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2010年11月15日 (月)

湯浅誠氏のとまどいPartⅡ

Alter_new_2010_1112 台湾では、ちょっと空いた時間に会場近くの書店に寄ってみました。そこで平積みされていた本の中に、湯浅誠氏の『反貧困』中国語版がありました。同じような赤い表紙で、結構売れているようでした。

ちなみに、湯浅誠氏は昨年ソウルで開かれた第14回ソーシャルアジアフォーラムで主題報告をされています。いろいろと縁があるのですね。

というのは、本日の話題のマクラです。去る9月10日付のエントリ「湯浅誠氏のとまどい」において、雑誌『オルタ』9-10月号に掲載された湯浅氏の「反貧困日記」の1回目を取り上げてあれこれ書きましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-47d3.html

そこで湯浅氏が提示した

>私にとって正しい問いの立て方は、なぜ「福祉から就労へ」と「社会的排除から社会的包摂へ」という二つのスローガンが両立するのか、というものであるべきと思われた。

という問いに対する湯浅氏自らの答えの試みが、『オルタ』11-12月号に載っています。

http://www.parc-jp.org/alter/2010/alter_2010_11-12.html

ちなみに、同誌の特集は「貧困削減という問題!?」で、とりわけ賞賛されがちなマイクロクレジットに対する厳しい批判の文章なども載っていて、なかなか興味深いのですが、それはここでは措いておいて、湯浅氏の反貧困日記です。

>私たちは「働ける年齢層(稼働年齢層)」に対する福祉がとりわけ薄い国に暮らしている。・・・

>端的に言って、日本では子育て・教育・住宅を基本的に自前で調達しなければならない。そして。子どもの成長に応じて増大していく子育て・教育・住宅費用の調達をなんとか可能にしていたのが、40代後半から50代前半でピークを迎える年功型賃金カーブ(それを支える日本型雇用システム)だったが、周知にように90年代後半以降それも急速に崩れつつある。・・・

>そうした日本の状況から考えれば、福祉は人々の生活を支えるものであって、社会から滑り落ちるようにはじき出されていく人々の社会へのコミットメント(社会参加)を保障するものとなる。その文脈では、福祉は社会的包摂をもたらす。しかし、他方、そこからだけでは福祉の社会的排除としての側面は見えてこない。

>おそらく、福祉国家の前後の課題(プレ福祉国家的課題とポスト福祉国家的課題)を整理する必要がある。・・・

>ここでは、福祉の二面性が見られている。一つは人々の生活を保障し、生存を守るという面、もう一つは福祉という殻(一種のコミュニティ)の中に、人々を社会から隔絶した状態で留め置いてしまうという側面。前者を目指すのがプレ福祉国家的課題、後者を目指すのがポスト福祉国家的課題という関係になる。

>・・・だから、ポスト福祉国家的課題として「福祉から就労へ」「社会的排除から社会的包摂へ」というスローガンが並立して出てくるのだろう

まさにその通りです。湯浅誠氏の学習能力の高さには率直に賞賛の声を送るべきでしょう。

一部の人々が声高に唱える捨て扶持型のベーシックインカムなどではなく、湯浅氏が次のようにアクティベーション型の社会を主張するのも、以上のような的確な認識に裏付けられているわけです。

>そして二つのスローガンが目的にするのは、すべての人の社会参加を目指す全員参加型社会ではないかと思う。多様な教育・職業訓練や手厚い社会保障は、社会参加の条件作りであると同時に、参加を求める社会的装置でもある。きっちりと条件整備がなされるとともに、自己責任も問われる。貧困は認めないが、怠惰も認めない。やさしく人道的でもあり、厳しくもある。

まことに、湯浅誠氏は一時のとまどいを通して、まさに的確な認識に到達されたのですね。

ここから日本における全員参加型社会への道筋という課題が次号のテーマとなるようです。期待したいですね。

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コメント

湯浅氏の「反貧困」だったかな、岩波新書を読みました。人がそれで暮らし続けられる「溜め」の剥奪とつながると思いますが、五重の排除について書いていましたね。パーソナルサポートサービス、というのは、そういう、人がいろんなものから排除されている、その個々の側面について、サポートする、というものなんだろうと思います。で、彼の言う、すべり台から下まで落ちてしまった人達には、とりあえず、そういう風にサポートすることが必要だというのもわかりますが、本来の政策論としては、その排除の拠って来たるところを分析して、排除が起きることを予防する政策の提示もほしいと思いました。

湯浅さんという方は、若いと思っていましたが、今もう40歳くらいかな。
高齢化してゆく世界ですが、ヨーロッパでは、粛々と対策を進め、かつ、その対策を担う人材がどんどん動ける若手にシフトしていますね。イギリスのキャメロンが44かな、先日誕生したオランダのマルク・ルッテが43歳と報道されました。高齢者の参加を進めてもいますが、欧州の指導者層の若さには感心します。
でも、今は、反動でぐちゃぐちゃになりそうなアメリカにも、かつて、マーティン・ルーサー・キングという人がいました。彼がワシントン大行進を率いたのが35歳、その後、1968年、38歳か39歳のときに、「貧困」キャンペーンを張りはじめ、そしてまもなく暗殺されました。

ですし、日本社会の高齢化、労働の非正規化の中で、今後、どのようにサバイバルできるか、まず厳しい状況に置かれるのは、湯浅氏あたりから始まり、その下の団塊ジュニア世代ですね。

ということで、湯浅氏の動向を興味深く見ています。


最近の湯浅さんの講演で、なかなか面白いものを聴きました。彼は無党派の人ですが、どこにでも出かけて行って話をします。ごく最近、国会議員の依頼で公開の講演をしたのですね。これです。

http://www.youtube.com/watch?v=iyClyFC2omU 

ところで、彼の認識はかなり的確だと思いますが、政策論がどうしても弱い感じを受けます。
それにしても、現政権の最近のあの崩れ振りをみると、こういう人がもっと若手の政治家にいたらなあ、と思いますね。
アメリカの反動状態がけっこう怖いですが(私の友人のアメリカ人が、オバマのおかげで、フリーターである自分の息子は医療保険に入れたのに、そんな金を出したくない、という反動がすごい、と嘆いていました。このブログ読者のみなさんは、オバマ以前のアメリカには、国民健康保険制度はなかったことはごぞんじですよね)、日本もけっこう怖いです。
民主はやっぱりダメだ、かと言って自民には戻れない、ではどこに、中国の脅威などのある現在、安直な草の根右翼型旧制度回帰型ファシズムに、というのが、一番心配ですね。
北大セミナーで、hamachanがどんな政治論議をなさったのか、興味深々です。

>「福島みずほと市民の政治スクール」
第1回の講師は、湯浅誠さんです。テーマは「全員参加型社会とパーソナルサポートサー­ビス」。

ですね。

個人的には、福島瑞穂さんは「リベサヨ」の典型という感じであまり共感しない点が多いのですけど(社民党の中でも他の方の方が「ソーシャル」な感じがしますが)、この政治スクールはヒットでしょう。
ここで湯浅誠氏が語っていることは、『オルタ』で述べていることを具体的な事例に引きつけつつ詳しく展開していて、今日的課題をとても分かりやすく説明していますね。

政策論が弱いというのはある意味で当たり前で、そこは的確な認識を踏まえた政策の専門家がやらねばならないところでしょう。そこが、日本ではトンデモな認識の人間が政策論を振り回すからトンデモの二乗、三乗になっていくわけですが・・・。

是非「政治学者、政治評論家、新聞政治部記者」の面々に聞かせたいところです。

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