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2010年10月31日 (日)

小宮文人『雇用終了の法理』

1102977577 小宮文人先生から、近著『雇用終了の法理』をお送りいただきました。ありがとうございます。

オビの文句に曰く、

>公正かつ透明な法理の探求

>解雇のみならず雇用終了法全般を検討

>わが国の雇用終了法理の現状とその問題点を明らかにし、解決の方向について詳細に論じた重要書籍。解雇権濫用の立証責任、解雇の金銭解決など、多くの解雇法理に関する未解決問題、また、有期労働契約の満了、契約の自動終了などを含め、広く雇用終了全般の問題点を捉えつつ、有益な将来への提言を行う。

小宮先生は英米の解雇法制をベースに、日本の解雇規制法制、雇用終了法制についてさまざまな提言を行ってきていますが、本書はその集大成とも言うべき大著です。

序章の「解雇規制法理から雇用終了法理へ」では、解雇規制についての経済学説からの議論もふまえつつ、雇用終了法理の確立の必要性を説いて、第1章以下の各論につなげていきます。以下、

第1章 解雇権の一般的規制法理としての解雇権濫用法理

第2章 労働契約の自動終了

第3章 退職強要の規制法理

第4章 懲戒解雇の法規制

と各分野ごとに詳しく論じ来たった上で、

最後の「結語 雇用終了法理の展望」では、まとめ的に小宮先生の持論が要約されています。

>第一に、解雇規制については・・・立証責任の問題については未だ不明な点が多く残されており、・・・このことは、また、解雇の正当事由の明定とその判断要素を定める指針等の必要性の肯定につながると思われる。今後、より透明性のある法理に発展させるためには、この問題は立法によって処理されるべきである。

>第二に、解雇救済に関しては、・・・解雇無効・地位確認判決だけではなく、どうしても解雇の金銭解決が必要と考えられるが、今のところ、判例法理だけでこの問題を解決することは期待しがたい。労働審判制度等を通じ、低額な金銭解決が蔓延すると解雇権濫用法理の存立が脅かされる恐れもある。そこで、立法的解決を根本的に再考する必要があると思われる。

>第三に、雇用契約の自動終了については、・・・とりわけ、濫用的な有期労働契約の反復更新を十分に規制できていない状況にある。

>第四に、退職強要については、・・・使用者による退職追い込み行為については、これを正面から規制する法律を導入する必要があると考えられる。

>第五に懲戒解雇については、・・・手続き的規制は必ずしも十分とは言えず、懲戒解雇決定以前の告発書及び反論の機会の付与、さらには懲戒解雇決定後の解雇理由書の付与とその訴訟中の修正・変更の原則等を立法化する必要がある。しかし、この手続き規制の立法化に際しては、あらゆる手続き違反を懲戒解雇の効力に直結させるのではなく、金銭的な救済措置も考えるべきである。

>最後に、わが国では・・・判例法理であるがために、以上のような部分的に不十分ないし無理な箇所が生じてきているということができる。今まで構築されてきた解雇規制法理を補完して、一貫した公正かつ透明な雇用終了法理を構築するための立法措置が必要なじきに来ていると言うべきである

そのかなりの部分について、わたくしは同意見です。

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