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2010年10月14日 (木)

野川忍先生のついーと労働法講義シリーズ

野川忍先生のついったによる労働法講義シリーズが続々出荷されています。

http://twitter.com/theophil21

正直、労務屋さんの言うように「1ツイート140字というツイッターの制約は非常に大きいという印象で、おそらく先生もお考えを十分には述べきれておられないことでしょう」という感は大きいのですが、それでも労働法のかなり中核的な話を「つぶやく」という前人未踏の快挙(怪挙)は、紹介する値打ちがあります。

まず、「派遣法のあり方」シリーズ:

派遣法のありかた(1) 労働者派遣はなぜ規制されるのか? それは、もともとこの雇用形態が、「労働者供給」に該当し、労働者供給は職業安定法44条によって罰則付きで厳禁されていることに遠因があります

派遣法のありかた(2)労働者供給とは、要するに、自分の支配下にある人間を、第三者から金をとってその第三者のもとで働かせる、という仕組みであり、かつては港湾荷役のボスなどが利用して暴力団の資金源になっていました。

派遣法のありかた(3) そこで、各国とも労働者供給を禁じ、日本でも労働組合が無料で行う場合にのみ、許可を受けることを条件に認めてきました。 しかし、時代の変化とともに、「人材供給ビジネス」が定着して、厳格なコントロールのもとに労働者供給の形態の一部については法認の方向となります。

派遣法のありかた(4) そこで誕生したのが労働者派遣法であり、登録型と常用型の派遣事業を厳格な規制のもとに認めることとなりました。つまり、もともと刑罰を科して禁じている仕組みに特別に例外を設ける、というのが労働者派遣制度の出発点なのです。

派遣法のありかた(5) したがって、派遣を完全に自由化するということは、労働者供給禁止の原則を撤廃しない限りありえない。そして労働者供給禁止原則は、場合によっては「人身売買」につながりかねない手法を防ぐ意味で、今なお重要ですから、そう簡単に緩和することはできません。

派遣法のありかた(6) しかし他方で、人材派遣というビジネスが一定の意義を有することも事実だし、派遣労働者が常に人身売買的状況に置かれるとは限らないので、派遣法は「労働者供給の危険を防ぎつつ」、「派遣ビジネスと派遣労働者の利益を尊重する」あり方を模索して改正が行われてきました。

派遣法のありかた(7)登録型派遣や日雇い派遣、製造業務への派遣を禁止することは、「しょせん派遣は人身売買の危険を内包した労働者供給の一類型なのだ」という点からすればそれなりの正当性がありますが、しかしそれで働き方の選択肢が制限されることは労働者にも有害だという批判もあり得ます。

派遣法のありかた(8) それではどうするか。やはり最大の課題は、派遣労働者と派遣元及び派遣先との実質的対等性をどう確保するかであると思います。派遣会社や派遣先が、「お試し派遣」だの「使い捨て派遣」だのといった意識を持ってしまうような実態が払拭される必要があります。

派遣法のありかた(9) 労働者が、派遣元や派遣先との対等の交渉力を保障されつつ派遣労働という仕事を選べるならば、派遣制度は現在より自由化されることが望ましいでしょう。

派遣法のありかた(10) 逆に言えば、それができず、派遣労働者がコスト面からのみ使われるという事態が拡大するような実情では、もともと「労働者供給」である派遣をいっそう規制すべきだという主張を克服することは難しいですね。人間はモノではないという冷厳な事実は変えることはできません。

まっとうな労働法学者としての極めて標準的な認識と価値判断であろうと思います。そのかなりの部分については私も賛成ですが、わたしはそもそも労働者派遣、労働者供給、請負、職業紹介といった三者間労務供給関係のとらえ方について、もっと抜本的に見直すべきではないかと考えていて、その観点からするといくつもの点で異論があります。

その中身については、拙著『新しい労働社会』をはじめ、水町先生編の『労働法改革』や労働法学会誌などでも書いてきましたし、明日の早稲田大学産業経営研究所のシンポジウムでもお話しする予定なので、ここで詳述はしませんが。

次はより基本に立ち返って、「なぜ労働者は保護されるのか」シリーズ:

なぜ労働者は保護されるのか(1) …そういう基本的疑問を抱いている方も多いかと思います。答えはいくつかありうるのですが、「労働契約の一方当事者である労働者には、生身の人間しかなれないから」というのが最も本質的な解答ですね

