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2010年11月 9日 (火)

顧客が第2のボスになる

47_3_cover 『季刊経済理論』の最新号は、「労働論の現代的位相」という特集を組んでいたので買ってみたのですが、なんだかよく分からない論文ばかりで、正直感心しなかったのですが、鈴木和雄氏の「接客労働の3極関係」はなかなか興味深いところを追求しているなと思いました。

http://www.sakurai-shoten.com/content/books/jspe/47_3.shtml

[特集◎労働論の現代的位相]

特集にあたって 清水真志
労働概念の拡張とその現代的帰結:フェミニスト経済学の成立をめぐって 足立眞理子
自己の喪失としての労働:剰余労働=搾取論を超えて 小倉利丸
接客労働の3極関係 鈴木和雄

この鈴木論文ですが、

>接客労働過程には、製造業におけるような管理者-労働者の2極関係ではなく、管理者-労働者-顧客からなる3極関係が据えられる。

という観点からいろいろ分析しているのですが、とりわけ興味深いと思ったのは、顧客が労働者の統制主体となるという点です。

>顧客は自分の要求を明示することで労働者に労働を命ずる。またサービス提供に労働者の特殊な熟練や知識を必要とせず、顧客が労働過程を観察し理解できる場合、顧客は労働者の仕事ぶりを評価できる。賞罰は、顧客が労働者に感謝したり侮辱すること、サービス提供への顧客の強力または非協力、労働者にチップを与えたり、逆に上司に労働者の不品行を訴える、などの形をとる。・・・

>顧客は(情報や商品の授受に伴うものも含む)良質のサービスの迅速な提供を望む。そこで労働者が良質のサービスを迅速に提供するように絶えず労働過程を監視して、労働者の行動を統制する。さぼりや不注意によるサービスの質の低下や提供の遅れは顧客の不満や怒りを真っ先に引き起こすので、労働者は、管理者だけでなく顧客からも行動を統制される。顧客は労働者にとって「2人目のボス」となる。あるいは労働者は「2人のボス」、「2人の異なるボス」をもつ。顧客による統制は、先に見たように管理者(特に中間管理者)に及ぶこともある

これは、サービス業や飲食店といった業種で労働者の権利が損なわれがちなことの原因を説明してくれるように思います。

ここでの記述はあくまでも「サービス提供に労働者の特殊な熟練や知識を必要とせず、顧客が労働過程を観察し理解できる場合」に限られていますが、考えてみると病院や学校といった「サービス提供に労働者の特殊な熟練や知識が必要で、顧客が労働過程を観察し理解できない場合」であっても、近ごろのモンスターペイシャントやモンスターペアレントは、同じように命令し、評価し、賞罰を与えようとしているのかも知れませんね。

何にせよ、「お客様は神様でございます」の世界で、「お客様が第2のボスにな」ってしまったら、ボスが神様というこの世で最も恐ろしい事態が現出してしまうわけですから、日本のサービス業がブラック企業だらけになるのもむべなるかな、でしょうか。

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コメント

これはEU圏と比べると、とても日本的な労働問題だと思いますね。

ヨーロッパでは、サービス業であっても、「お客様は神様」という観念はないと思います。神様、ではなくて、サービス対象、ですね。ヨーロッパ旅行の経験があればわかると思いますが、サービスする側とされる側が上下関係ではなくて、けっこう対等ですし、「する側」に「する内容」の決定権がある分、けっこう働く側がえらそうだったり、働く側の都合にあわせて延々と待たされたりします。

サービス産業化が進む現在、日欧のこの相違はけっこう大きいですね。

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