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2010年10月 2日 (土)

ギャラガー『豊かさの向こうに』

Yutakasano もう一冊、川人さんからお送りいただいたのはギャラガー著、川人博/佐藤綾子/加藤彰訳『豊かさの向こうに-グローバリゼーションの暴力』です。

http://homepage1.nifty.com/rengo/bunyabetu/bunka/bunkashokai/yutakasano.html

>「私たちは貧困を押しつけていないだろうか? 危険を押しつけていないだろうか?」――世界の労働現場の実態を調査してきた著者が、マザーテレサの精神、解放の神学の立場で現代世界のゆがみを指摘します

佐藤綾子さんのあとがきから、

>本書の原題は『安い価格の本当のコスト』(The True Cost of Low Prices)です。Cost には「代償」という意味もあります。先進国の便利で快適な暮らしを支える安い商品の多くは、途上国の貧しい人々の安全・健康・人権を代償にして作られています。圧倒的に不公平な世界経済システムのなかで誰がどのように苦しんでいるかを知ろう、心を開こう、そして貧しい人々とつながろう、というのがこの本のメッセージです。
 著者のヴィンセント・A ・ギャラガー氏は、三十余年にわたって労働災害や健康障害を防ぐ仕事に取り組んできました。その間、世界銀行、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)などの依頼を受けて、アメリカとラテンアメリカの各国で調査を行っています。また、ニュージャージー州カムデンにある社会教育施設ロメロセンターで、グローバリゼーションと暴力についての講師を長年務め、平和・正義教育賞を授与されました。

低価格とは、低賃金であるだけでなく低労働条件であり、とりわけ安全衛生の欠如であるという歴然たる事実に目を背ける人々が多いだけに、本書は多くの人に読まれるべきでしょう。

著者自身のプロローグから、

>私は仕事を通じて、何百もの労働災害や死亡の事例を調査しました。そして、そのほとんどが経済的な利益のために労働者の命を危険にさらすという決定によって引き起こされていると気づきました。例を挙げましょう。

・生産性を上げるために安全装置を機会から取り外した結果、労働者が指や手を失いました。

・落下事故を防止するための安全装備を設置しなければ、建物は早く完成します。でもそのために労働者が落下し、体や手足の麻痺あるいは脳障害で苦しんだり、命を落としたりします。安全法に従って安全に働くには、時間も金もかかるのです。

・食品加工機は、電源を落とさなければもっと早く洗浄できます。むしろ、動かし続けて安全ガードが外された状態でスプレーして洗浄すれば、作業はずっと早く完了します。しかし、それによって労働者は手、腕、または足を失うかも知れません。・・・

この本は、下のエントリで紹介した東大駒場の「法と社会と人権」ゼミの学生たちが中心になって翻訳したものということです。

>『 The True Cost of Low Prices 』は、私がシアトルのワシントン大学ロースクールを訪れた際に、書店にて購入した本である。購入のきっかけは、私の専門分野である労災問題について、この本が発展途上国の実態をリアルに伝えていたからである(第十章など)。その後、私が講師を務める東京大学教養学部「法と社会と人権」ゼミで、国際社会と人権に関心をもつ学生有志を募って、本書の翻訳作業をおこなうこととなった。翻訳作業に参加したのは、加藤彰君をチーフとして、武井紀文君、隅田宙希君、大川友理さん、山田晃永さん、山崎奈都子さんである。また、フリーランスの吉田しのぶさんにも重要な役割を担っていただいた。そして、全体を通じて翻訳家の佐藤綾子さんが入念に監修して、今回の出版に至った。出版社は、カンボジアなどアジアの発展途上国に関する出版で知られる連合出版にお願いし、八尾正博社長からは様々なアドバイスをいただいた。

ちなみに、本書でわたくしが一番(皮肉な意味で)感動した一節を紹介しましょう。

>エルサルバドルの労働省は、安全検査を行ったり、違反者に罰金を課したりする権限を、理論上は有しています。しかし、その権限が行使されることはまずありません。あったとしても、罰金はごくわずかです。政治家が官僚を統制しているため、労働監督官は何の影響力も持たず、雇用者も法律や罰金を恐れていません。

とりあえずは、日本がエルサルバドル並みでないことを喜ぶべきでしょうか。しかし、世間ではエルサルバドル並みに「政治主導」にしたくて仕方がない人々がいるようですから、将来は分かりませんが。

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