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2010年10月 1日 (金)

小野晶子さんと労務屋さんの派遣労働論

JILPTのコラムで、小野晶子さんが「派遣労働でキャリアを培うには」を書かれています。

http://www.jil.go.jp/column/index.html

昨晩、小野さんとわたくしが都内某所で派遣業界関係のみなさんといろいろお話ししたばかりでもあり、わたくし的にはグッドタイミングでありました。

ご承知の通り、小野さんは最近、「人材派遣会社におけるキャリア管理―ヒアリング調査から登録型派遣労働者のキャリア形成の可能性を考える―」という立派な報告書を出されたばかりであり、このコラムもその事実発見をもとに書かれているわけですが、

http://www.jil.go.jp/institute/reports/2010/0124.htm

さらに一歩踏み込んだ記述もあります。

>では登録型派遣労働でうまくキャリア形成するポイントとは何だろうか。・・・

派遣労働では、契約業務以外の仕事は与えてはいけないことになっている。上記に書いたような第1と第2のポイントでは、あるいは契約業務を超えて仕事をする場面も出てくるかもしれない。習熟と共に仕事が高度になり職業能力が向上し、賃金上昇につながる、あるいは職場でなくてはならない存在となり正社員への道が広がるというケースは往々にして、業務区分が緩やかな職場で見られる。

業務を限定し、それ以外の業務を与えないという契約は、派遣労働者の業務内容を明確にし保護するという役割や、同職場の正社員の職域を奪わないという役割がある一方で、キャリア形成はやりにくくなる。

現在の日本では3分の1が非正規労働者となりつつある。派遣労働も含めて、非正規で働くもののキャリア形成をどのように構築すべきか、次世代の日本を担う労働者の大きな課題である。

問題の性格上、かなり慎重な、といいますかいささか奥歯に物が挟まった言い方になっていますが、「業務限定こそが派遣規制のアルファであり、オメガである」という現行派遣法の出発点からの考え方に対し、そもそもそれでは派遣労働者のキャリア形成ができないではないか、労働者のためにならないのではないか、という視点が感じられます。

これを別の観点から論じているのが、ご存じ労務屋さんです。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20101001#p1(労働政策を考える(19)専門26業務適正化プラン)

えー、まずそもそも「専門26業務」なんて粗雑な言い方をするところからして、素人が書いたとしか思えない行政文書であるわけですが、そういう労働法オタク的突っ込みではなくて、

>また、専門26業務をあまりに厳格に適用することは、派遣労働者の能力・キャリアの形成上も問題となる可能性があります。5月に発表された集中期間の結果では違反例もいくつか紹介されていますが、その中にこういうものがあります。

「第5号業務(事務用機器操作)と称して、平日は、事務機器操作のほか、来客者の応対、利用料授受の補助、契約申込み及び解約の手続き、苦情相談等の窓口業務を、また、土日祝日は専ら窓口業務を行わせていた。」

 もちろん、これは今回の「留意事項」をあてはめれば第5号には該当しない、ということになるでしょう。しかし、もし企業が事務職の正社員を中途採用するとして、前職は派遣でひたすら事務機器操作「だけ」をやっていた人と、同じく前職は派遣で事務機器操作のほかに来客応対や苦情処理の経験もある人と、他の条件が同じなら、どちらを正社員採用するでしょうか?

 もちろん、個別には改善が必要な問題のある派遣労働も多数あるだろうとは思います。しかし、今回の「適正化」プランは、実態と乖離した法制度を杓子定規に適用しようとしたときの弊害が大きく出ているように思われます。いまや派遣労働は労働市場においても無視できない存在になりました。全くないとは言えませんが、戦前のような「中間搾取」もほぼ過去の遺風となり、積極的に派遣での就労を選択する労働者も増えています。こうした中で必要なのは、派遣労働を「臨時的・一時的な労働力」として例外扱いするのではなく、働き方の立派な選択肢として市民権を与え、そのキャリア形成を促進し、良質な派遣業者を育成するような法制度ではないでしょうか。今回の派遣法改正法案がそれと逆行するものとなっているのは残念でなりません。

と、まさに小野さんが指摘している懸念とまったく同じ問題意識を示しています。

わたくしも、小野さんや労務屋さんに同感ですが、やはりそもそも労働者派遣法を作るときに、それまではおくびにも出していなかった専門業務だなんていう虚構を無理に通してしまったところに、今日ただ今かかる悲惨な事態を生み出している根源があるということを、一昨日の晩にも申し上げましたが、ここでも繰り返し指摘しておきたいと思います。

最近書いた小文ですが、

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo0725.html(事務職派遣の虚構(『労基旬報』2010年7月25日号「人事考現学」 ))

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roumujijo0901.html(事務処理派遣とは何だったか?(『労務事情』2010年9月1日号巻頭エッセイ「Talk&Talk」 ))

(追記)

つまらんことをちくりにいく手合いがいるもので、

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20101004#p1(「専門26業務」なんて粗雑な言い方)

>通報者の方はこれを見て「hamachan先生が労務屋を素人扱いしてますよ」という意味のことをだいぶ異なる表現で親切にもご教示くださったわけですが、

もちろん労務屋さんはそんなのに乗せられるわけはなく、

>ちゃんと読んでくださいよこれ行政文書って書いてあるじゃないですか。

実はこれ、上で書いた「昨晩」、つまり先週木曜晩のネタであったのですが。で、

>先生の苦言はこの「行政文書」を起草した職安局の担当者に向けられているのでぜひともそのようにお願いします>通報者の方。

というのはまさにその通りなのですが、そのも一つ先もあるのですが、まあそれはおいといて、というところで。

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