JIL雑誌9月号その3
ようやく、JILPTのHPにJIL雑誌9月号の広告がアップされました。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/
ということで、まずは目次を、
提言20年を振り返る
苅谷 剛彦(オックスフォード大学教授)
解題若者の『雇用問題』:20年を振り返る
編集委員会
論文若者と雇用の保護――「内定切り」・「有期切り」・「派遣切り」に関する裁判例の分析
竹内(奥野) 寿(立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
「若者自立・挑戦プラン」以降の若者支援策の動向と課題――キャリア教育政策を中心に
児美川 孝一郎(法政大学キャリアデザイン学部教授)
ノンエリート大学生に伝えるべきこと――「マージナル大学」の社会的意義
居神 浩(神戸国際大学経済学部教授)
日本企業の生産部門における採用行動の変化――製造業2社の事例研究
朴 弘文(神戸大学博士研究員)
非正規雇用からのキャリア形成――登用を含めた正社員への移行の規定要因分析から
小杉 礼子(JILPT統括研究員)
紹介「若者の労働運動」の活動実態と問題意識の射程
橋口 昌治(関西非正規等労働組合・ユニオンぼちぼち執行委員長)
論文(投稿)大学生のアルバイト経験とキャリア形成
関口 倫紀(大阪大学大学院経済学研究科准教授)
連載書評小杉 礼子 著 『若者と初期キャリア――「非典型」からの出発のために』
熊沢 誠(甲南大学名誉教授)
山口 一男 著 『ワークライフバランス――実証と政策提言』
川口 章(同志社大学政策学部教授)
久保 克行 著 『コーポレート・ガバナンス――経営者の交代と報酬はどうあるべきか』
吉村 典久(和歌山大学経済学部教授)
読書ノート宮本 太郎 著 『生活保障――排除しない社会へ』
菊池 馨実(早稲田大学法学学術院教授)
本田 一成 著 『主婦パート 最大の非正規雇用』
安井 豪(イオンリテール株式会社教育訓練部)
論文Today「ヨーロッパの有期雇用規制――有期雇用は労働市場の柔軟化へのステップなのか?」
本庄 淳志(大阪経済法科大学講師)
フィールド・アイ最近の労働経済学の学会の様子
神林 龍(一橋大学経済研究所准教授)
やはり、興味を惹かれるのは、小杉礼子さんの『若者と初期キャリア』に対して、熊沢誠先生がどういうコメントをされているかでしょう。
>総括的な不満は、小杉が結局、工場や事務所や販売店や飲食店に必要とされる膨大な下位職務を昇格の許されない非正社員に専担させるという企業の「キャリア分断」の論理を、動かせない予見としているかに見えることに帰着する。
>例えば「職業能力を獲得することがキャリアを拓くことになる」という命題は、やや辛辣に過ぎる表現ながら、ある意味でむなしくないか。・・・
>働きすぎによる心身の消耗に見る現在の正社員の厳しい状況をさておいて、正社員をキャリアを達成する政策目標としているように感じられることも気になる。
といった批判は、『格差社会ニッポンで働くということ』に書かれた熊沢先生の思想が顕れているのだと思います。職業能力開発に対する考え方のように、まさにそこが違うのよ、というところもありますが、研究者として自分の専担分野以外に対して禁欲である小杉さんに対して、やや決めつけ的に感じられる面もあります。少なくとも、
>ここでも、正規・非正規を横断する従業員の働かせ方についての企業倫理は与件とされるべきではない。
死に至るまで働かせるような企業倫理を与件としていないと思います。
さらに、次の言い方は、「第3法則」的とまでは申し上げませんが、いささか誤解を招くように感じられます。
>おそらくは所属研究機関の立場もあって本書が考察の外においている、労使関係や労働組合の批判的検討にどうしても導かれるのである。
それは小杉さんの研究者としての自己矜恃としての対象限定なのであって、所属云々とは切り離して論ずべきでしょう。
わたくしのように、労働に関わる限りなんでもかんでも論じようという方が特殊なのですから。
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