ理論解説が始まるのですが、それはもう私の手に負えないので是非現物をお読み下さい。

結論的に書かれた最後のセンテンスだけ、ここに引用しておきます。

>労使の話し合いにより、所得分配を決めると言うことは、より良い経済循環を生み出すことであると同時に、社会の将来像を描き出す創造的な営みでもある。

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