ソクハイ事件判決文
『労働経済判例速報』2076号に、本ブログでも何回か取り上げてきた例のソクハイ事件の東京地裁判決(平成22年4月28日)が収録されています。
新聞報道で?だったところを判決文できちんと読み直してみて、ますます???という状態です。
この裁判官によると、メッセンジャーというのは労働者じゃないと。ところがメッセンジャー所長は労働者だと。それゆえ、所長解任通告は解雇であるけれども、稼働停止通告は解雇じゃないと。
同一人物がこっちで労働者として働き、あっちで事業主として活動するということはもちろんありますが、本件の場合、メッセンジャーとしての労務提供活動とメッセンジャー所長としての労務提供活動を分けるなどというのはあまりにも技巧が過ぎて、わけが分からないですね。
、そもそも論としていえば、メッセンジャーが労働者じゃないという理屈があまりにもひどい。契約が請負契約だからとか、報酬が出来高払いだからとか、そんなのが労働者でない理屈になること自体がいささか・・・。
問題は事業者性のところで、服や自転車や携帯電話を自分の負担で賄っているというのは、事業者的であることは確かです。ただ、トラックの運転手とかであればまだしも、自転車が「事業者の有する財・サービス生産手段」なのかねという気もします。西尾末廣氏によれば、昔の職工は、道具一式自分で持ち込むのが当たり前であったわけで。一方、事業所得として確定申告しているとか、雇用保険や労災保険に加入していないとか、それは契約上労働者とされていないことの帰結であって、それ自体が労働者性の判断基準ではないでしょう。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_b0e1.html(バイク便ライダー)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_bc1c.html(ソクハイに労組)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_6ae7.html(ソクハイユニオン)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_57e9.html?no_prefetch=1(バイク便ライダーは労働者!)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-5512.html(バイク便:労働者としての地位確認など求め初提訴)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-7067.html(『ノンエリート青年の社会空間 働くこと、生きること、「大人になる」ということ』)
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-5140.html(初学者向け・・・じゃない「初学者に語る労働問題」)
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