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2010年10月 1日 (金)

川人博編『東大は誰のために』

Toudai 過労死裁判などで有名な弁護士の川人博さんから、『東大は誰のために-川人ゼミ卒業生たちはいま』(連合出版)をおおくりいただきました。もう一冊同時にいただいたのですが、そちらはエントリをあらためて書きます。

http://homepage1.nifty.com/rengo/bunyabetu/bunka/bunkashokai/toudai.html

>「現場から考える」「様々な立場・意見を知る」 そして世の中を確実に一歩前へ! 東大教養学部の名物、通称「川人ゼミ」(法と社会と人権ゼミ)。その卒業生たちは現実の社会に出て、今、何と格闘しているのか。手記を通して現代社会の課題に迫り、公と個人の生き方の関係をさぐります。

川人さんが駒場でやってきたゼミが19年目を迎え、各分野で活躍しているゼミ卒業生たちが、「東大は誰のために存在するのか」という川人さんの問いに答えながら、それぞれの近況を書いています。

    序 章 川人ゼミ十九年の挑戦

    川人博

    第一章 医療・報道・農業の現場で

    庭瀬亜香/安井佑/藤川祐子/篠﨑夏樹/山岸一生/佐川豪/戸村賢弘/川渕友絵

    第二章 研究・教育・通訳の道に入って

    竹内寿/古川伸彦/笠木映里/山口敬介/恩賀万理恵/小野瀬勇一/渡部綾/井手雅紀

    第三章 行政・金融・国際機関に入って

    澁谷和朗/横堀直子/安井洋輔/岡田芳和/井上貴至/木村敬/山田智/黒須利彦/柴田隆/前田振一郎/前田大輔

    第四章 法曹界に入って

    鎌倉正和/木田秋津/石井眞紀子/中川素充/山本晋平/神吉康二/島田まどか/山根基宏/皆川更/松本渉/土井香苗/大川秀史/鈴木朋絵/山下敏雅

    第五章 現役生の語る「東大生の素顔」(座談会)

    鈴木悠平/坂本敬/竹内友理/松井勇作/西村光太郎/安部敏樹/伊藤優/山口翔平/稗田有紗

第2章に、立教の奥野寿さんと九大の笠木映里さんがいますね。

奥野さんは「無力さの力-労働法の世界で」として、こう語っています。

>私は、このように労働法としては一定の保護・規制を行っている場合であっても、それが現実には履行されていない点がまま見られる現状について授業で語るたびに、現実は必ずしも労働法が定めているとおりにいっているとは限らないことを思い出し、少なからず、自分と、自分が研究・教育している労働法に、無力さ、むなしさを覚えます。

奥野さんの原点は、川人ゼミのフィールドワークとして、過労死した方の遺族の話を伺ったことだそうです。

>このやりきれなさは、何かできなかったのだろうか(今の私が振り返って言い直せば、労働法がしかるべき役割を実現していたら)という気持ちの裏返しとしての無力さに由来していたのだと思います。このような思いを何とかしたいという気持ちも、労働法の実現という現在の関心につながっているのだろうと思っています。

笠木さんは「百年先、社会保障はどうなっているか」で、川人ゼミが与えた影響をこう語っています。

>学生時代は・・・頭でっかちで、夢見がちで、ナイーブな学生だったと思う。川人博先生のゼミで、法律や法学が社会で果たす役割を学んだ経験は、私の法律観とその後の職業人生に大きな影響を与えた。人権問題の現場を歩き、当事者の声を聞くフィールドワークを通して、今まで知らなかった世界を目の当たりにするとともに、物事には必ず複数の側面があって、勧善懲悪の構図では判断できないという当たり前のことをあらためて学んだ

このほかにもさまざまな分野で活躍する人々が、若き日に川人さんから受けた精神的影響を語っています。今年の夏学期の受講者総数は300人近いそうで、20年間駒場学生の少なからざる部分が川人さんのゼミで社会の現実を学んできたというのは、考えてみれば大変大きな知的影響を及ぼしてきたというべきでしょう。

日本銀行に勤務する安井洋輔さんが。

>社会の人々や企業の姿を想像しようとせず、統計データや数字に埋もれてしまうと、適切な問題意識が醸成できない危険性があるのではなかろうか。しかし、・・・川人ゼミで経験したフィールドワークを思い出すことで、目の前にあるデータやシミュレーション結果が、その背景にある人々や企業の切実な経済活動を表していると感じることで、適切な問題意識を持つことができる気がしている。

と語っているのも、とても重要なことです。

ちなみに、「東大は誰のために」という問いに対する、川人さんの答えは次の通りです。

>東大の学生のためであろうか

東大の教員・研究者のためであろうか

いずれでもないと私は思う

東大は、東大に来られない人々のためにこそ存在するのである

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マックス・ウェーバーの「国民国家と経済政策」、フライブルク大就任時31歳の講義です。東部ドイツ経済・社会の見事な分析と、市民の政治教育の重要性を説く格調高い講義。聴いた学生は国の将来を深く考えたでしょう。日本でも、近代市民社会形成を探求する大塚久雄氏は門下に優秀な学生を輩出しました。
以上、ツイッターと同じ140字でまとめてみました、と、ちょっと遊びましたが、温故知新、先達はこころざし高く優れた若い者を育て、自分の名声や利益ではなく、日本の社会の将来を考えて動く人達をたくさん送り出してほしいものです。

こういう記事を見ました。

http://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/e01_17_j.html

東京大学が、センター試験の入試科目から「現代社会」を外す、というものでした。

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