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2010年11月19日 (金)

欧米における非正規雇用の現状と課題―独仏英米をとりあげて―

JILPTの資料シリーズとして、『欧米における非正規雇用の現状と課題―独仏英米をとりあげて―』が刊行されました。

http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2010/10-079.htm

>EUの均等待遇原則は、フルタイムであれパートタイムであれ、常用雇用であれ有期雇用であれ、派遣先企業の労働者であれ派遣労働者であれ、同一の職場で同一の仕事をする労働者は基本的労働条件について差別されてはならないというものである。日本にはまだこの「同一労働同一賃金原則」が確立されていないために、正規、非正規間における労働条件の格差が基本的問題としてしばしば議論される。その場合比較されるのが欧州の非正規雇用であるわけだが、前提となる欧州の均等待遇の実態を検証しておく必要がある。

そこで、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカの欧米主要4カ国を対象に、非正規雇用をめぐる全体的な状況と、これを背景として、企業がどのように非正規雇用を活用しているか、そこには処遇や雇用の安定などの側面でどのような問題が生じているか、といった状況を把握することを目的として実態調査を行った。調査は、各国の労働研究者に調査研究の実施と報告論文の執筆を依頼し、各国から提出された報告論文をとりまとめるという手法を用いた。

というわけで、日本の問題意識を踏まえた現地の研究者自身による各国の状況報告という点で、この問題に関心を持つ方々にとって役に立つ面が多いのではないかと思います。

>・非正規雇用増加の理由

非正規労働者の増加について、各国で共通する理由を拾ってみるといくつかの傾向が浮かび上がる。まず第一に、労働市場の変化。グローバリゼーションによる市場競争の激化が労働市場の構造変化を促したという理由である。厳しい解雇規制や規範の拘束力の回避、技術革新・市場競争の激化や価格競争、経済成長の不振などが主な原因として挙げられている。第二に、女性の就業参加。ほとんどの国で、女性の就業率の上昇は非正規雇用が拡大することを意味する。第三に、規制緩和の推進が挙げられる。柔軟化路線は1980年代末以降欧州の各国政府によって推進され、結果非正規雇用の拡大を生んだ。

四に、政府による最低生活保障的な色彩の強い雇用政策が非正規雇用を拡大させた。ドイツにおいてはハルツ改革によって導入された僅少雇用がこれに当たる。またフランスも、失業対策の一環として生み出された「支援付き雇用」(若年の労働市場参入を支援)が、助成を受けたい企業が多く利用し非正規雇用の増加につながったと指摘している。

第五が移民の増加。移民として受け入れられた労働者は非正規雇用に就く率が高いことは欧米諸国に共通して見られる現象である。アメリカは、非正規雇用者の多くが移民、マイノリティー、女性であり、その多くがコンティンジェント雇用の一形態である日雇い雇用もしくはインフォーマル雇用として働いていると報告している。

・均等処遇の実態

法律上の均等待遇原則にもかかわらず、ドイツ、イギリスは正規・非正規間の賃金や訓練機会における格差をデータ分析により確認している。ドイツでは、派遣労働者に関して法律上の均等待遇原則とは別に労働協約で規定された労働条件があり、これが企業を均等待遇原則の遵守義務から解放しているという。またフランスは、むしろ雇用形態による職務の差が賃金水準の格差に大きく影響していると指摘している。一方、アメリカはヒアリング調査の結果から、「同等の資格を持つ労働者であっても、派遣社員の場合、管理者がいうところの『家族』とはみなされない」ことを、処遇における格差を正当化する理由に挙げていたと報告している。

・雇用の安定、経済危機下の非正規雇用

各国とも、非正規労働者の不安定さを報告している。ドイツは、「景気の影響を受けやすい形態は派遣労働と有期雇用」で、「解雇コストが小さいため調整弁として使われやすいと考えられる」としている。フランスは、有期雇用に関する雇用保護の弱さを強調、今般の不況でも甚大な影響を受けたと述べた上で、さらに常用雇用にも雇用不安が拡がっているとしている。アメリカでも、ほとんどの業種が不況の影響に見舞われた結果、非正規雇用で人員の調整・削減が行われた。一方、イギリスでは、テンポラリー雇用者数は2007年半ばから2008年末まで減少したものの、2009年には絶対数、雇用全体に占める比率とも上昇に転じた。また自営業者は一貫して増加、パートタイム労働者も景気後退期に増加したという。

執筆者は以下の通りです。

天瀬光二
労働政策研究・研修機構 主任調査員
樋口英夫
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
浅尾裕
労働政策研究・研修機構 研究所長
ハルトムート・ザイフェルト
ハンスベックラー財団経済社会研究所顧問
フランソワ・ミション
国立科学研究センター上席研究員
ギャリー・スレイター
ブラッドフォード大学上級講師
クリス・フォード
リーズ大学上級講師
アーベル・ヴァレンズエラJr.
カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授
平田周一
労働政策研究・研修機構 主任研究員

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