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2010年10月 8日 (金)

大企業モデル判例法理の功罪

ブラック企業がらみの話ですが、結局、長期間の裁判をやれるメンバーシップ型の大企業労働者が起こした裁判で自分も典型的にメンバーシップ型の中にいる裁判官が作り上げてきたもろもろの判例法理が、その基盤の希薄な中小零細企業の労働者に対していかなる(プラスとマイナス双方の)効果をもたらしてきたのか?という再検討が必要なのではないか、と思います。

大企業労働者にとっては「俺のいうこと聞けねえからクビ!」なんてあんまり現実的でないので、仕事がなくなってもクビにならない整理解雇4要件が大事。

それを経営上合理的なものとするために時間外労働や配転等における企業側の広範な人事権を認めてきたことは、(一部の反逆的労働者を除けば)大部分の大企業労働者にとってはあまり問題ではなかった。というか、コストとベネフィットの釣り合いがとれていた。

ところが、判例法理は別に「大企業に限る」なんて書いていない。およそ雇用契約はこういうものだ、という前提で書かれている。労働法学者や弁護士も、そういう風に考える。

こういう大企業モデルの判例法理が中小企業にどう影響するのか?

一つは、中小企業であっても一生懸命整理解雇4要件をけなげに守ろうとするところもある。とはいえ、もともと雇用を守れる余地が少ないので、どうしようもなくなったらしょうがない。

多くの中小零細企業は「そんなん大企業の話やろ」と、わりと流動的。そのこと自体は合理的。

もう一つは、中小企業労働者であっても、けなげに企業の広範な人事権に従わなければならない、と思ってしまう傾向。これはなまじ子ども時代に優等生だった子が大企業に行ってやっている行動様式が、優等生じゃないけどまじめな子にとって社会全体の「正しい行動様式」になってしまうという文化規範現象だが、実はその基盤となるべき雇用保障は安定的ではない。

経営の厳しい中小零細企業がまともに整理解雇4要件なんか守れるはずがないのと違い、こちらは労働者のあるべき行動様式のモデルなので、まじめな労働者ほど一生懸命(基盤の希薄な)大企業モデルに従おうとする。

この辺、世代論を噛ませる必要があるな。高度成長期以降、上記大企業モデルが確立してきたあとに成長した世代にとって、このモデルが所与の前提であることが多分重要。

こうして、大企業と違って別に守ってくれない使用者の広範な人事権に従わなければいけないというまことにバランスを失した状態が生み出され、

大企業労働者にとってはあまり現実的でなかったために、法理はあってもあまり明確に定式化されることのなかった一般的な個別解雇法理が、中小零細企業にとっては余りまともに意識されることがなかったこともあって、

(大企業であれば、一生面倒を見てやるといっているのにあえて逆らうヤツをクビにすることには合理性があるとしても)そういう基盤の希薄な中小零細企業においても、大企業モデルの広範な人事権に逆らうと、あっさり「クビ」となるという帰結。

ブラック企業現象というものを腑分けすると、多分こういうメカニズムが働いているのではなかろうか。

労働社会全体を広く見渡せば、大企業モデルの判例法理を余りにも一般的なあるべき姿として作り上げてしまったことのマイナスは結構大きかったように思われます。

(追記)

労働法教育の問題も、実はこれが背景にある。

大企業労働者にとっては、メンバーシップの中にいる以上、それをわざわざ波立てるような労働法の知識など不必要。人事部と労働組合に任せておけば(普通は)悪いようにはならないようになっていた。

本当に必要なのは、そういう前提の希薄な中小零細企業なのだが、これまた、優等生だった子に要らない知識が、そうじゃない子にこそ必要だというのはなかなかにパラドクシカル。

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コメント

ああ。なんだか、ものすごいエントリですね。いや、このアイディア自体は以前にもお書きになっていらっしゃいましたが。あらためてビックリ( ・ω・)

労働法初学者なのですが、私が社会人として、教養としての労働法を学んでいて感じる違和感をズバリ言い当てられたような感じがします。

過去の大企業正社員の血と汗と涙の結晶(解雇規制とか)が、現代のフリーターを圧している(不条理なシューカツとか)といったような状況を、単純な善玉悪玉論でなく、歴史的なパースペクティヴに基づき、他国の状況も踏まえ・・・安価な新書本として刊行してください。買いますから(・∀・)ゼヒ!

でも、大企業と中小企業の事情の乖離を、法的に解決するとしたら、実際にはどういう可能性がありますか?
とりわけ、雇用関係法規を漠然と思い浮かべると、むしろ、体力のない中小企業には適用を除外とか延期とかの条項があるのが普通ですよね。
判例は、個別具体的なケースについてのものでしょうから、法律よりも企業間格差を加味しての判断が可能だから、そのような判例が出れば使える、ということですか?
なんか、法律素人のナイーブな疑問ですが。

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