高祖先生、学術会議提言の意味を説く
本日の朝日の教育面に、わたくしも参加していた日本学術会議の「大学と職業との接続検討分科会」の委員長をされていた高祖敏明上智理事長が、提言の意味を解説しています。
朝日は、自分で「卒後3年新卒扱い」という枝葉だけ報道しておいて、それだけじゃだめだと社説で叩いてみせるという絶妙な報道ぶりでしたが、これはその反省の意味もあるのかも知れません。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-a8fe.html(「卒後3年新卒扱い」というおまけよりも本論を読んでほしい)
>戦後ずっと日本の会社は「大学は余計なことをしてくれるな」という発想だった。学生の「訓練可能性」を買い、自ら育てていた。特に文系では、実践的な職業能力は重視されず、自分たちが学んだことを生かせる採用や雇用のシステムになってこなかった。
・・・それなのに新卒主義が続いているのは、高等教育での学習成果と職業上必要とされる能力の「接続」の問題がずっと放置されてきたからとも言える。企業側からすれば「大学がきちんと人材を育てていない」という思いもあるでしょう。
だから、新卒主義を変えるためには、大学側も自己改革をしなければならない。それが今回、各学問分野ごとに「参照基準」を設けようという提言につながった。
>「卒業後3年新卒扱い」がまず取り組むべき短期的課題とすれば、参照基準は、より根本的に大学と社会の関係を変えていく中長期的な課題となる。
今の就職活動でのエントリーシートは完全に企業ベースだが、自分が大学教育で何を身につけたのか、学生が採用の場で自ら示せるように変わっていかなければ。さらには、学生を迎える企業側が教育に求めるものをまた大学にフィードバックしていく、そんな仕組みを作るのがわれわれの仕事だと思っている。
>柔軟性と多様性のあるキャリア社会の実現は、政府だけでも企業だけでも大学だけでもできない。革命的に一気に変えることはできなくとも、現実を踏まえた上で改良型で少しずつでも進めていきたい。
短い記事の中に言い尽くされていますので、特に付け加えることはありません。
記事ではその後に、経団連の川村副会長が、
>企業側としては最終的には「いい人なら採る」というのが基本姿勢だ。
>「どうして採らないんだ」と採用側にいわれても、「いい人なら採る」というのが企業側の共通認識だろう。
と述べています。
これは、まったくその通りだと思うのです。問題は、その「いい人」が、どういう人であるかという点において、まさに学校と企業との間に「接続」がないという点なのですね。
« 70歳まで働く!@東洋経済 | トップページ | 原みどり『若年労働力の構造と雇用問題』創成社 »
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 高祖先生、学術会議提言の意味を説く:
» リクルートの就職支援活動改革 [M.Mの独白―とある発言の記録]
脳科学者の茂木健一郎さんが8月25日にツィッター上で行った提案を受けて,本日(9月28日)にリクルート社が,下記のようなツィートを公表しました。
@kenichiromogi はじめましてリクナビ編集部です。新卒採用に携わるスタンスを「7つの約束」としてまとめました。茂木先生が8/25に発信された「リクルートの方々へ」の返答になるかと思いご報告させて頂きます。http://bit.ly/9jWKFN #7yakusoku
上記の「7つの約束」の内容は以下の通り。
【7つの約束】(リクナビ)→ト... [続きを読む]
コメント