勤務間インターバル規制とは何か
産労総合研究所の『人事実務』9月15日号に「勤務間インターバル規制とは何か」を書きました。
中身は、昨年と今年の春闘で情報労連傘下の組合が締結した勤務間インターバル協定の解説と、そのバックグラウンド思想としてのEUの労働時間規制の解説です。
この協定については、拙著『新しい労働社会』の43頁でも紹介しており、
>いのちと健康を守るための労働時間規制という方向に向けた小さな一歩として注目すべきでしょう。
と述べておりました。協定の詳しい中身は雑誌をご覧ください。
本稿の最後の「今後の展望」というところで、公共政策への課題として次のように述べております。
>それとともに、公的な労働政策としても、そろそろ労働時間規制といいながら実際には賃金をめぐる綱引きにしかならないような割増率引き上げ政策ではなく、物理的な実労働時間ないし拘束時間/休息期間を正面から政策対象とする方向に転換するべき時機が到来しているのではなかろうか。拙著で述べたことであるが、近年の日本の労働時間をめぐる議論は、名ばかり管理職問題にせよ、サービス残業問題にせよ、ホワイトカラーエグゼンプションにせよ、本来労働者の健康確保、ワーク・ライフ・バランスの観点から論じられるべきことが、ことごとく残業代というゼニカネ話にされてしまい、企業の人事管理に無用な負担をかける時間外労働割増率の段階的逓増のような政策ばかりが実現する一方で、肝心の労働者の健康状況を改善させるための手だてはなんらとられようとしていない。
情報労連が打ち出した勤務間インターバル規制の思想的インパクトは、そういう低次元に低迷している日本の労働時間政策論議に衝撃を与え、まっとうな労働時間政策への道を開く可能性もあるかも知れない。情報労連自身の意図を超えることかも知れないが、筆者としてはそのようなインパクトを期待して、その取り組みを注視していきたい。
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