雇用政策の目玉も事業仕分け ジョブ・カード廃止判定の波紋
『週刊ダイヤモンド』11月27日号は、仕事と資格の大図鑑が特集ですが、ここではダイヤモンドオンラインに載っている「雇用政策の目玉も事業仕分け ジョブ・カード廃止判定の波紋」という編集部の浅島亮子さんの記事を紹介します。
http://diamond.jp/articles/-/10150
>2020年までにジョブ・カード取得者を300万人にする──。昨年12月に閣議決定された「新成長戦略」の重要政策として、ジョブ・カード制度の導入が明記された。だが一転、10月末に行われた事業仕分けによって、その関連事業に「廃止」判定が下された。政府の雇用政策にブレが生じている。
実際にジョブカード制度を活用している中小企業の実例が示された上で、
>古川管理部部長は、「中小企業にとって、有能な正社員獲得につながるジョブ・カード制度は本当にありがたい。政府は雇用創出が大事と明言しながらも、もともと厳しい財政事情を理由に事業を廃止するとは本末転倒だ」と憤る。
全国に散らばる商工会議所には、「職業訓練プログラムを策定していた企業、導入を検討していた企業から、ジョブ・カード制度が継続されるか否かについての問い合わせが殺到している」(菊地敏義・中央ジョブ・カードセンター担当部長)。企業はジョブ・カード制度廃止の可能性をうかがっており、現場は混乱している。
という当事者たちの声が提示されています。
>ジョブ・カード制度とは、昨年12月に政府が閣議決定した「新成長戦略」の重要政策として盛り込まれた。2020年までにジョブ・カード取得者を300万人とする定量目標まで設けられ、将来的には、職業能力評価制度(日本版NVQ。英国をモデルとした、訓練や職務を国全体で客観的に評価する制度)へと発展させるという壮大な構想までぶち上げた。
にもかかわらず、なぜ廃止判定が下されたのか。政府が掲げた新成長戦略と、仕分け人による判定結果に齟齬はないのか。
このあとに小林正夫厚生労働大臣政務官の苦渋に満ちた言葉が続きますが、肝心の仕分けた人々の声は全然出てきません。仕分けたご本人たちは、自分のしたことの影響には余り関心はないようです。
>今回の廃止決定に関して、民主党の支持団体である連合、雇用政策で徒党を組まねばならない公明党が猛反発している。彼らの同意なくして国会運営はできないのだから、制度廃止という抜本的な政策転換にも高い壁が待ち構える。
若年層の未就職問題の深刻さは増すばかりだ。11月16日に発表された来春卒業予定の大学生の就職内定率は57.6%と、調査を開始した1996年度以来、最悪となった。超氷河期が到来した今、ジョブ・カード制度をめぐる混乱はさらなる雇用情勢の悪化につながりかねない。
いうまでもなく、3年間新卒扱いといった対症療法にも意味はありますが、本質的な対策は仕事に基づく労働市場を少しずつでも構築していくことにしかあり得ません。
その労働市場を少しずつでも構築していくための第一歩があっさり仕分けされてしまえば、これからの労働市場は仕事に基づくものに近づくどころか、ますます数少ないメンバーシップをみんなが盲目的に奪い合うという状況が深化するだけでしょう。
まあ、それがこれからの日本の目指すべき方向性であるというのが国民の意思であれば、受け入れざるを得ないのでしょうが。
浅島さんGJでした。
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とても読みやすく、説得力のある記事でしたね。それにしても、仕分けの写真に長妻元厚生労働相が映っていましたね。この方が鳴り物入り風に登場し、厚労省のリーダーシップをとって以来、何か前進したことはあったのでしょうか。雇用対策は内閣府に行ってしまっていたようですし。
記事の中で指摘されていたいろいろな問題点、特に、省内の調整などは、それこそ、厚労相の仕事だったでしょうに。某新聞は「官僚と闘った」とかもちあげていましたが、闘って対立を深めるなんて単に器量がなかったというに過ぎないでしょう。省内ではそれなりに知恵をしぼってあれこれやろうと思っているのでしょうから、それをうまく使って、必要な改善も進めてゆく、そういうトップがいれば、本来はわざわざ「仕分け」で指摘されなくともムダを省いてゆけるはずだと思います。
投稿: 哲学の味方 | 2010年11月23日 (火) 06時26分