“消えた”労働災害の真実
日経ビジネスオンラインが、一見地味ですが、実は大変重要な問題を指摘しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101001/216478/?top(“消えた”労働災害の真実)
>2009年に労災認定を受けた数は全国で10万5718人。一方で建設業界には現場で事故に遭って、労災にカウントされない人々が数多くいる。それは一人親方。労働者を雇用せずに自分自身や家族で作業する建設職人を指す。
一人親方は大工や左官、型枠など建設職人の様々な領域で増えているが、個人事業主という扱いになるため労働保険の対象外。労働者ではないため、厚生労働省の統計には表れない。だが、その数は無視できるものではない。
「死亡者を見れば、多い時で労災件数の2割、少なくとも1割は統計外」。大阪府内の建設職人を束ねる業界団体、大阪府建団連の北浦年一会長は指摘。ある大手ゼネコンの所長も、「10回に1回は一人親方」と打ち明ける。
>建設需要が縮小する中、業者同士のたたき合いは激しさを増している。下請けに対するゼネコンの発注単価は大幅に下落。建設職人を直接雇用していた1次下請けや2次下請けに保険料の事業者負担がのしかかった。負担を避けるため建設職人を独立させる動きが加速、一人親方の急増につながった。
>保険料負担を避けるために独立を促された元労働者。「統計外」は建設業界と行きすぎた重層下請け構造の歪みを象徴している。
労働者性が問題になるのは関係終了(解雇)と労働災害が多いのですが、とりわけ労働災害の場合、労働安全衛生法上は元方事業主に対して請負人「と」請負人の労働者に対する指導などの義務を課していて、その限りでは労働者でない者も含めた体系になっているにも関わらず、労災法制は下請負人の労働者には補償義務はあるけれども下請負人自身に対しては(労働者じゃないから)ないというふうになっていて、真剣に考えるといろいろと論点のあるところではないかと思われます。
大きな議論をするのであれば、例のシュピオ報告風に、従属労働の円の一つ外側に安全衛生を含む職業活動に共通の法を設け、こういう一人親方の労災問題は今のようなアドホックな形ではなく、共通のプラットフォームを作る方向で考えるべきではないか、といった議論につなげることもあり得るでしょう。
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