なぜ労働者は保護されるのか(2) もともと雇用関係は契約関係です。本人同士が意識していなくても、働く側は「使用されて労働する」ことを、雇う側は「指示どうりに働いてくれたら代金として賃金を支払う」ことを、それぞれ相手に約束することで成立しています。

なぜ労働者は保護されるのか(3) 民間において(公共部門は法的枠組みが違う)は、一日だけのアルバイトでも、長期雇用を前提とした正規労働者でも全く同様に、この「労働契約」によって雇用関係が成立し、展開しています。

なぜ労働者は保護されるのか(4) ところが、売買契約や委託契約やリース契約など、世の中に行われている典型的な諸契約と労働契約には、決定的に異なるところがあります。言い換えれば、労働契約だけにみられる本質的な特徴があります。それが、「労働者の側には、生身の個人しかなれない」です。

なぜ労働者は保護されるのか(5) たとえば売買契約なら、売り手と買い手は、どちらも個人であったりどちらも法人(組織)であったり、どちらかが個人で相手が法人であったりできます。個人が買い手で大企業が売り手なら売り手が強いでしょうが逆のこともある。

なぜ労働者は保護されるのか(6) だから、売買契約では売り手と買い手とは、アベレージで言えば対等であって必ず売り手が強いとか買い手が強いとかいうことはない。しかし労働契約は、雇用される側は本質的に生身の個人でしかなく、雇う側は実態としてほぼ法人(会社)ですね。

なぜ労働者は保護されるのか(7) そうなると、労働契約では本質的に雇う側の言い分だけが通る契約となってしまいます。なぜなら、法人には時間的・空間的な限界がなく、情報量や交渉力も程度の差ではなく次元の違いとして、生身の個人より有利だからです。

なぜ労働者は保護されるのか(8) たとえば、イチロー君のようなスーパー労働者がいても、同じ時間に違う場所、で同時に複数の会社の面接を対面で受けることはできませんが、会社なら、東京と札幌とニューヨークで、同時に何人でも面接できる。

なぜ労働者は保護されるのか(9) つまり、本来「契約」とは、対等な交渉の中で一致点を見出す仕組みなのに、労働契約の実際は、使用者側の要求だけが通り、労働者はそれを全面的に受け入れる、という形でしか成立も展開もしないのです。

なぜ労働者は保護されるのか(10) そこで、19~20世紀初頭の先進工業国ではどこでも労働者は低賃金や重労働を「契約で同意したはずだ」という理由で実際には強制され、追い詰められて労働運動が過激に展開されることになりました。

なぜ労働者は保護されるのか(11) 各国はそれに対して市場経済システムを守りつつ労働契約の本質的欠陥を乗り越えることを目的として、まず労働条件の最低基準は法律で強制する(最低賃金制度の世界)こと、そして労働者側の交渉力を確保するために労働組合を法認し、助成する制度を作りました。

なぜ労働者は保護されるのか(12) ポイントは、労働者個人の直接的な保護よりは、労働者の交渉力の強化ということが優先すること。仮に労働組合の組織率が100%になったら、どんな一人の労働者にもバックに強力な労働組合があることとなり、いっさい国家的保護は必要なくなります。

なぜ労働者は保護されるのか(13) フィンランドやデンマーク、スウエーデンなど一応うまくいっているとされる先進資本主義国の共通の特徴は、労働組合の組織率が高く、社会的地位も権威もあることです。しかし労働組合は任意団体ですから、個人保護ももちろん必要です。

なぜ労働者は保護されるのか(14) これで終わりますが、要するに、労働者が保護されるのは「弱くてかわいそう」だからではなく、労働契約が本質的に不均衡なので、それを「対等な当事者の交渉により物事を決定する」という本来の姿に戻す為なのです。この原点を確認したいですね

これはもう「なぜ労働法は必要なのか?」に対するこの上なく簡にして要を得た解説ですが、わたくしの立場からはとりわけ最後のあたりが極めて重要です。

デンマークやスウェーデンを解雇自由だと無知蒙昧に持ち上げる手合いが、その社会基盤である労働組合を「ギルドだからけしからん」などと目の敵にするという異常な姿を、異常とすら感じられない人々が多い昨今の日本ですから。

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コメント

http://togetter.com/li/85323

野川先生新作まとめ

正直twitterになじみのない人も多いと思うのでこういう別形態に
されるのは有用かもしれません

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