『労働再審2 越境する労働と〈移民〉』が出ました
先日予告していた『労働再審2 越境する労働と〈移民〉』(大月書店)が出ました。
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b73914.html
編者五十嵐泰正さんの序章「「越境する労働」の見取り図」に続いて、
1 外国人「高度人材」の誘致をめぐる期待と現実(明石純一)
2 EPA看護師候補者に関する労働条件と二重労働市場形成(安里和晃)
【ノート】地方労働市場における日系人労働者の存在と役割(大久保武)
3 外国人単純労働者の受け入れ方法の検討(上林千恵子)
【ノート】日本人とブラジル人が共闘したはじめての単組の経験(平野雄吾)
4 フィリピン人エンターテイナーの就労はなぜ拡大したのか(津崎克彦)
5 オーストラリアのワーキングホリデー労働者(川嶋久美子)
6 日本の外国人労働者政策(濱口桂一郎)
といった論文が並んでいます。
わたくしの論文の細目次を示しますと、
第1節 外国人労働者政策の本質的困難性と日本的特殊性
(1) 外国人労働者問題の本質的困難性
(2) 日本の外国人労働者政策の特殊性
第2節 労働政策としての外国人労働者政策の提起とその全面否定
(1) 労働省の雇用許可制構想まで
(2) 雇用許可制構想の根拠と問題点
(3) 法務省入国管理局の反発
(4) 在日本大韓民国居留民団の批判と労働省の撤退
第3節 1989年改正入管法による「サイドドア」からの外国人労働者導入政策
(1) 1989年の入管法改正
(2) 日系南米人という「サイドドア」
(3) 研修生という「サイドドア」
第4節 研修・技能実習制度という特設入口
(1) 当初の問題意識
(2) 研修・技能実習制度の創設
(3) 研修・技能実習制度の法的帰結
(4) 研修・技能実習制度見直しへの動き
(5) 2009年入管法改正と残された課題
第5節 外国人労働者政策の方向性-「失われた20年」からの脱却
(1) 非研修・実習型外国人労働者導入論の提起
(2) 日系人という「サイドドア」の疑似玄関化
(3) 労働許可制の再検討とそれが要請する課題
書籍の一論文ですので、是非多くの読者の皆さまにお買い求め頂かねばなりませんので、ここに中身を具体的に引用するのは控えますが、わたくしの一番にいたいことを第1節の(2)にまとめていますので、そこだけここに引用しておきます。
>・・・日本の外国人労働者政策も基本的には上述の労使間の利害関係の枠組みの中にあり、それが政策展開の一つの原動力であったことに違いはない。しかしながら、1980年代末以来の日本の外国人労働者政策の大きな特徴は、そのような労使間の利害関係の中で政策を検討し、形成、実施していくという、どの社会でも当然行われてきたプロセスが事実上欠如してきたこと、より正確に言えば、初期にはそのような政策構想があったにもかかわらず、ある意図によって意識的にそのようなプロセスが排除され、労使の利害関係とは切り離された政策決定プロセスによってこの問題が独占され続けてきたことにある。
一言でいえば、労使の利害関係の中で政策方向を考える労働政策という観点が否定され、もっぱら出入国管理政策という観点からのみ外国人政策が扱われてきた。言い換えれば、「外国人労働者問題は労働問題に非ず」「外国人労働者政策は労働政策に非ず」という非現実的な政策思想によって、日本の外国人労働者問題が取り扱われてきた。そして今日、遂にその矛盾が露呈し、問題が噴出するに至ったのである。
どう露呈し、噴出していると主張しているのか、それは是非本書をお読み下さいませ。
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http://ameblo.jp/fuyugare/entry-10749013985.html
ごぞんじでしたらすみません
投稿: 匿名希望 | 2010年12月27日 (月) 23時10分