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2010年9月16日 (木)

一犬虚ニ吠ユレバ万犬實ニ傳ウ

Hyoshi08 本ブログでもボランタリーに宣伝していた(笑)『POSSE』第8号「マジでベーシックインカム?」特集ですが、どなたのもそれぞれに興味深く、とりわけ日頃あんまりその方面にお近づきになっていないポストモダーンな東浩紀さんの「BIの使い道を全部公開されちゃう」という素晴らしいアイディアには、自由の究極が完全監視社会という絶妙のアイロニーを感じましたな。

(下に「追記」を書き加えましたので、必ずお読み下さい)

それはそれとして、飯田泰之氏のインタビューを見ていて仰天しました。池田信夫氏の既に暴露されたでたらめを、そのまま信じ込んで、得々と語っていたからです。

>-飯田さんのご提案では、経済成長とBI導入の代わりに、雇用に関する規制は基本的に撤廃ということですよね。ちなみに、これはどの国がモデルとされているのでしょうか。

モデルではなくて理論ですよ。強いていえば、一番極端な例はスウェーデンでしょう。スウェーデンは解雇に関して公的な規制が極めて少ない。税金は途方もなく高いですが、その代わり保証は充実。その一方で規制はゆるゆるです。完全な「employment at will」。会社が雇いたい人だけ雇いというシステムです。・・・・・

-スウェーデンも雇用保護法で解雇の規制はあると思いますし、・・・

僕は全然そうは思いません。法的な規制の強化に合理的な根拠を見いだせないですから。・・・

もちろん、スウェーデン人がこれを見たら激怒するでしょうが、なによりも、この飯田泰之氏という(リフレ派の星というふれこみの)経済学者が、社会科学という経験科学に携わっているという自覚がかけらもなく、自分が語っていることが事実であるかどうかを確認してみるという、経験科学者であれば最低限のモラルも忘れて、こともあろうにでたらめを振りまくことで有名な池田信夫氏の妄言を、一字一句そのまま盲信し、こういうでたらめを再生産しているという点に、日本の社会科学者の劣化ぶりが見てとれて、ただただ嘆息が漏れるばかりです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-6bab.html(池田信夫氏の熱烈ファンによる3法則の実証 スウェーデンの解雇法制編)

>池田信夫

「いいやアメリカのシステムじゃないんですよ。それは。例えばね、これは僕の言っているのに一番似ているのはスウェーデンなんですよ。スウェーデンてのは基本的に解雇自由なんです。ね、いつでも首切れるんです、正社員が。その代わりスウェーデンはやめた労働者に対しては再訓練のそのー、システムは非常に行き届いている訳ですよ。だからスウェーデンの労働者は全然、そのー失業を恐れない訳ですよ。」

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-26ec.html(これがスウェーデンの解雇規制法です)

>純然たる事実問題について、その主張の誤りを指摘されても、事実問題には一切口をつぐんだまま、誹謗と中傷を投げ散らかして唯我独尊に酔いしれるという御仁に何を言っても詮無いことですが、事実問題に何らかの関心をお持ちであろう読者の皆様のために、スウェーデンの解雇規制法のスウェーデン政府による英訳を引用しておきます。

http://www.regeringen.se/content/1/c6/07/65/36/9b9ee182.pdf(Employment Protection Act (1982:80))

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-ffc2.html(スウェーデンの労働法制は全部ここで読めます)

>さて、某一知半解無知蒙昧氏の「北欧は解雇自由」とかいう馬鹿げた虚言はともかく、解雇規制に限らず北欧の労働法制はどうなっているのか興味を持たれた方もいるかもしれません。

このうち、スウェーデンの労働法制については、スウェーデン政府のサイトに英訳がすべて掲載されています

まあ、しかし、こうやって何回もそのつどでたらめを叩き潰しても、そもそも社会科学を事実に立脚した経験科学だと心得ず、口先三寸でイデオロギーを振り回す奇術のたぐいと心得る劣悪な連中には、蛙の面に百万回ションベンひっかけたほどにも感じないのでしょう。

今回の飯田泰之氏のインタビューを読んで、「一犬虚ニ吠ユレバ万犬實ニ傳ウ」という故事成語を思い出した人は、おそらくわたくし一人ではないでしょうね。

(追記)

飯田泰之さんが、事実関係について「完全に誤解してました」と言われています。

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20100916#p1

>これについてはお恥ずかしい限りで,僕の完全な無知のせい.スウェーデンは金銭解雇ルール(ちなみに僕はいろんなとこで解雇ルールの金銭化は主張しています)があること&整理解雇の定義が広いことから「Employment at will」と口が滑りました.完全に言いすぎです.該当部分は読み飛ばして下さい.今後は間違っても「解雇自由」というニュアンスが強調される話はしないようにします

飯田さんの率直な姿勢に心から敬意を表したいと思います。また、間違いを指摘されても相手の属性批判を繰り返す池田信夫氏になぞらえるような失礼な言い方をしたことについて、心からお詫び申し上げます。

また、後半の引用の仕方が誤解を招くようなものであったことも、引用のルールを踏み外しており、謝罪いたします。

本来ならば本エントリを書き換えるべきところですが、既に多くの方々が読みに来られ、ブックマークも付いていますので、上記文章はそのままとし、「追記」としてここに明記しておきます。

なお、飯田さんの

>ただし,解雇のルールが明確化で,決裂時の金銭解雇ルールが示されていることは人を雇う際の不確実性を減じてくれるのは確かでしょう.

>法律の字面ではなく「実際に解雇できるか」という面でスウェーデンのフルタイム労働者の解雇規制は日本の正社員への解雇規制よりもかなりゆるいとみなせるのではないでしょうか.

といわれる点については、わたくしもまさにそう考えており、その趣旨は本ブログ上でも書いております。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-26ec.html(コメント欄)

>解雇自由ということと、解雇されてもあんまり辛くない社会であるということは別だということでしょう。

スウェーデンは上述のようにいかなる意味でも解雇自由ではありませんが、「不当解雇だ!」といって争う機会費用と、さっさと会社を辞めて手厚い失業保険をもらいながら、たっぷりと時間をかけて職業訓練を受けて好条件で再就職していくことを比較考量して、後者を選ぶ人が多いということでしょう。それはそれで社会の選択肢が多いということで結構なことです。

それを、不当であろうが不道徳であろうが解雇は自由という概念である「解雇自由」と呼ぶことに問題があるのだと思います。

もう一つ、これはあまり指摘されない点ですが、スウェーデンにせよ、デンマークにせよ、これは私のいたベルギーも同じですが、いわゆるゲント方式の失業保険で、失業保険は労働組合が運営し、労働組合を通じて支給されるという仕組みです。失業しても労働組合のメンバーシップはそのままで、社会から排除されたという風にならないというのは、実は結構大きいのではないかと思います。労働組合員というメンバーシップは継続していて、たまたま就労している会社から「もう要らない」といわれたら、さっさと別の会社に「配転」するだけという感じなのかなあ、と。

これこそ、まさに一知半解氏が目の敵にしていた「ギルドとしての労働組合」そのものですが、そういうギルド的な仕組みこそが、解雇が辛くない社会のインフラになっているのではないかと思います。日本の労働組合は、いかなる意味でもそういうギルド的な性格を有していないがゆえに、日本社会における「解雇」というのはとても辛いものになってしまうという面があるのでしょう

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