« リバタリアンと児童虐待 | トップページ | ひさしぶりにブログで長めの拙著書評 »

医師派遣はいいの悪いのどっちなの?

1週間前の朝日の記事で、

http://www.asahi.com/health/news/TKY201008210331.html(医師不足解消へ、都道府県に派遣センター 厚労省が構想)

>厚生労働省は医師不足に悩む病院に医師を派遣する「地域医療支援センター」(仮称)を各都道府県に設置する構想をまとめた。事業費約20億円を来年度予算の概算要求に盛り込む。医師不足の病院に医師を送る仕組みを国が全国的に整えるのは初めて。

 医師が不足している地方では、地元大学の医学部に、卒業後に地元で一定期間働く意思を示している人を対象にした「地域枠」を設ける動きが広がっている。そこでセンターは、地域枠出身の新卒の医師らを病院に派遣する。地域枠出身の医師に10年近く残ってもらう地方が多く、多数の若手医師を効果的に配置するには、派遣先を一元的に調整する必要があるためだ。

>都道府県によるセンター直営や外部委託が想定されている。派遣とは別に、地域での就職を希望する医師を病院に紹介する事業も手がける。

 医師不足は2004年に新卒医師に2年の臨床研修が義務づけられたのを機に深刻化した。様々な病気の患者を診療できて経験を積める都市部の総合病院が人気を集める一方、大学病院は敬遠され、周辺の病院に派遣していた医師を引き揚げて医師不足を招いた。(月舘彩子)

派遣法の歴史については末尾の資料をご覧頂きたいですが、派遣法制定当時はポジティブリストには入っていなかったけれど、ネガティブリストでもなかった医療業務が、1999年改正時に当時の厚生省医政局の要求でなぜか建設や港湾荷役なみのネガティブリストになってしまった由来を考えると、それほど「医師を派遣するのは許し難い!」と主張していた医政局が、医師の派遣事業を大々的にやろうというのは、どういう理論的整理を付けておられるのか、大変興味深いところではあります。

まさか、この記事でいう「派遣」が労働者派遣法で言う「派遣」じゃない、なんてことはありませんよね。下の方に出てくる「紹介」が職業安定法で言う「紹介」であることと同様、前提にしていい話ですよね。

どういう法制度を考えているのか分かりませんが、まさか一般事業主には依然として医師派遣は禁止業務だといっておいて、都道府県やその外部委託先にだけ医師派遣を認めるというような制度にするというのであれば、それは港湾荷役とまったく同じ仕組みですから、まったく同じ説明をしなければならないはずです。

つまり、医療界というのは港湾荷役の世界と同様、山口組のようなやくざやさんが横行する怖ーーーい世界なので、一般的には禁止しつつ、特別の団体にのみ認めるのだ、と。

まあ、そういいたければそれでもいいですけど、なんにせよ、チーム医療だから医師の派遣は駄目とか言ってたあの理屈は、もう封印するということなのでしょうね。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/rengohakenukeoi.html(連合「労働者派遣・請負問題検討会」第1回講演メモ)

>もう一つ1999年改正の施行の際に適用除外業務に飛び込んできたのが医療関係業務である。もともと、医療関係業務は原始ネガティブリストには含まれておらず、1994年の高年齢者派遣特例で部分的ネガティブリスト方式が導入された際にも、医療関係業務は適用除外とはされなかった。当時の解説書にも堂々と医師、看護婦等の業務が例示されている。育児・介護休業取得者の代替要員派遣でも当然のように対象業務であった。また、1999年改正に至る審議会の議論や国会審議においても、医療関係業務を適用対象から外すといった議論がされた跡は窺えない。ところが、法施行時になって、政令で定める「その業務の実施の適正を確保する上で労働者派遣が不適切な業務」に、なぜか医療関係業務が追加されたのである。

 改正後の解説書によると、その理由は、医療はチームで行われ、また人の身体生命に関わるとのことであるが、言うまでもなく多くの業務はチームによって行われているし、人の身体生命に関わる業務も医療に限られるわけではない。そもそも、医療職はすぐれて専門技術的な性格を有しており、ポジティブリストで対象業務になっても不思議でなかったはずである

|

« リバタリアンと児童虐待 | トップページ | ひさしぶりにブログで長めの拙著書評 »

コメント

国が派遣元となり、医師を派遣するのであれば、当然のことながら「派遣先での労働者の人権」が守られていることを確認する義務・責任が生じます

自分たちのお膝元の国立病院等は労働基準法を守っているのか?と、一旦考えて見た方が良いでしょう
>医政局さん

やくざがいる訳ではないのにタコ部屋労働を強いられている勤務医に光を与えてみたら、凄いことになりそう

投稿: Med_Law | 2010年8月30日 (月) 21時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 医師派遣はいいの悪いのどっちなの?:

« リバタリアンと児童虐待 | トップページ | ひさしぶりにブログで長めの拙著書評 »